【演劇祭】魔法のアーティスト☆キュートないぬみん｜リアクション

【演劇祭】魔法のアーティスト☆キュートないぬみん

【『魔法のアーティスト☆キュートないぬみん』（６）　そして、終幕へ】

　目もあけていられないほどのまばゆい光が広がって、魔法王国を包み込みました。
　まるで白昼夢のような白い世界で。『国民』は、見ました。本当の彼の心を。
「どうして……勝てない。負けてしまったら、ボクは……ボクには、なにも残らないじゃないか……」
　うなだれたなぎさ。あくの魔法使い、だなんて。彼は必死に虚勢を張っていただけの、ただの気弱な男の子だったのに。
「そんなことないよ」
　光の中から現れた、三人の女の子たち。純白に身を包み、微笑みを浮かべて、彼へと手を差し伸べました。
「キミは少しだけ、臆病だっただけ。手を伸ばせば、みんなが握り返してくれるのに」
　いぬみんの手を、なぎさはおっかなびっくり。ふるえる手でつかみます。
　ふわり、笑顔が生まれました。
「……そっか。簡単なことだったんだね。ボクも思い切って飛び込んでみれば良かったんだ。魔法なんかに頼らずに」
　そう、なぎさには、その勇気が無かっただけ。だから、拒絶してしまったのでしょう。最初からあきらめてしまったのでしょう。
「今は……去るよ」
　魔法王国へ混乱を撒き散らした、その罪は消えません。彼の本心を知った国民たちが、彼を許したとしても。
　けれどいつか、彼が自分を許すことができたなら。
「その時は、ボクも仲間に……なれるかな」
　なぎさは、光の向こうへ消えていきました。

「いつの日か、また……」
「うん。またね！」
　勇者たちは、魔法王国を……そして彼をも、救ってみせたのです。
　マジカルサムシングと、彼女たち自身の勇気とあきらめない心。そして、素敵な優しさで！

　こうして魔法王国には再び、平穏が戻りました。
　勇者るなちーこと瑠奈の頭には、ゆい王女の手で、お揃いの王冠がかぶせられました。これからは姉妹の王女として、いっしょに国を守っていくのです。
　ふたりの王女の隣には、瑠奈といっしょに旅をした勇者あかりん……明里の姿もありました。王女たちを支えながら、魔法王国の平和のため、これからも戦っていくことでしょう。
　それから魔法王国は、驚くような早さで元の姿を取り戻していきました。国民が一丸となって、国の在るべき形を取り戻そうと頑張っています。
　辺境の村にふらりと現れて、復興の手伝いを申し出た少年が、どこかあの魔法使いに似ていた……だなんて、そんな噂もありましたけれど、本当のところは分かりません。彼も、頑張っているのかもしれません。
『本当に、帰っちゃうの？　いぬみん……』
「うん……いぬみんは、この世界の人じゃないから」
　だから仕方ないんだと、いぬみんは笑います。
　見送るみみみの目の前で、彼女の姿は徐々に光に包まれて、解けるように消えていきます。
　本当のいぬみんは、寝子島に暮らす高校生なのです。
　ひとつの国を救った勇者とは思えない、あけっぴろげでふにゃりとした笑顔を浮かべながら、いぬみんは手を振ります。
「また、会おうね！」
『うん……またいつか。ぜったいに！』
　そうしていぬみんは、まぶたを伏せました。

　次に目を開けた時には、きっと見慣れたシーサイドタウンの街並みが、目の前には広がっていることでしょう。
　けれど、あかりんと、るなちーと、それにみみみといっしょに旅したあの魔法王国での日々は、決して消えはしません。
　いぬみんの心の中へ、ずうっと、ずうっと、残り続けるのです。
「みんな、忘れないよ。みみみん♪」

＜『魔法のアーティスト☆キュートないぬみん』　終＞

「ふおー！　あくのまほうつかいは改心して、平和になったのデス！　ふおおー！」
　幕が下りてもなお、トワの興奮冷めやらず。思わずおたけびを上げました、女の子がちょっとどうかと思わなくもありませんけれど。
　それだけ演目に、演者さんたちの演技に心打たれたということでしょう。
「いぬみんパワーッ！　今ならトワも、ヘンシンっ！　できる気がするのディス！　祝えーあらたなるユーシャの誕生ヲー！」
「分かった分かった」
　ツッコミ疲れか、トワの勢いに押されっぱなしだからか、少々ぐったりな楓です。
「しかし、最後はぶん投げたな。まあ、なんていうか……あいつも大変だな」
　あいつ、とはあくの魔法使いことなぎさのこと。ぶっちょー面ながらに、これでも友人の熱演を労っているのでしょう。
　カーテンコールで劇団『ゆめのかなた』の面々が壇上に勢ぞろいして、一礼。トワはあらん限りに、楓は静かな拍手を贈りました。
「コレはもーいちど見ねばなるまい！　デス！　さあほら、カエデもいっしょに応援するデス」
「演劇にアンコールはないだろ……」
　次の演目も程なく始まることでしょう。
　けれどトワのいぬみんフィーバーは、しばらく冷めそうにありません。
　楓はやっぱりぶっちょー面のまま、けれど心の中に微笑を浮かべました。

　劇団員たちも、その熱はいまだ冷めやらぬまま、控室へ。
「「「お疲れ～～～！！」」」
　なぎさの持ってきたジュースで、乾杯！
　先輩として、男の子として、共演者の女の子たちを気づかってのことです。
「みんな、お疲れさま！　特にゆいさん、不慣れな中でもせいいっぱい演技してくれて、嬉しかったよ。ありがとう！」
「いや……上手く演じられたのは、みんなのおかげだから。私のほうこそ、ありがとう」
　恐縮しがちなゆいの肩を、瑠奈がぽむっと叩きます。
「ゆいちゃん、演技もばっちりだったよね。もうひとりの『末明せれね』として、アイドルだってできちゃうかもね？」
「そ、それはむりー！」
　ステージでの緊張もどこかへ吹き飛んで、みんなは朗らかに笑います。
　ひとつの劇を完成させ、全員が演じ切って……その心地良い充実感が、胸を満たしています。
「みみみちゃん！　抱かせてほしいのなの！」
　明里はつぶらな瞳できょとんと見上げたみみみを、むぎゅーっ！
　みみみはいちおう、ほしびと……ということになるのでしょう。
「みみみちゃんはわんこみたいだけど、ここはにゃんこがいっぱいいる島なの。時どき遊びに来てーなの、いっぱい歓迎するの！」
「うん、おっけーだって♪」
　みみみは喋れないので、代わりにきとりがお答えをば。って、きとりもみみみの言葉が分かるわけではありませんけれど。
　とはいえみみみの綺麗な瞳を覗けば、言わずもがな、かもしれません。
「ふ～。無事に終わって良かったよ～」
　ほっとしたのか、きとりは思わずほにゃり、頬がゆるみます。
　素敵な仲間と演じた、素敵な演劇。そのために一生懸命に練習してきた日々までもが、素敵な思い出です。
「……ふふふー。みんな、ありがとーっだよー！　みみみん！」
　きとりはもう全員まとめて、むぎゅー！

　素敵で楽しくて幸せな、きとりたちの演劇は終わりました。
　けれどこれからもずうっと、記憶に残り続けることでしょう。
　輝き続けることでしょう！

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あとがき

担当マスター：墨谷幽
ファンレターはマスターページから！

　墨谷です。演劇祭シナリオ『キュートないぬみん』のリアクションをお届けいたします。

　プライベートシナリオ！　らっかみ！では初めての試みですね。
　大人数でわいわいも楽しいですが、こういったコンパクトなシナリオもまた、ご参加いただいたＰＣの皆さんをそれぞれに掘り下げやすくて、楽しく執筆させていただきました。楽しくて、少々文字数をオーバーしてしまったりしました。
　こういったシナリオはまたやってみたいですね～。

　魔法の勇者な皆さんも、あくの魔法使いも、それぞれに個性的で賑やかな演目となりました。
　観客と一体となって盛り上げるというスタイルも、舞台ならではの演出で、大盛り上がりでしたね！
　観客の皆さんもきっと、大いに楽しまれたことと思います。

　今回は、劇団『ゆめのかなた』さんの演目を墨谷が担当させていただけて、大変光栄でした。
　また別の機会にも、皆さまの素敵なお姿を描かせていただけましたら嬉しく思います。
　お疲れさまでした～！

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