灼熱地獄ビュッフェで食べまくれ！｜リアクション

灼熱地獄ビュッフェで食べまくれ！

　焼肉を焼くのを流にまかせ、寿司を取りに来た鴻はいくつかの寿司を皿に盛りながら真面目に己のろっこんが使えるか考察する。
　鴻のろっこん『例え己が血を流せども』は『自分が出血を伴う傷を負った時に力を欲する』と発動し、『全身の筋力を増加する』効果を持つ。
（今回は、使いどころがない……か？）
　カニやカズノコの寿司の他、巻きずしも皿に盛りながら周囲を見渡す。今回、テオの声を聞いたもれいびが何人いるのかは定かではない。しかし、彼らも場合によってはろっこんを発動させるかもしれない。
（万が一誰かがろっこんを使う際はごまかすために動いた方がいいかもしれないかな）
　鴻は暑さに負けぬよう、お茶も用意しながら真面目に考察をまとめると、席に戻った。流はその間に、肉をしっかりといい焼き加減に焼いて食べていた。鴻はお茶を差し出しながら寿司の皿も見せる。
「寿司も持ってきた……って、これは……！！」
　流が焼いた肉を食べると、ほどよい食感とがっつりとした肉の旨味が舌に広がる。お礼を言おうとした鴻だが、流は気づいていない。
「うおおおお！　カルビ　！ハラミ！　タンシオ！　うまい！　うまいぞおおお！　そして熱い！！」
「お、おぅ。そう、だな……」
　なんか、すごく熱くなってるな、と真顔で思ってしまう鴻。目の前の流れはハイテンションで次々に肉を焼き、食べていく。だが、次の瞬間……！
（すっごく、美味そうだな……！　寿司も食いながら、こっちもしっかり味わねぇと！！）
　焼肉がものすごく食べたくなった。そう、流のろっこん『メシテロジツ』が発動しているのである。これは流が『空腹時に食べ物を食べて美味いと思う』事で『周辺の人が食べた物と同じ物を猛烈に食べたくなる』のである。
「レバー！　ハツ！　シマチョウ！！　まだだ……！　俺の胃袋はまだまだ余裕だぜ！！」
「おっしゃ、その意気だ！！　こっちのボンジリとバラは頂いた！！」
　勢いに乗り食べていく流に負けじと鴻もまた焼肉地獄へと箸を伸ばすのだった。

「先輩っ！　焼肉食べませんか？」
「ちょうど僕もそう思っていた所なんだ。僕がとってこよう」
「いいえ、私が行きますから……」
　近くの席で食事をとっていた碧南と洋二もしっかりと影響を受けていた。しばしどちらが肉を取りに行くかでもめたが、結局洋二に押し切られてしまう。
　一方、寿司をしっかり食べていた勘三郎と遠海、蒼留人もまた焼肉にシフトしていた。
「やっぱあのステーキはめっちゃうまかったからな、今度は自分でも焼いてみたいぜ！」
「その前にこっちの野菜とお肉を！　ステーキって場所取りますから」
　と網の上に肉と野菜を置きながら議論（？）する勘三郎と遠海を見ながら、蒼留人が気にしていたのは……デザート類。一応クーラーが頑張っているのか、ソフトクリームマシーンは普通に稼働していたし、アイスクリームの入っている冷凍ケースの周りと中だけは涼しくも開けたら溶けそうな気がしていた。
（とけちまうだろ？！　早く食いたいが……今はこっちだ！！）
　未練（？）を振り切り、網に向かう蒼留人。彼もきっちり『メシテロジツ』の影響を思いっきり受けていた。
（猫舌にはちょっと辛いけど……美味しいのは美味しい！！）
　本当は後から食べようと思っていた遠海だが、やはり彼女にも影響は出ていた。偶然ではあるが遠海たち３人は流が座っていた席が近かったので仕方がない。

　よく見れば他の客もいつの間にかどんどん焼肉を食べていく。　流の『メシテロジツ』の影響は、確実に店内一帯へと広がっていた。

　碧南と洋二がぱっ、とみた感じデートっぽい事を除けば暑き戦場と化したビュッフェ。流のろっこんのお陰で焼肉類は早い段階で売り切れとなっていた。

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