レトロで8bitな寝子島｜リアクション

レトロで8bitな寝子島

●魔王との戦闘とその後

「ゲームの世界になってる……」

　寝子島の変化に気づいた佐藤英二の第一声はそれだった。
　目の前に広がる景色は色鮮やかなドット絵になっている。まるでレトロゲームのようだ。

「でもいつものパターンだと一日くらいで元に戻るだろうし……楽しんでみよう！」

　英二自身がそれなりにゲーム好きなので、この異変をすんなり受け入れた。
　自分の姿もドット絵になっているのも相まって、ノリノリでこの雰囲気を満喫する。

　やはり目指すなら九夜山にあるダンジョン、そしてその先にある魔王の城。英二は早速装備を整えようと参道商店街を訪れた。
　まずはそこで武器として短い槍を、防具として鎖鎧を購入する。装備してみると、槍は手に馴染むし、鎖でできた鎧もさほど重くない。

（これならなんとか戦えるだろう）

　軽く素振りをしながら彼はそう感じた。
　戦う準備ができたので、早速九夜山へ向かう。最初は森の入り口付近で雑魚モンスターをせっせと倒して経験値を稼ぐ。そうして少しずつレベルを上げていき、活動範囲を広げる。その後、本格的にダンジョンへ突入したら、地道なマッピングをしつつ攻略に励む。
　慎重且つ堅実な進み方でダンジョンの奥へと向かう。
　森を抜け、洞窟で同じ目的を持つ者と出会い、古代遺跡を苦戦しつつも乗り切った。そして、ついに目の前に魔王の城が現れた。

　道中で出会った仲間とともに魔王との最終決戦に突入。
　様々な能力、多様な戦術。それらをいかに組み合わせるか。英二は頭のなかで必死に考えながら槍を構えた。
　序盤は魔王の出方を見ながら様子をみつつ、それなりに優勢に思えた。しかし流石は魔王。簡単には倒れそうにない。徐々に戦闘が長引き、アイテムのストックも心もとない。

（それでも……倒す……！）

　仲間を支援しつつ、自分も前線で戦う。
　そして、いつまで続くかと思われた戦いも、ついに終わりを迎える。英二の刺した槍が最後の一撃となり、魔王を打倒した。その喜びを仲間とともに分かち合った。
　そして九夜山の山頂からドット絵の夜景を眺めて、ゲームクリアの感慨に浸った。

　後日。
　同級生の野々ののこにこの話を夢の出来事として切り出した。

「野々さん、実はこの前、九夜山が舞台のＲＰＧで遊ぶ夢を見たんだ。魔王を倒した後に見た夜景がなかなか見事でけっこう感動したなぁ」
「すごく楽しそう！　詳しく聞かせて！」
「うん！　まず参道商店街で装備を揃えて……」

　目をキラキラさせて話に興味津々なののことの会話は、英二にとってとても楽しい時間となった。

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