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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
【寝子祭2nd】メイド喫茶で秘密の時間を
え？
メイド喫茶と示された教室の戸を開け、まゆらは立ち尽くした。目は点になっている。
英国のカントリー・ハウス……そこのティールームみたい。
実際に行ったことはないけれどそういうイメージがある。もうちょっとくだけた言い方をするならば、国営放送でやってた『ニャウントン・アビー』のようなのである。演出とわかっていても、すごいと思う。
しかもそこに、メイドまでいるとは！
「いらっ」
とまで告げたところでマーガレットは、じゃない、と口に手を当て咳払いして言い直した。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
どうも慣れない。メイド喫茶の常識というものが、マーガレットにはいまひとつピンとこないのだった。一種のなりきりプレイというものだろうが、なかなか反射的に出てこない。こういう妄……もといロールプレイは嫌いではないのだけれど。
しかしマーガレットの戸惑い以上に、戸惑っているのはまゆらのほうだった。
こんな本格的なところに、こんな格好で来てよかったの！？
慌てて我が身をチェックする。
まゆらの服装はパンツルック、ブラックジーンズに長袖のブルーストライプの白いボートネックＴシャツ、上着は芥子色のダッフルコートというコーディネイトだったのだ。専門学校生らしいといえばらしいものの、貴族の邸宅みたいなこの店に、ぴったりとはさすがに言えないだろうと思ってしまう。
けれども銀色の髪をしたメイドさん（マーガレット）はとくにコメントもなく、
「ご案内します」
とまゆらを席に導いた。
ここは学校、寝子島高校――避難訓練でビル五階からの滑り台に挑むときのように、まゆらは心のなか、自身に状況を言い聞かせる。
硬くなる必要はない。
チェーン系のコーヒーショップに立ち寄るときと同じでいい。
落ち着いてメニューを見るとしよう。
うん、落ち着いて。
◇ ◇ ◇
「お帰りなさいませ、お嬢様」
と、愛らしいメイドさんに言われてついつい、
「あ……ただいまっ！」
ゴール下で受けたパスを瞬間的にシュートするように 碧南は無意識のうちに返してしまった。
ついさっきまで碧南は、寝子祭のミスコン会場にいた。といっても観る側ではない。出る側だ。
つまり寒風吹きすさぶステージ上でハイヒールを履き、水着姿で審査を受けていたのだ。なお碧南は二年連続出場となる。
例によって他薦、すなわちバスケ部の部員たちの陰謀で担ぎ出されたという格好、抗ってはみたもののあれよあれよという間にエントリーされていて、血もシャーベットになるくらいの寒風に肢体をさらしていたのである。
碧南が着用したのは今年買った新しい水着だ。ちょっと大胆なカットが入った白い三角ビキニである。買ったはいいが去年のミスコン用に買ったブルー基調のものが気に入っていたので、本来のシーズンである夏に着ずじまいになっていたものだった。
水着を着る機会のため、そもそもは後輩たちにエントリーされたため、という理由はあったものの、出場する限りはきっちりつとめを果たすのが碧南だ。尻込みしたい気持ちとはうらはらに、笑顔を振りまき花道を堂々と歩いて、ＢＧＭ、ヒップホップでいうパンチラインにあわせてポーズを決めた。恵まれた長身、手足の長さプロポーション、そしてなにより優雅にしてキレのよい動きが受けて、終わる頃には大喝采を浴びたのだった。
といってもステージを降りれば、碧南はふだんの碧南に戻る。そそくさと制服姿になるや、
「恥ずかしかったー！」
と顔を赤らめベンチコートのジッパーを首元まで上げて、
「寒っ！」
両肩を抱きすくめたのだった。
十一月の寒さを思いだした気分だ。とりわけ、ミスコンのステージ終了後結果発表まで、風よけもない寒い壇上でずっと待たされたのがきつかった。
かくて寒風から逃げるようにして校舎に入ったものの、碧南にはとくに待ち合わせしている人物がいるわけでもなかったし、行くあてもなかった。
「やっぱ寒いわ……」
つぶやくように言って、なんとなく気の向いた方向へと歩く。
なんだか、鼻の頭がかゆい。
どうせなら前もって、鷹取先輩にでも声をかけたらよかったかな。
……なにか温まるものでも飲もうか。
コートのポケットに入れた左右の手を、無意識のうちに握って開いてしている。
この寒いのにかき氷店をやっているという水泳部のポスター（こたつで食べるらしい）、家庭科同好会の心なごむ展示の案内板など、苦笑したり微笑したりしながら眺めて通り過ぎて、やがて碧南は、喫茶店を示す小さな案内チラシに目を留めていた。
喫茶店なら、温かいコーヒーなどあるだろう。
そうして碧南は、
「お帰りなさいませ、お嬢様」
愛らしいメイドさん――美野梨の出迎えを受けたのである。
メイド喫茶と示された教室の戸を開け、まゆらは立ち尽くした。目は点になっている。
英国のカントリー・ハウス……そこのティールームみたい。
実際に行ったことはないけれどそういうイメージがある。もうちょっとくだけた言い方をするならば、国営放送でやってた『ニャウントン・アビー』のようなのである。演出とわかっていても、すごいと思う。
しかもそこに、メイドまでいるとは！
「いらっ」
とまで告げたところでマーガレットは、じゃない、と口に手を当て咳払いして言い直した。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
どうも慣れない。メイド喫茶の常識というものが、マーガレットにはいまひとつピンとこないのだった。一種のなりきりプレイというものだろうが、なかなか反射的に出てこない。こういう妄……もといロールプレイは嫌いではないのだけれど。
しかしマーガレットの戸惑い以上に、戸惑っているのはまゆらのほうだった。
こんな本格的なところに、こんな格好で来てよかったの！？
慌てて我が身をチェックする。
まゆらの服装はパンツルック、ブラックジーンズに長袖のブルーストライプの白いボートネックＴシャツ、上着は芥子色のダッフルコートというコーディネイトだったのだ。専門学校生らしいといえばらしいものの、貴族の邸宅みたいなこの店に、ぴったりとはさすがに言えないだろうと思ってしまう。
けれども銀色の髪をしたメイドさん（マーガレット）はとくにコメントもなく、
「ご案内します」
とまゆらを席に導いた。
ここは学校、寝子島高校――避難訓練でビル五階からの滑り台に挑むときのように、まゆらは心のなか、自身に状況を言い聞かせる。
硬くなる必要はない。
チェーン系のコーヒーショップに立ち寄るときと同じでいい。
落ち着いてメニューを見るとしよう。
うん、落ち着いて。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
と、愛らしいメイドさんに言われてついつい、
「あ……ただいまっ！」
ゴール下で受けたパスを瞬間的にシュートするように 碧南は無意識のうちに返してしまった。
ついさっきまで碧南は、寝子祭のミスコン会場にいた。といっても観る側ではない。出る側だ。
つまり寒風吹きすさぶステージ上でハイヒールを履き、水着姿で審査を受けていたのだ。なお碧南は二年連続出場となる。
例によって他薦、すなわちバスケ部の部員たちの陰謀で担ぎ出されたという格好、抗ってはみたもののあれよあれよという間にエントリーされていて、血もシャーベットになるくらいの寒風に肢体をさらしていたのである。
碧南が着用したのは今年買った新しい水着だ。ちょっと大胆なカットが入った白い三角ビキニである。買ったはいいが去年のミスコン用に買ったブルー基調のものが気に入っていたので、本来のシーズンである夏に着ずじまいになっていたものだった。
水着を着る機会のため、そもそもは後輩たちにエントリーされたため、という理由はあったものの、出場する限りはきっちりつとめを果たすのが碧南だ。尻込みしたい気持ちとはうらはらに、笑顔を振りまき花道を堂々と歩いて、ＢＧＭ、ヒップホップでいうパンチラインにあわせてポーズを決めた。恵まれた長身、手足の長さプロポーション、そしてなにより優雅にしてキレのよい動きが受けて、終わる頃には大喝采を浴びたのだった。
といってもステージを降りれば、碧南はふだんの碧南に戻る。そそくさと制服姿になるや、
「恥ずかしかったー！」
と顔を赤らめベンチコートのジッパーを首元まで上げて、
「寒っ！」
両肩を抱きすくめたのだった。
十一月の寒さを思いだした気分だ。とりわけ、ミスコンのステージ終了後結果発表まで、風よけもない寒い壇上でずっと待たされたのがきつかった。
かくて寒風から逃げるようにして校舎に入ったものの、碧南にはとくに待ち合わせしている人物がいるわけでもなかったし、行くあてもなかった。
「やっぱ寒いわ……」
つぶやくように言って、なんとなく気の向いた方向へと歩く。
なんだか、鼻の頭がかゆい。
どうせなら前もって、鷹取先輩にでも声をかけたらよかったかな。
……なにか温まるものでも飲もうか。
コートのポケットに入れた左右の手を、無意識のうちに握って開いてしている。
この寒いのにかき氷店をやっているという水泳部のポスター（こたつで食べるらしい）、家庭科同好会の心なごむ展示の案内板など、苦笑したり微笑したりしながら眺めて通り過ぎて、やがて碧南は、喫茶店を示す小さな案内チラシに目を留めていた。
喫茶店なら、温かいコーヒーなどあるだろう。
そうして碧南は、
「お帰りなさいませ、お嬢様」
愛らしいメイドさん――美野梨の出迎えを受けたのである。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2019年12月08日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年12月15日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2019年12月15日 11時00分
