レトロで8bitな寝子島｜リアクション

レトロで8bitな寝子島

●レースゲームの思い出

「うーん、懐かしいといえば、懐かしい」

　星山真遠は目の前に広がるドット絵で出来た寝子島を眺めながら言った。

「俺も小中学生の頃は遊んだよなぁ。ただ俺の頃にはプレタミが主流になってたから、こういうドット絵の奴はあまり遊んだことないけど」

　見ている光景はレトロゲームそのものだが、真遠自身がやっていたものとは異なる。だからだろうか、懐かしさよりは新鮮な感じがあった。

（……なぜか俺までドット絵のキャラクターになってるのは解せないが）

　まるでこのドット世界の住人とも呼べそうな外見が真遠は納得いかないようだ。それはそれとして、真遠はゲームのなかではレースゲームが得意なほうだった。ゲームセンターに行けば、レーサーの座席を模した筐体に座って遊んでいた。

（そういえば小学生の頃、レースゲームがやたら上手な兄ちゃんがいたな。俺も憧れたよ）

　当時のことを思い出すように、視線を遠くに向ける。
　すると寝子島街道でカーレースをやっているのが見えた。
　何かの縁だろうか。折角なので参加しようと向かってみる。

「寝子島街道を舞台に公道レースか」

　ドットで描かれていることで、かえってレースの雰囲気が出ている。どうやら乗るのはターボ内臓のぶっとびマシンらしい。
　真遠はコースを見て直線があまりなく、カーブが割ときつめな印象を受けた。

（普通に考えたらコーナーでは減速するべきだろうが、ここは思い切ってコーナーでこそ減速せずに突っ込んでみるか）
（一か八かの賭けだが、うまくコーナーを切り抜けられれば時間を大きく稼げる）
（その勢いのままゴールに突っ込めば確実にタイムを更新できるはず）

　マシンに乗り込んで、発進するまでの間、真遠はいかにタイムを縮めるかを考えていた。

　発進する直前、目の前にカウントダウンが表示され、ゼロになると同時に赤ランプが緑ランプに変わった。
　その瞬間、真遠はアクセルを踏み込んだ。
　ブレーキは極力使わず加速することを優先した。そして問題のコーナーに差し掛かると、さらにアクセルを踏む。ハンドルをやや強引に切って、コースアウトにならないギリギリのラインを攻める。しかし加速した状態で逆向きのカーブに対応しきれず、少し減速してしまった。
　その後、持ち直して加速して惜しいところまでタイムを縮めたが、ベストタイム更新とはならなかった。

「あちゃー、惜しかったな」

　それでも、まるで映画のようなレース体験ができて満足だった。

「久しぶりにレトロゲーでもやろうかな」

　そういいながら真遠はコースを後にした。

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