レトロで8bitな寝子島｜リアクション

レトロで8bitな寝子島

●ゲーマーとして

　レトロゲームのような世界になった寝子島で、仙藤蒼は考えていた。

（ゲーマー女子としては、島中が８ビットな空間になったこの機会を逃す手はない……！）

　蒼は近年の、美麗で迫力あるゲームも好きだが、エミュレーターでレトロゲームをプレイしたり、ゲームセンターの片隅にごくまれに置いてある大昔のゲームにも手を出している。

（レトロゲーって意外に難易度が高くて侮れないよね）

　軽く唸りながら、何かに納得するように頷く。
　蒼はこの空間を存分に楽しむことを決めて、軽やかな足取りで歩き出した。
　まずは旧市街に向かうとアスレチックコースを慣れた様子で進んでいく。今までのゲーム経験から、跳ぶ位置を感覚的に理解しているのだろう。さくさくと進みながら猫印の小判を回収していく。
　そして、それらを持って参道商店街へ。ダンジョン攻略を踏まえた装備とアイテムを購入し、意気揚々と九夜山に乗り込んだ。森、洞窟、古代遺跡エリアで構成された長大なダンジョンを突き進む。しかし時には立ち止まり、アイテム管理を怠らない。

（こういうのは焦ったらすぐゲームオーバーだからね）

　着実に経験値を稼いでレベルアップしていく。
　そしていよいよ魔王討伐戦。長期戦にはなったが、アイテムを有効に活用して魔王を倒した。

　下山すると蒼はシーサイドタウンに向かった。
　寝子島街道はレースゲームのコースになっていて、早速マシンに乗り込む。表示されたパネルには『ＲＥＡＤＹ』の文字が書かれている。そして一旦消えるとカウントダウンを始める。

『３、２、１、ＧＯ！』

　蒼は開始の合図と同時にアクセルを踏み込む。
　直線で他のマシンとの距離を詰めながら、カーブでは少しだけブレーキをかけてドリフト気味にスライドする。ターボ内臓のぶっとびマシンを自分の足のように操作しながらゴールを駆け抜ける。その結果、かなりの高タイムを記録した。

「ふわぁぁ～……」

　マシンを降りると蒼は大きく欠伸をした。
　さすがにこれまでずっとレトロゲーム三昧で、疲れてきている自覚があった。

「シメは……シューティングかな」

　星ヶ丘マリーナに向かうと戦闘機に飛び乗った。
　コクピットの窓はオレンジ色で、翼に鮮やかな青いラインが引かれている。

（戦闘機の中もドット絵……でも、私はそのままか）
（操縦桿もドット絵だからちょっと握りづらい……まぁ慣れれば問題ないかも）

　コクピットに腰掛けると、開始の合図が鳴る。
　縦に並んだ２つのブースターが稼動し、機体は空へ舞った。

　空へあがった瞬間に早速雑魚敵が襲い掛かってくる。
　蒼は持ち前の動体視力でその動きや攻撃を見極め、撃破する。ときには囲まれて集中砲火されるような場面でも、神がかりな操縦テクニックでその弾雨をかいくぐる。そして敵をロックオンして撃ち落とす。

（ドットとはいえ、物凄い迫力……！）

　思わずはしゃいでしまうが、すぐに気を引き締めて、スコアをひたすら稼ぐ。
　そうして向かえたラスボス戦。
　これまでの雑魚敵とは比べ物にならない弾幕と高耐久。それを必死に避けながら、少しでも耐久を削ろうと奮闘する。
　長い戦いの末、どうにかラスボスを撃破した。
　蒼は星ヶ丘アリーナに戻ると、機体から降りる。軽く伸びをして、体をほぐす。

「まぁ、こんなもんよね」

　その表情はとても満足そうだった。

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