灼熱地獄ビュッフェで食べまくれ！｜リアクション

灼熱地獄ビュッフェで食べまくれ！

　一方、蒼留人もまた、ステーキを焼いていた。その熱気も相まって少し朦朧としているが、幸いにも近くには水がある。
「飲み物用……この際かぶるぜ！　姉と違って猫になったりしないからな！」
　彼はおもいっきりピッチャーを掴むと、頭上で真っ逆さま！　音を立てて濡れる蒼留人だったが、彼は知らなかった。飲み物もあっつあつになっていたことに……！！
（あっつっ？！　でもなんか意識がはっきりしてきた？！）
　そんな不思議な感覚を覚えつつも焼き立てのステーキに食らいつく。彼が顔を上げれば……勘三郎もまた燃えていた。というのも、いつの間にか上着を脱ぎ捨てていた。更には「暑いときこそ辛い料理だろ？」とばかりに花椒が効いた麻婆豆腐をはふはふいいながら掻っ込み、海鮮の旨味たっぷりのチゲ鍋を飲み、身体が真っ赤になっていた。
「美味い！　でも辛い！！　飲み物飲み物……」
　と、慌てた様子でドリンクバーに行くも、炭酸が勢いよく吹き出し泡だらけになってしまう。仕方なくジュースで鎮火させながらサラダをもしゃもしゃ言いながら食べてインターバルを挟みカレーに挑む。
「ジューシィなハンバーグにチーズは罪なおいしさ……。たまらないっ！　でもステーキも食べたいかもっ！」
　汗が滴る中、遠海は嬉しそうにハンバーグを食べきりステーキを切ろうとした。が、そこで勢いよくシャツを脱ぎキャミソール姿に！　これには蒼留人も勘三郎も目を丸くする。しかし遠海は気にせずステーキを上品な仕草で切り始めた。
（あぁ、本当に美味しい……。リミッターを解除して思うがままに食べられるって、幸せ～っ！）
　そんな彼女のほっこりとする笑顔。これには負けられない、と謎の闘志を燃やす勘三郎がカレーを味わいつつ完食するともう一枚ステーキを口にするのだった。

　ところで一組忘れていないだろうか？
　そう、羽生碧南と鷹取洋二の二人である。

（なんか急に焼肉の気分になったけど……他のも楽しまなくちゃ）
　と、あれこれ皿に運び食べていた碧南。前の席に座る洋二は洋二で額に張り付いてしまった髪を払いつつ少しずつ食べているようだった。
「先輩、大丈夫ですか？」
「あぁ。南国な気分で食べているよ」
　鳥の声があればもっとムードが出たかな？　なんて苦笑する洋二ではあるが、多分満腹になってきているだろう。
（これ、完食したら絶対に温泉に入ってやるんだから！　その為にも……）
　ぐっ、と内心でこぶしを握った碧南は額の汗を拭うとにっこり笑って
「先輩、駄菓子食べませんか？　種類も多いみたいですし……」
「そうだね、デザートにしようか」
　その提案が嬉しかったのか、洋二の表情は先ほどよりも明るくなった。２人はあれこれ話しながら駄菓子コーナーへと行くのだった。

（あらかた食った……か？）
　何杯目か分からないスープを飲み、だんだんと胃が重くなってくるのを感じていた鴻。彼はどんどんなくなっていく料理を見、まだ残ってそうな所に着目した。スイーツコーナーである。
「よし……。甘さにだって負けてたまるかっ！」
　スープを飲み干した鴻は勇んでスイーツコーナーに。小さなケーキやアップルパイ、タルトにアイスにティラミスに、と皿にもっていく。
　お茶片手に挑めば先ほどとは違う味の洪水に目を丸くした。
（ここのビュッフェ、料理もスイーツも美味いな。こんな状況でなければゆっくり楽しめたのに）
　それが惜しい。だが、悔しがっている場合ではない。いまは、食べねばならないのだ。

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