レトロで8bitな寝子島｜リアクション

レトロで8bitな寝子島

●おぼろげな記憶

　寝子島全体がドット化した際、青山絢は旧市街に居た。

「なんだか目がチカチカするな……」

　それが最初に出た感想だった。
　あまりゲームなどをしない彼女にとって、このドット絵で構成された世界は馴染みがないのだろう。
　それらが目の前で動く様子に少し困惑気味だ。それにドット絵で使われている色使いが原色多めなせいか、目に染みるような感じもあった。
　しばらく立ち止まって眺めていると、目も慣れてきたのか痛みも減り、落ち着いてきた。改めて周囲を見てみる。

（昔のゲームってこんな感じだったのかな？　現代のゲームもあまりやらないのでよくわからないけれど）

　昔と現代のゲームがどう違うのか、絢には明確にはわからない。
　けれども、今見ている景色の雰囲気は普段触れるスマホの画面などとは違うと感じていた。旧市街は街中がアスレチックコースのようになっている。道中には猫印の小判が浮いていて、それらを集めながら地面や屋根の上を飛び跳ねてゴールを目指す。

（なんだか有名な配管工の兄弟が主人公のゲームっぽいかも）

　赤と緑の兄弟の姿をぼんやり思い出す絢。

（たしか、こんな感じだったような……）

　おぼろげな記憶を頼りに、空に浮くレンガに向かってジャンプする。すると、あっさりとその上に立った。
　絢は軽くジャンプしたつもりだったが、意外にも簡単に乗ることが出来た。

（あのゲームだと、確かこのままゴールまで走るんだっけ？　なんだかよく分からないけど、やるだけやってみるわ）

　絢は不安を感じながら少しずつ前へ進む。
　初めのうちは全く慣れなかったが、そのうち進むコツが掴めてきた。それからはテンポよく比較的スムーズにゴールへ向かう。
　雑魚キャラと思われるキノコっぽい敵を踏むと、軽快な音とともに倒すことができた。その調子で出てくる敵を倒しながら、小判を何枚かゲットするのも忘れない。
　その途中でいちど参道商店街に立ち寄る。なにやら色々なものが売っていた。
　ゲームに詳しくない絢でも、それらがゲームに関連しているのだろうと想像できた。

（でも効果はよく分からないわね……）

　色や雰囲気で気に入ったものを適当に買ってみた。
　いかにもな形をした杖とキラキラした色のドリンクだ。それを携えて、再びレンガの上に乗ってステージを進む。敵が出てきたので、それっぽく杖を振ってみる。そうしたら杖の先から小さな火の玉が飛んでいった。
　それは見事に命中して敵を倒した。

（まるで魔法使いみたい）

　その後も杖を使ったり、ジャンプで敵を踏んだりしながら進んでいく。しかしそれなりに動いたからか、少し疲れを感じる。そのとき、ふと杖と一緒に買ったドリンクが目に入った。

（もうすぐ最後面だし、飲んでみようかな）

　取り出して蓋を開けると、口をつける。
　どことなく薬っぽさを感じながら飲み干すと、だんだんと体が温かくなってきて、疲労が消えたように思えた。

（いわゆるHP回復っていうのかしら）

　でもおかげで、最終面に万全で挑める。
　その意気込みを抱えて、杖を使いながら見事にクリアした。

このページにイラストを設定する