補習危機一髪！　～白い魔弾とウザイ奴～｜リアクション

補習危機一髪！　～白い魔弾とウザイ奴～

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　雛子が華々しく散った様を見て密に感動している者がいた。

（これが学校の授業かぁ……凄いなぁ）

　元お嬢様の維都月茉菜は病弱だったこともあり家庭教師に勉強をみてもらうことが多かった。
　故に一つの教室で大勢の級友と勉強する授業風景も彼女にとっては新鮮で。
　また、どんな風景でも「そういうもの」として受け入れてしまっていた。

　がそごそ。

「へ？」

　ウォルターのチョーク飛ばしに感動して見惚れていた茉菜だったが、不意に机横にかけていた鞄から物音がして視線を向ける。
　するとそこには鞄からはみ出したお菓子の袋に頭を突っ込んでもっしゃもっしゃやっているサンマさんの姿があった。

（ああっ、それは私が自分へのご褒美にとっておいたコンビニで買った新作のお菓子～っ！）

　茉菜が声にならない悲鳴をあげる。
　しかし被害はそれだけではなかった。

『うわ、こいつの履歴ほぼ家族じゃねーか！』
「！？」

　別のサンマさんが茉菜の携帯を勝手に鞄から取り出して弄っていた。
　友達の少ないボッチ状態を指摘されたのはお菓子を食べられたこと以上に真菜にダメージを与えた。
　さらに酷かったのは……。

『…………』
「やめてっ！そんな憐れむような目で私を見ないでぇぇぇ！！」
　
　想像して欲しい。
　サンマさんのあの目、あの顔で憐れまれるその痛ましい光景を。
　茉菜が机に突っ伏して悲鳴をあげてしまったのも仕方ない。
　仕方ないのだが。

「維都月―、君の頭が残念なのはよーく解った」
「いったぁ！？」

　無慈悲なチョークが茉菜の頭に炸裂する。
　手加減されているとは言え、茉菜が黙るには十分な威力であった。

　携帯をサンマさんに狙われた生徒は他にもいた。

「君達なにしてるんだ、ちょっと見せなさい」

　小声でぼそぼそとサンマさんに話しかけているのは晴海飛鳥だった。
　サンマさんが自分の携帯を弄っているのを慌てて制止しているのかと思いきや、実はそうではない。

「どれどれ。何だこれじゃただのスパムじゃないか、こういうのは相手の嗜好も考えて打つもんだ。そうだなぁ、じゃあまずは幼馴染のお父さんのところに……」

　止めるどころかサンマさんの悪戯に便乗する形で携帯を弄り始めた飛鳥だったが、それを許すウォルターではなかった。
　音を立ててチョークが飛鳥の携帯に直撃する。
　壊れない程度に加減はされていたようだが、驚いて携帯から手を離すには十分な衝撃だった。

「授業中に携帯も弄らせてくれないなんて」
「当然でしょ。それに今は授業っていうか補習なんだけど。僕のチョークが大好きな晴海クン。君の数学は何点だったかな？」
「4点かな」
「胸を張るな、もっと恥じるべきでしょ！」

　
　飛鳥がウォルターに叱られている頃。

　チョークの一撃で見事昏倒した茉菜の後ろの席では宇佐見望月が茉菜の悲劇にも気づかず、なにやらぶつぶつ言いながらプリントと睨みあいをしていた。