灼熱地獄ビュッフェで食べまくれ！｜リアクション

灼熱地獄ビュッフェで食べまくれ！

後編：そこに食べ物があるから……

　ビュッフェでの食事を開始して早々にろっこん『メシテロジツ』を発動させていた水守流。だが彼は今……、満腹感に屈しかけていた。
　空腹が満たされ、焼肉の肉が切れた頃には元来の体力のなさもあり、ダウンしそうになっていたのである。
「……だ、大丈夫じゃないな……」
　前職も現職も体力勝負なためか未だ全力が出せそうな曖浜鴻が（食べるペースを落とさず）箸休めとしてスープ類を口にしていた。
「ドリンクも熱くなっているのはきつい……」
　お茶を飲みながら一息ついた流は、「まだ大丈夫だ」と鴻に笑うとあたりを見渡す。すると……、空になった焼肉のブースの隣にある物に目が留まった。

（やっぱり、この暑さはなかなか堪えるな）
響蒼留人もまた、汗だくになっていた。先ほどまで「これぐらいだと暑さも気にならねぇ！」と焼肉を食べていたが、『メシテロジツ』の効果が切れたのもあり、満腹感が押し迫ってきていたのである。
　流れる汗を吸い込んだ服が、とても気持ち悪いのも正直辛くなってきた。
（うう……腹が満たされてくると汗がしたたるぜ……）
　ほかの面々はどうだろうか、と未だ目の前で楽しく食べる楡宮遠海と山田勘三郎の二人から目を話し周りを見渡せば、流の辛そうな姿が目に入る。彼の目の前にいる鴻はまだ余裕がありそうだが……。
（やはり、この暑さは……）
　ぐっ、と歯を食いしばり満腹感と戦う蒼留人だったが、ここで思わぬ人物の姿を見る。寝子高の保健医、鷲尾礼美である。
　さりげなく見ていると、彼女は共に来た相手を気遣いつつ、汗を拭いながら料理を食べていた。その丁寧な所作と優し気な表情は少し赤くなった頬も相まって蠱惑的に思え、うっかり見入ってしまう。
（たしか、保健の先生だよな。なかなかセクシーだよなぁ……うーん）
　そこでふと、脳裏によぎるは剣道部の顧問である島岡雪乃の姿。そのどこかぽやや～んとした中に奥ゆかしい色気を思い出してしまっていた！！
（うちの顧問並みに……いや島岡先生のほうが……）
　何の事を指しているのか、気にしてはいけない。
　なんとなーくぼんやりとしていると、礼美がいつの間にか近くにいた。暑さで頭がぼんやりしてしまった為か、気付かなかったらしい。
「あなた、寝子高の……。大丈夫？」
「大丈夫です、なんでもありません。それにしても、ここ妙に暑いですよねぇ」
　どうにか世間話でごまかそうと、「先生、食べてます？」と話を振ると、礼美は少しだけ困ったような顔になった。
「なんだか焼肉が食べたくなって食べていたのだけどお肉が無くなっちゃって……。もう少し食べたかったかしら？」
　でも、腹八分目というし……と、冷静に考える彼女の横顔を見ているうちになぜか食欲が戻ってくる。
「自分の体と相談しながら、無理せず楽しみましょうね」
「はい」
　礼美の言葉に素直に頷いた蒼留人は一礼し、食事をとりに行く。そして目に入ったのはステーキ。焼肉用のお肉はなくなってしまったが、こちらはあと少し残っていたようだ。傍らには流。彼もまた、ステーキ肉を取りに来たらしい。
「俺も男だ……。やってやるぜ」
「あぁ。食いましょう、世界の為に」
　流と蒼留人はがしっ、と握手をするとそれぞれ肉を皿に盛って席に戻る。そして……それぞれ焼き始めた。その香りが食欲をそそり、よだれが口の中にわいていく。
（暑さはきつい。でも……！）
　流はレアに焼いたステーキを、ガーリックバターで美味しく頂く！！　旨味がガーリックの風味と共に脳髄を揺らし、アドレナリンが分泌される！！
「うおおおおおっ！　美味いっ！　美味いぞぉおおおおおっ！」

　――店に、流の声が響いた！！

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