【中間テスト】居眠り厳禁！　ペンを離すな！｜リアクション

【中間テスト】居眠り厳禁！　ペンを離すな！

●初瀬川理緒の場合
　中間試験前日。
　その日、試験前日だというのに、初瀬川理緒にはグラビアの撮影の仕事が入っていた。
（グラビアモデルの仕事は好きだけど……こういうときはちょっと困るなー）
　もう10月だというのに、理緒の身を包む水着の肌面積はひどく少ない。
　だからということもないだろうが、やはり翌日が試験ということで理緒の気持ちは少々落ち着かない。
「理緒ちゃん、ちょっと表情硬いよー。もう少し自然な感じでー」
「……え？」
　カメラマンに指摘されて、理緒はハッと我に返る。
（……しっかりしろ、あたし。木天蓼大学に合格して、学業とグラビアを両立させるんでしょ？）
　頬を叩き、自分を鼓舞するように、心の中でそう言い聞かせる。
数多の照明やカメラの前でセクシーなポーズを取りながら、理緒は最愛の人――佐和崎紗月と肩を並べてキャンパスを歩く自分の姿を思い浮かべ、気持ちを高めた。
すると、自然と表情も綻び、肩の力も抜けてポーズもしなやかになる。
「いいよ、理緒ちゃん！　よし、ちょっと休憩入れようか」
　スタッフに促され、休憩時間に入る。
　その間も、理緒は教科書を広げて、試験勉強に勤しんだ。
　もちろんその様子もしっかり撮影され、後日の記事制作に活用されることは言うまでもない。

●響蒼留人の場合
　同日。
　響蒼留人は、試験前で剣道部の活動も休みということもあり、その日一日は試験勉強に打ち込むと決めていた。
「というわけで、今日、俺は明日の試験勉強を頑張るから邪魔するなよ？」
　ルームメイトにそう言って、蒼留人は一緒に勉強を始める。
　しばらくの間、蒼留人は、特に重点を入れたい数学の問題を集中して解いていた。
　が、ほどなくして――ルームメイトが漫画を読んで爆笑する声が聞こえてきた。
「いや、休憩はえーよ！　つか、笑うな、気が散る！」
　思わず突っ込む蒼留人。
　頭を振って、目の前の問題に集中しようとするが、やはり気が散る。
「俺も、ちょっと気分転換するか……。軽く素振りでも……って、お前は漫画読んでたろ、真似すんな！」
　いつのまにか一緒に素振りを始めるルームメイトから、逃げるように廊下へ。
　すると、今度は別の友人とばったり会い、しばし話し込んでしまう。
（はっ……！　いかん、気分転換のために素振りをするんだった……）
　慌てて、蒼留人は寮から少し離れたひとけのない場所に移動し、ひたすら素振りを始める。
「ふぅ……。いい汗かいたな……。これなら集中できそうだ。よし、ちょっとジュースでも……」
　と、そこで蒼留人は持って部屋を出たはずの財布が手元にないことに気づく。
「あ、あれ……？　どっかで落としたか……！？」
　来た道を辿るものの、財布は落ちていない。
（もしや置き忘れか……？）
　部屋に戻ると、案の定、部屋の隅っこに蒼留人の財布は落ちていた。
「やれやれ……。これで安心だな。……ジュースはやめて、お茶にしとくか」
　改めてお茶を買って部屋に戻ると、蒼留人は勉強を再開した。
「よし、無駄な時間を使ってしまったぶん、夜は頑張るぞ……！」
　真剣に素振りをした成果だろうか、以降の勉強は思いのほか捗った。
　ただ――。
「ぐぅ……」
　日頃の疲れが溜まっていたのか、いつの間にか眠ってしまっていたために、それほど長時間の勉強にはならずに終わった。

　試験当日、数学の試験中に机から消しゴムが転がり落ち、またまた蒼留人は冷や汗をかくことになるのだが、それはまた別のお話。

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