【星幽塔】第四階層　何故かいきなりタピオカチャレンジ！｜リアクション

【星幽塔】第四階層　何故かいきなりタピオカチャレンジ！

「シドニウムさーん」
「何かな？」
　シドニウムは、ステラがティオレの真似をして踊る姿を見守っていた。その為、梢の閃きに気付いていなかった。
「ちょっと私と再チャレンジ、しませんか？」
「……何か策でもあるのかい？」
　梢がぴっ、と人差し指を立てて提案すれば、シドニウムは怪訝そうに眉を顰める。が、ご心配なく、と梢は笑う。
「いいですか、シドニウムさん。一人でタピチャレしても、得られるのは自己満足だけ……。そういうブームはすぐに飽きられます！」
　そこで、と彼女は新たに注文したタピオカミルクティーを片手に目を光らせる。シドニウムは言葉で何かを察したのか、目を見開いた。
「まさか……２人でチャレンジしよう、というのか？」
「そう。時代は、マルチプレイ対応のタピオカチャレンジという次のステップに移ります！　そういうわけで、協力プレイしましょー！」
「面白そうね！　やるの？　やっちゃうの？」
　元々胸を貸す云々の話をしていたアリスもここに合流し、シドニウムは僅かに「どんな方法を試すのだろう」と首をかしげる。
（失敗して、アリス殿と梢殿の服を汚すような事にはしたくないのだが）
　シドニウムはそんな心配をしつつも、内心ではその『協力プレイ』がどんなものなのか気になっていた。
「まぁ、新たな方法を探るのは面白い試みだな」
「とりあえずここの胸貸してみるから、まずそこからやってみよう！」
　アリスが自分の胸に置いたタピオカミルクティーを見せ、シドニウムは僅かにたじろぐ。だが、好奇心と「ここで断ったら好意を無駄にするかも」とおそるおそる近づき、ストローに口を付けた。
「なるほど、それもある意味協力プレイですね」
梢はうんうん、と頷くと一通りドリンクを飲んだシドニウムを見た。
「次は私の案で行きましょうか。いい具合に風を当ててタピオカドリンクを浮かせますので、シドニウムさんもバランスを保ってくださいね～」
　今、魔風の力を宿してますので、と梢がほほ笑めば「なるほど」とシドニウムは頷く。
「確かに、失敗したままは悔しいな。……やってみよう」
　シドニウムはどうにか胸を寄せてバランスを取り、胸の上にカップを乗せる。だが……梢よりもやや平面に近いが故にバランスがとりにくい！
（すかさず風の手ですっ！）
　梢は先ほどよりも慎重に風をふかせ、シドニウムの胸に乗ったカップを押さえる。シドニウムは、その光景に思わず「おぉ……」と感嘆の息を漏らした。
「やったね！　成功だよ！」
「あぁ……！」
　アリスが歓声をあげ、シドニウムもちょっと顔をほころばせる。梢は梢でうまくシドニウムの胸に乗ったカップを見、
「なかなかテクニックが必要で、案外楽しいですね、これは……。魔風の力のコントロール訓練にもいいかもしれません」
　と真面目に考える。
　なんだかんだでタピオカチャレンジを楽しんだ一行だったが、ここで真白がタピオカが生る木を見てぽつりとつぶやく。
「そういえばちょっと気になってたんだけどさ、このタピオカの木って何？　タピオカって確か何かの芋のでんぷんから作ったやつだったと思うんだけどっ」
　今更ながらの突っ込みに、寝子島の住人達は「言われてみれば」という顔になる。梢が「確かキャッサバでしたねぇ」と梢が補足する。
「少し実か枝を分けてもらいたいが、いいだろうか？」
「勿論。この美味しさは広めてもらいたい」
　月詠の問いに、シドニウムは速攻で許可を出す。月詠は枝を入手して第三階層に埋めてみることにした。

　このタピオカの木の効果はどうやら離れると無くなるらしい。木から離れた一同はタピオカチャレンジ欲が収まり、ただ美味しいものを食べて満足した、という気分で満たされる。
　だが、月詠の手には枝が握られている。油断してはならない。
　こうして、一連のトラブルは終わりを迎える。だが、タピオカの木は今日も第四階層で冒険者たちを待っているのであった。

（終）

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