快眠枕『ねこたん！』｜リアクション

快眠枕『ねこたん！』

●謎っ娘の困難

　ゼロ・シーアールシーの棲家は誰も知らないはずなのだが、なぜか快眠枕『ねこたん！』が届いた。
「枕が届いているのですー。神魂のせいならしかたがないのですー」
　シミひとつない純白のふわふわワンピースが普段着、膝下くらいまであるふわふわのロングウェーブの髪、灰色のようにも見えるが銀色の瞳。
　ミステリアス雰囲気が漂う少女ゼロも、ランダムでモニターに選ばれたようだ。
　神魂のせいと感じたのは、もれいびゆえだろうか。
「寝心地の良さそうな枕なので、とりあえず使ってみるのです」
　さっそく、と『ねこたん！』を使って眠りにつく。

　翌朝。ぐっすり眠れたこともありゼロは元気いっぱい。
「今日も小学校に行くのですー」
　赤いランドセルを背負い、今日も、いつの間にか寝子島小学校にいる。
　ゼロは現実とまったく変わらないが、小学校に通う子達は、なぜか見知らぬ子ばかり。
　不思議に思ったので今は何年ですかー？　と近くを通りがかった女の子に訊ねると「1380年だよ」と教えてくれた。
「今は寝子歴1380年なのですかー。ゼロがいた世界の10年後なのですー」
　10年後の世界のはずだが、ゼロは小学３年生で８歳のままだった。
「クラスメートはみんな新しい人に入れ替わっているのですー」
　それもそのはず。10年後なのだから。担任の先生も知らない先生だった。
　総入れ替え状態のクラスでゼロは見知らぬクラスメイトと一緒に授業を受け、給食を食べたりと楽しい１日を過ごした。
　
　学校が終わると、ゼロは10年後の世界を探索。
「せっかく10年後に来たので世の中がどうなっているのか見るのですー」
　10年後に起きる解決困難なミッションそっちのけで、スマホで10年間分の株価を調べる。
「起きたらこの株と、この株と、この株を買っておくのですー」
　忘れないよう記憶することに。
「『ねこたん！』は便利な枕なのですー」
　これさえあれば、と思ったが……。
「そういえば、絶好の機会に夢の目的を忘れてたのですー」
　ミッションを思い出したので、株のことは後回しに。解決するです、と夢は一旦終了してループ。

　ループしたのは、登校するところからだった。
　彼女のミッション。それは学校で２番目の美少女の唇を奪うこと。ちなみに１番の美少女はゼロだそうで。
「早速、告白しに行くのですー」
　学校に行き、２番目の美少女を探し始めた。
　校内をあちこち探していると、ゼロの教室の前の廊下を歩いている可愛い子発見。
　見つけたですー、と、その子に駆け寄る。
「ゼロとキスしてくださいなのです」
　いきなり！？　と２番目の美少女は戸惑うが、お構いなしにあらゆる方向から口説き落とす。
　何事？　と生徒達が２人を囲むが、そんなことはお構いなし。
　大勢に見られては断れそうもない。
　観念した２番目の美少女は「ほっぺになら……」と顔を赤らめて言った。
「ありがとうなのですー」
　本人の承諾を得られたの、思いっきりほっぺに、ではなく、唇にディープキス。
　する場所が違う！　と怒られそうだったが、してもいいと言ったことに変わりないので文句は言えない。
「ミッションコンプリートなのですー」

　ミッションが解決したところで夢は終わり、ゼロは目覚めた。
「困難なミッション解決したので、気分爽快ですー。良い夢でしたー」
　忘れないうちに、と夢で見たことを思い出し「株価推移に基づき株を買って儲けるのですー」と買い占め。
「ふっふっふ、10年後が見れるこの枕があれば大儲けなのですー」
　大儲けするかはわからないが、丸１日眠りスッキリした気分のゼロはとても幸せそうだった。

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