【中間テスト】居眠り厳禁！　ペンを離すな！｜リアクション

【中間テスト】居眠り厳禁！　ペンを離すな！

●羽生碧南の場合
　中間テスト。四日目。化学。
　その日、羽生碧南は、かなりの自信をもって化学の試験に臨んでいた。
　というのも――。
（ふふふ！　何を隠そう、私はついこの前に化学イケメン化乙女ゲームを攻略し終えたばかり！　キャラと知識が結びついているから、周期表から化学式までバッチリ暗記済みよ！）
　一般の人には何を言っているのかわからないと思うが、ことオタクという人種は、己の興味のある分野に関しては凄まじい集中力や記憶力を発揮する。
　しかも、碧南はかなり重度の乙女ゲーオタクであり、実を言うと他の教科も脳内で勝手にイケメン化を進めていた。
（この試験で理系のイケメンを攻略すれば、あとは家庭的なイケメン（家庭科の試験）の攻略を待つばかり！　ああ、でも、私よりもおいしいお味噌汁を作ってくれるイケメンをどうやって攻略すればいいの……！）
　碧南は、『最愛のロミオとの悲恋を嘆くジュリエット』な気分で脳内トークを続けていたが、ハタとまだ理科の試験中であることに気づくと慌てて試験に意識を戻した。
（いけない。今は理系のイケメンを攻略中なのに、浮気している場合じゃなかったわ……！）
　集中し、問題を解き続けている間は良かった。
　が、ふとした拍子に全教科のイケメンの甘い囁きから、全方位から聞こえてきて、碧南の試験に対する意識はおろそかになる。
（ふふふ。理系のイケメンも、家庭的なイケメンも、みんな私の魅力でイチコロよ……むにゃ……）
　というわけで、碧南はいつの間にか夢の中で様々なイケメンと戯れていた（ああ、またいつものアレか、とは友人の弁である）。
　余談であるが、それでも、七割近い問題の解答をしっかり埋めていたのだから、碧南のオタク力というのは実に大したものである。

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