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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
...calling
A看板。
ホビーショップ『クラン=G』のすぐ外、歩道の片隅に置かれた立て看板だ。
アルミ製で高さは1メートル半程度、横幅は60センチ少々で、ポスターを一枚貼るのにちょうどいいサイズとなっている。
貼られているポスターはロボットアニメのプラモデルのものだ。ちょっとマニアックな作品だが、わかるひとなら足を止めて見入ってしまうほどできのいいイラストだった。
ポスターの黒地のあたりに、ある人気TCG（トレーディングカードゲーム）の追加パックが発売されたとの報が、白マーカーの手書きで書き入れられている。
その文字を読むでもなく、ましてやポスターを眺めるでもなく、看板に身を隠すようにして少女がひとりしゃがみこんでいる。
髪は三つ編み、墨で塗ったような黒。
やはり黒ぶちの四角い眼鏡は度がきつそうだ。
なに？ いま私が見たものは……！？
脇坂 香住（わきさか・かすみ）は我が目を疑っていた。漂白したシーツのような顔色をしている。
香住は見た。三度も。
あの緑のエプロンをつけた女の子が重傷を負うところを。
たまたまここに来ただけだ。けっしてゲームとかそういうものに未練があったわけじゃない。たまたま、参考書を買った帰路で前を通ってしまっただけだ。間違えてふらふらと店に入ってしまったが、息を止めて三十秒くらいで出たはずだ。断じて寄り道ではない。断じて。
そして香住は繰り返しを目の当たりにした。
一度目、あの女の子は怪物に飛ばされて壁に激突した。酷い音がした。
真っ赤な血が壁に拡がった様子までしっかり記憶している。
二度目も同じだ。あの女の子は怪物に飛ばされて首が折れた。
一度目とほとんど同じ状態だった。
三度目は少し状況が違う。怪物は店内ではなく、店の外から走ってきた。そしてバイクをその乗り手ごと店に放り投げてから突入したのだ。
かわいそうに、あの女の子は降ってきたバイクに頭を砕かれた。
四度目、怪物は倒された。
高校生らしき男女が数人がかりで波状攻撃をかけたのだ。短いが連携の取れた流れだった。怖くて動けなかったが、この結果には香住も思わず快哉をあげたものである。
怪物はどうなったのだろう。
香住は看板の陰から首をのぞかせた。見えない。
でもエプロンの女の子は無事らしい。良かった、と素直に思った。
なにが『良かった』んですか？
香住の心の中の、冷たい部分が告げる。
あの子、あなたにはなんの関係もない子ですよね？ それどころか、不道徳なゲーム屋の娘……なのになにを同情してるんですか？ 無事かどうか、いちいち時間をかけて見守っているんですか？
それこそ、何の役に立つんですか？
そうね、と香住はつぶやいて立った。
じき警察が来るなりして騒ぎになるだろう。こんなところにいて、事情聴取でもされてはたまらない。
三回やり直した。しかし三回リセットされたわけではない――誰に教えられたわけでもないのに香住は理解していた。
三つの平行世界が生まれただけだ。
他の三つは消滅していない。惨劇を避けられなかった世界。その三つではあの女の子は死に、店は悲しみのうちに閉店するという未来をたどったことだろう。
だったら、とまた、香住の内なる声が言った。
あなたは、他の三つを選んだほうが良かったのではないでしょうか？
香住は返事をしなかった。
かわりに考えた。
私が世界の分岐を眺められるようになったのは、これを拾ってからかもしれないと。きっと、まちがいない。
通学カバンに手を入れ、中に入った玉に触れる。
思い切って引っ張り出してみた。つややかな水晶球。半透明でうっすらと赤い。気のせいか少し、赤色が濃くなったような気がする。
香住には知りうるすべもないが、これとよく似た水晶球をかつて、香川王堂という男が所有していた。
香川はこの水晶球を『王珠（おうじゅ）』と呼んでいた。
――『...calling』 了
（やはり、世界は枝分かれしない）
ホビーショップ『クラン=G』のすぐ外、歩道の片隅に置かれた立て看板だ。
アルミ製で高さは1メートル半程度、横幅は60センチ少々で、ポスターを一枚貼るのにちょうどいいサイズとなっている。
貼られているポスターはロボットアニメのプラモデルのものだ。ちょっとマニアックな作品だが、わかるひとなら足を止めて見入ってしまうほどできのいいイラストだった。
ポスターの黒地のあたりに、ある人気TCG（トレーディングカードゲーム）の追加パックが発売されたとの報が、白マーカーの手書きで書き入れられている。
その文字を読むでもなく、ましてやポスターを眺めるでもなく、看板に身を隠すようにして少女がひとりしゃがみこんでいる。
髪は三つ編み、墨で塗ったような黒。
やはり黒ぶちの四角い眼鏡は度がきつそうだ。
なに？ いま私が見たものは……！？
脇坂 香住（わきさか・かすみ）は我が目を疑っていた。漂白したシーツのような顔色をしている。
香住は見た。三度も。
あの緑のエプロンをつけた女の子が重傷を負うところを。
たまたまここに来ただけだ。けっしてゲームとかそういうものに未練があったわけじゃない。たまたま、参考書を買った帰路で前を通ってしまっただけだ。間違えてふらふらと店に入ってしまったが、息を止めて三十秒くらいで出たはずだ。断じて寄り道ではない。断じて。
そして香住は繰り返しを目の当たりにした。
一度目、あの女の子は怪物に飛ばされて壁に激突した。酷い音がした。
真っ赤な血が壁に拡がった様子までしっかり記憶している。
二度目も同じだ。あの女の子は怪物に飛ばされて首が折れた。
一度目とほとんど同じ状態だった。
三度目は少し状況が違う。怪物は店内ではなく、店の外から走ってきた。そしてバイクをその乗り手ごと店に放り投げてから突入したのだ。
かわいそうに、あの女の子は降ってきたバイクに頭を砕かれた。
四度目、怪物は倒された。
高校生らしき男女が数人がかりで波状攻撃をかけたのだ。短いが連携の取れた流れだった。怖くて動けなかったが、この結果には香住も思わず快哉をあげたものである。
怪物はどうなったのだろう。
香住は看板の陰から首をのぞかせた。見えない。
でもエプロンの女の子は無事らしい。良かった、と素直に思った。
なにが『良かった』んですか？
香住の心の中の、冷たい部分が告げる。
あの子、あなたにはなんの関係もない子ですよね？ それどころか、不道徳なゲーム屋の娘……なのになにを同情してるんですか？ 無事かどうか、いちいち時間をかけて見守っているんですか？
それこそ、何の役に立つんですか？
そうね、と香住はつぶやいて立った。
じき警察が来るなりして騒ぎになるだろう。こんなところにいて、事情聴取でもされてはたまらない。
三回やり直した。しかし三回リセットされたわけではない――誰に教えられたわけでもないのに香住は理解していた。
三つの平行世界が生まれただけだ。
他の三つは消滅していない。惨劇を避けられなかった世界。その三つではあの女の子は死に、店は悲しみのうちに閉店するという未来をたどったことだろう。
だったら、とまた、香住の内なる声が言った。
あなたは、他の三つを選んだほうが良かったのではないでしょうか？
香住は返事をしなかった。
かわりに考えた。
私が世界の分岐を眺められるようになったのは、これを拾ってからかもしれないと。きっと、まちがいない。
通学カバンに手を入れ、中に入った玉に触れる。
思い切って引っ張り出してみた。つややかな水晶球。半透明でうっすらと赤い。気のせいか少し、赤色が濃くなったような気がする。
香住には知りうるすべもないが、これとよく似た水晶球をかつて、香川王堂という男が所有していた。
香川はこの水晶球を『王珠（おうじゅ）』と呼んでいた。
――『...calling』 了
あとがき
担当マスター：
桂木京介
ファンレターはマスターページから！
ご参加ありがとうございました！
桂木京介です。
本リアクションは後半、やや特殊な構造をとっています。
ネタバレになるのでできれば先に本編をご覧いただきたいのですが、16ページ前半は『シナリオガイド』から直接続く部分になっており、同じページの後半は14ページから続いています。同様に17ページは15ページの続きです。
そして18ページ以降は、11～13ページからの続きとなります。
もちろん最初のページから順番に読めばいいように構成しておりますが、念のため注釈として加えておきます。
さてこのリアクション、とりわけ後半部から結末にかけては、最初からこのような展開を考えて書いたものではありません。
いえむしろ、シナリオガイドを出した当時の自分が読んだら驚くんじゃないかと思うくらい、自分自身予想外の展開とラストとなりました。
たとえば、最終ページに出ていたあのNPCは、誰も絡まないしよく考えたらかわいげもないので、本作はもちろん、今後は出さないつもりでリアクションを書き始めていたのです。
それがこのように仕上がったのは、毎回書いておりますがすべて皆様のアクションのおかげです。
ほのぼのだったり胸キュンだったり、悲しみに立ち向かう話だったり、はたまた力強かったりと、素敵な物語の数々、誠にありがとうございました。
それではまた次回シナリオで会いましょう。
ご感想お待ちしております。桂木京介でした！
桂木京介です。
本リアクションは後半、やや特殊な構造をとっています。
ネタバレになるのでできれば先に本編をご覧いただきたいのですが、16ページ前半は『シナリオガイド』から直接続く部分になっており、同じページの後半は14ページから続いています。同様に17ページは15ページの続きです。
そして18ページ以降は、11～13ページからの続きとなります。
もちろん最初のページから順番に読めばいいように構成しておりますが、念のため注釈として加えておきます。
さてこのリアクション、とりわけ後半部から結末にかけては、最初からこのような展開を考えて書いたものではありません。
いえむしろ、シナリオガイドを出した当時の自分が読んだら驚くんじゃないかと思うくらい、自分自身予想外の展開とラストとなりました。
たとえば、最終ページに出ていたあのNPCは、誰も絡まないしよく考えたらかわいげもないので、本作はもちろん、今後は出さないつもりでリアクションを書き始めていたのです。
それがこのように仕上がったのは、毎回書いておりますがすべて皆様のアクションのおかげです。
ほのぼのだったり胸キュンだったり、悲しみに立ち向かう話だったり、はたまた力強かったりと、素敵な物語の数々、誠にありがとうございました。
それではまた次回シナリオで会いましょう。
ご感想お待ちしております。桂木京介でした！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2019年10月23日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年10月30日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2019年10月30日 11時00分
