【中間テスト】居眠り厳禁！　ペンを離すな！｜リアクション

【中間テスト】居眠り厳禁！　ペンを離すな！

●水上桜の場合
　中間テスト二日目。国語。
「それでは試験を開始してください」
　試験監督の声と同時に、講堂に紙をひっくり返す音が幾重にも響き渡った。
（よし。これならいけそうね）
　その日、一年生として一階席で試験を受けていた水上桜も、裏返しにしていた問題用紙を表に返し、問題文を目で追いつつ、そのようなことを思った。
（昨日の社会と数学も、決して得意科目ではなかったけど、そこそこできた自信があるわ。そして、今日は得意科目の国語。昨日もしっかり勉強してきたし、きっと大丈夫！）
　意気揚々と、桜はシャーペンを走らせて、解答用紙を埋めていく。
　さすがに得意科目だけあって、そうそう詰まるところもない。
　昨日、かなり勉強してきた甲斐もあって、解答は早々に終了した。
　もちろん見直しも怠らない。
　頭の中で自己採点も行い、80点は固いだろうと確信すると、不意に眠気が襲ってきた。
（……試験終了までまだ20分。いいや、寝ちゃおう）
　そう思った瞬間には、桜はすでに深い眠りに落ちていた――。

　それは夢の中の物語。
　カツカツ、と教室の中で靴音が響く。
「はい。じゃあ、次の現代語訳を――山田くん」
　理知的な声が、生徒の名を呼び、生徒がおずおずとそれに答える。
「よろしい。じゃあ、次の部分を――」
　と、教師が言うと、山田と呼ばれた生徒が胸をなでおろす。
　それはそうだろう。
　なにしろ、寝子高の国語教師――水上桜は、授業も試験の採点も厳しいことで有名で――。

　と、そこで桜は試験終了を告げる監督の先生の声に目を覚ました。
　解答用紙を提出しながら、ふと監督の教師の姿に未来の自分を重ねてみる。
　自分が教師として、生徒を指導したり、宿題をしたりする側にまわる――そんな未来を想像してみる。
「……まさか、ね」
　思いのほか、しっくりきている想像した未来の自分の姿に苦笑しつつ、桜は静かに試験会場を後にした。