【寝子祭2nd】『Jewel・BeJewel』｜リアクション

【寝子祭2nd】『Jewel・BeJewel』

☆朝の教室で（２）
　
　七夜あおいの作品にも一通り感想を紡ぎ合って、一行は、大塚絽紗の作品群の前へ。
　簡単な品の他、以前にも活動の一環で作成したことがあるヨーヨーキルトにピンクッション。
　レースで編まれたコースターは繊細で愛らしく、また、
「あ、編み目が凝っていて……素敵、ですね……！」
　との錦織彩の言葉通り、毛糸のマフラーや帽子などの防寒具は、冬らしい柄を緻密に表現していた。
「うふふ。ありがとうございますー」
　にこやかに応じて、絽紗は、思い出のゴンドラを柄として編み込んだ自身の作品に目を向けた。
　地味ながらも丁寧に作り上げた作品は、絽紗に、共にゴンドラに乗った高峰一馬の姿を思い起こさせる。
（高峰君に見てもらうのが、今から楽しみです）
　そんなことを胸に思う絽紗を目に、彩はささやかに口元を和らげた。
　編み物をしている時の絽紗が、いつも優しい顔をしていることを彩は知っている。
　今、彩の目に映る絽紗の横顔も、それと等しい優しさを纏っているように感じられた。と、
「緊張はまだしてるけど……先輩たちの作品を見ていて、私、何だかわくわくしてきました」
　水上桜が力強くそんなことを言い、その台詞に、絽紗の声が続いた。
「頼もしいですねぇ。部活動で三年が参加できる展示はこれで最後。いままで色々と、お世話になりました」
　皆の顔を順番に見渡した絽紗の眼差しが、同じ3年生の彩へと向けられる。
「彩さん、色々とご苦労様です」
「お、大塚さん、も……！　そ、それで、あの、私……っ、」

「私……ぶ、文化祭を、成功……させたい……です……！」
　気弱な彩の唇を揺らす、どこまでも鮮やかで真摯な宣言。
　滝原レオン、桜、あおいの後輩トリオは顔を見合わせ、
「……まあ、ここまで来たからには成功させてえよな。絶対」
　と、先ずはレオンがぶっきらぼうな調子で零し、
「ですね。家庭科同好会の本気を、見せつけちゃいましょう！」
　と、桜が情熱的な面を覗かせ、
「うん、頑張ろう！」
　と、あおいも声に光を散らす。
　絽紗が、ふわりと笑った。
「士気は上々、ですねー。開店が楽しみですね、彩さん？」
「は、はい……っ！」
　彩が真っ赤になりながらも頷くのに、一同はそれぞれに、大きく小さく表情を柔らかくした。