【演劇祭】Ｅｉｄ　Ｓｅｇｅｎ　そこに在る、対の少女の物語｜リアクション

【演劇祭】Ｅｉｄ　Ｓｅｇｅｎ　そこに在る、対の少女の物語

【家族のこと】

「皆、お疲れ様……そして……ありがとう」
　舞台の全てを終えて。夏朝は、他グループの打ち上げに参加して不在の中、久隆と理沙は打ち上げで今回の舞台に協力してくれたスタッフ一同に深く謝辞を述べて、無事終了の運びと相成った。
　しかし、
「あら！　舞台後のアンケートを受け取り忘れちゃったわ～！」
　打ち上げの帰り、そのようなアクシデントが起こり、理沙と久隆は次の休みには是非、夏朝を交え打ち上げをしようと、再び寝子島を訪れた。

　忘れていたアンケートを受け取ってきて、家族皆で読み進める。
　すると……

「『最初と最後に出てきた、弟役の男の子が可愛かった』
　あら？　でも、抱っこしていたぬいぐるみはお顔がなかったはず……」
「……こちらにもある。他にも、弟の小さな男の子が、と……」
　三人は顔を見合わせた。
　この寝子島ならば、その奇蹟は手の届くところにある──それを象徴するかのように、アンケートには複数から『緑の洋服を着た弟役の子』についての内容が触れられていた。

「冬夜君……。もしかして舞台の時に、いてくれた……？」
　舞台は現実との境界線と示される時がある。あの時、自分達には見えなくとも、観客には確かに見えていたのだ。
　会いたかった、もう一人の『息子』──その事実に辿り着いた理沙の瞳が大きく波打って、慌ててハンカチで押さえられた。

「……あ、あのね！　実は──」
　夏朝も、急ぎ語り始めた。
　舞台途中で気を失ったこと。そして、それでも無事に演技が続けられていたこと。
　今ならば確信出来る。そこにいた、夏夜の存在を。

「まぁ……
　じゃあ、じゃあ皆いてくれたのね……！」
「冬夜に夏夜……舞台の上に、皆、揃ってくれていたのだな……！」
「皆が、いてくれた舞台──」
　それは、夏朝の涙腺までをもじわりと滲ませた。
「明後日、舞台を録画したDVDを送ってくれるんだって。届いたら、お父さんとお母さんの所にも送るから……！」

　今は届かない家族と共に、それは、恵御納家全員の悲願。
　舞台の上という限定、現実と非現実の狭間で叶った。夢ではない、それは確かに存在した時間。

　それからも、家族は皆の話題を出しながら、今回の舞台について語り尽くした。
　家族が欠けることなく完璧に舞台を成功させた。今回のマタタビック演劇フェスティバルは、こうして家族の絆として深く心に残り続けた──

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あとがき

担当マスター：冬眠
ファンレターはマスターページから！

この度はマタタビック演劇フェスティバル、プライベートシナリオにご参加いただき誠に有難うございます。この度ＭＳをつとめさせていただきました冬眠と申します。
現在、事情によりライターを休止とさせていただいておりますが、この度特殊な形式であるプライベートシナリオとのことで『是非に！』とお引き受けさせていただきました。恵御納夏朝様、恵御納久隆様、恵御納理沙様におかれましては、事情やブランク等で何かあってはならないと、いつも全力ですがそれ以上に必死に執筆させていただきました次第です。

今回に関しましては、素敵なアクションに加え、皆様から交流・アドリブ歓迎のお言葉をいただきました事から、喜んでアドリブを大量に叩き込んだ状態で執筆を開始致しましたら、容量の目算を違えて大変なことになりました。リアクションとして当然の事ながら『参加なさっておられない方にも楽しんでいただけるように』を気を付けた結果でもありましたが、かなりの割合で『あれも入れたかった、これも入れたかった……！』と涙を呑みました。
それでもお届け出来る中では最上のものをと思っております。少しでも楽しんでいただけましたなら、本当にこの上ない幸いでございます。

それでは、この度は本当に有難うございました。
ご縁ご機会がございましたら、またお目に掛かれますことを心より願いまして……

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