- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
オーナメントにご用心？
「オーナメントの飾りって、それぞれに意味があるんだよね～」
月詠の一人芝居は続く。柚春と夏朝は無理のない程度に相づちを返すが、作戦はオーナメントの雑学について大声で披露することにある。あまり誰に向かっての言葉なのかわかるくらいピンポイントに続けば、怒りの矛先はこちらに飛んでくるかもしれない。
「旅鴉さん……えっと『純粋な魂の象徴』は白いリボンで良かった、よね？」
それを回避するためというよりも、純粋に作りたい理想のツリーのために。夏朝は長めに取った白いリボンを手に、月詠の知識を頼ることにした。
「そうそう、リボンには色ごとにいろんな意味があってー、緑のリボンって友情って意味だったりするんだよね」
ちらり、と月詠が動く何かに目をやれば、苦笑いをしながらこちらに向かってくる武道と目が合った。お互い、どうもこういうことには首を突っ込みたくなる性分のようだ。
「はーいすみませーん、ちょっといいですか!? ちびっこさんたちビックリしちゃいますよどーしました？」
「こっちにもわけがわからないよ、彼女が酷いとかサイテーとかって突然……」
どうにも状況を理解できないのは、彼氏さんもだったようだ。けれども、言われっぱなしも落ち着かず、売り言葉に買い言葉でなぜだか口論が発展してしまったらしい。
「私が悪いって言うの!? やっぱり私なんて、都合の良い女だったのね！」
武道が二人から挟み撃ちとならないようにサポートするのは煉だ。
「やっぱり？ 普段の彼氏さんについてはわからないですけど、今回の喧嘩の原因は何なんですか？」
「そんなの、あなたに関係ないでしょうっ！」
大学生くらいにみえた彼女に失礼の無い態度をとりながら、煉は彼女の手にあるオーナメントを見やる。これだけ派手に喧嘩しているのに投げつけたりせず、大事に握りしめている所を見ると、まだ会話を続ける余地はありそうだ。
「そう、無関係な人に声をかけるくらいには、俺たちはおせっかいなんです。せっかくクリスマスも近いっていうのに、喧嘩している恋人たちを放っておくことなんてできませんよ」
武道と煉が懸命に仲裁している声が、瑠樹の元にも届いた。ツリーの材料選びに夢中になってしまったけれど、今なら不自然無く喧嘩する二人に近づくことが出来る。
月詠たちと同じく、喧嘩している二人の近くのスペースへ材料を置き、ラピちゃんをしっかりと抱え直す。幾分かさっきよりも強く二人のことを意識して――ラピちゃんの可愛くてふわふわな頬へ顔を埋めるようにして和めば、きっと。
（喧嘩してるお兄さんお姉さんにも、たーくさん和んでほしいねぇ！）
取り付く島がなかった二人が、暫し押し黙る。「だって」とか「こんなつもりじゃ」とかぼやいているけれど、口論が止まったのならこれはチャンスだ。
「実は、俺もさっき知ったんですけど……緑のリボンって『友情』って意味があるらしくって」
「えっ!? そんな、彼女の持ち歩いてる小物がいつも緑だから……」
「ですよね、そんな時は選んじゃいますよね！ 今度こそ、彼女さんが笑顔になってくれる物を選びましょうっ！」
なんとか彼氏側を落ち着かせることに成功した武道は、一緒にオーナメントを選ぶため連れ立ってその場を離れる。残された彼女側は、言い過ぎてしまったことを後悔しているように静かだった。
「だって……ベルは魔除けって知ってるけど、友情の魔除けって、なんだか女性関係が煩わしくて体よく断るための仮彼女なのかな、とか」
……多分、思い込みだ。
「それに、ベルって普段人を呼ぶときに使うじゃない。呼び鈴とか。呼んだら来る都合のいい女って思われてるのかなって」
それこそ思い込みではなかろうか。
彼女の怒りになるべく同調し、彼氏に対する愚痴を聞く姿勢に徹しようと思っていた煉も、これにはどうしたものかと頭をかき、思いついたまま口にした。
「随分、オーナメントについて詳しいんですね？」
「彼から交換しようって誘われたんだもの！ どんな物があるか調べていたら、意味があるって知って、それで」
誘った以上は知っていると思っていた。どこまでも喧嘩の理由は彼女の言葉数の少なさが原因だろう。煉は解決の光が見えて、笑みに余裕が出てきた。
「なるほどね。それなら確かに、誘ったのに知らなかった彼氏さんも悪い。許せとは言わないけど、怒った理由はちゃんと話したほうがいいと思うぜ」
「でも……呆れて向こうに行っちゃうくらい怒ってるかも知れないのに」
「言葉にしなきゃ伝わらないことはある。このままこじれて、けんか別れなんて後味が悪いだろ？」
「それも、そうね……」
落ち着きを取り戻した彼女に、会場中がホッとした――のは、一時の間だった。
月詠の一人芝居は続く。柚春と夏朝は無理のない程度に相づちを返すが、作戦はオーナメントの雑学について大声で披露することにある。あまり誰に向かっての言葉なのかわかるくらいピンポイントに続けば、怒りの矛先はこちらに飛んでくるかもしれない。
「旅鴉さん……えっと『純粋な魂の象徴』は白いリボンで良かった、よね？」
それを回避するためというよりも、純粋に作りたい理想のツリーのために。夏朝は長めに取った白いリボンを手に、月詠の知識を頼ることにした。
「そうそう、リボンには色ごとにいろんな意味があってー、緑のリボンって友情って意味だったりするんだよね」
ちらり、と月詠が動く何かに目をやれば、苦笑いをしながらこちらに向かってくる武道と目が合った。お互い、どうもこういうことには首を突っ込みたくなる性分のようだ。
「はーいすみませーん、ちょっといいですか!? ちびっこさんたちビックリしちゃいますよどーしました？」
「こっちにもわけがわからないよ、彼女が酷いとかサイテーとかって突然……」
どうにも状況を理解できないのは、彼氏さんもだったようだ。けれども、言われっぱなしも落ち着かず、売り言葉に買い言葉でなぜだか口論が発展してしまったらしい。
「私が悪いって言うの!? やっぱり私なんて、都合の良い女だったのね！」
武道が二人から挟み撃ちとならないようにサポートするのは煉だ。
「やっぱり？ 普段の彼氏さんについてはわからないですけど、今回の喧嘩の原因は何なんですか？」
「そんなの、あなたに関係ないでしょうっ！」
大学生くらいにみえた彼女に失礼の無い態度をとりながら、煉は彼女の手にあるオーナメントを見やる。これだけ派手に喧嘩しているのに投げつけたりせず、大事に握りしめている所を見ると、まだ会話を続ける余地はありそうだ。
「そう、無関係な人に声をかけるくらいには、俺たちはおせっかいなんです。せっかくクリスマスも近いっていうのに、喧嘩している恋人たちを放っておくことなんてできませんよ」
武道と煉が懸命に仲裁している声が、瑠樹の元にも届いた。ツリーの材料選びに夢中になってしまったけれど、今なら不自然無く喧嘩する二人に近づくことが出来る。
月詠たちと同じく、喧嘩している二人の近くのスペースへ材料を置き、ラピちゃんをしっかりと抱え直す。幾分かさっきよりも強く二人のことを意識して――ラピちゃんの可愛くてふわふわな頬へ顔を埋めるようにして和めば、きっと。
取り付く島がなかった二人が、暫し押し黙る。「だって」とか「こんなつもりじゃ」とかぼやいているけれど、口論が止まったのならこれはチャンスだ。
「実は、俺もさっき知ったんですけど……緑のリボンって『友情』って意味があるらしくって」
「えっ!? そんな、彼女の持ち歩いてる小物がいつも緑だから……」
「ですよね、そんな時は選んじゃいますよね！ 今度こそ、彼女さんが笑顔になってくれる物を選びましょうっ！」
なんとか彼氏側を落ち着かせることに成功した武道は、一緒にオーナメントを選ぶため連れ立ってその場を離れる。残された彼女側は、言い過ぎてしまったことを後悔しているように静かだった。
「だって……ベルは魔除けって知ってるけど、友情の魔除けって、なんだか女性関係が煩わしくて体よく断るための仮彼女なのかな、とか」
……多分、思い込みだ。
「それに、ベルって普段人を呼ぶときに使うじゃない。呼び鈴とか。呼んだら来る都合のいい女って思われてるのかなって」
それこそ思い込みではなかろうか。
彼女の怒りになるべく同調し、彼氏に対する愚痴を聞く姿勢に徹しようと思っていた煉も、これにはどうしたものかと頭をかき、思いついたまま口にした。
「随分、オーナメントについて詳しいんですね？」
「彼から交換しようって誘われたんだもの！ どんな物があるか調べていたら、意味があるって知って、それで」
誘った以上は知っていると思っていた。どこまでも喧嘩の理由は彼女の言葉数の少なさが原因だろう。煉は解決の光が見えて、笑みに余裕が出てきた。
「なるほどね。それなら確かに、誘ったのに知らなかった彼氏さんも悪い。許せとは言わないけど、怒った理由はちゃんと話したほうがいいと思うぜ」
「でも……呆れて向こうに行っちゃうくらい怒ってるかも知れないのに」
「それも、そうね……」
落ち着きを取り戻した彼女に、会場中がホッとした――のは、一時の間だった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2020年02月04日
- 参加申し込みの期限
-
- 2020年02月11日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2020年02月11日 11時00分
