寝子島オータムグルメフェス｜リアクション

寝子島オータムグルメフェス

「今年もこの時期がきたかー、秋の味覚目いっぱい楽しんでくるとするかねぇ」

　水守流はまだ見ぬ秋の味覚達を頭の中で描き、そんな風に呟く。その言葉からも解るようにこの時をずっと楽しみにしていたのだ。
　それを証明するかのように流は朝ご飯を普段よりもずっと控えめにして、出来るだけ沢山食べれるようにしていたりする。

「さーて、何から狙うとするかな！　肉……魚……スイーツ……。うーむ、どれも美味そうで目移りがしてしまうぜ」

　オータムフェスの会場内で視線を巡らせれば、あちらこちらとどこもかしこも食べ物を売っているところだらけで目移りに次ぐ目移り。きっと流でなくてもどれにするか迷ってしまう事だろう。
　あれも美味しそうだな、これも良さそうだなと悩む間にお腹は抗議をするかのように鳴く。

「ここはやっぱり肉で……」

　まずは肉からと決まりかけたところで、流の目に入るのはマスコットキャラクターのサンマさんだ。
　道行く人に声をかけられたり、手を振られればその全てに応え愛嬌を振り撒いている。

「あれはサンマさん？　こんなとこでもＰＲ活動がんばってんなー」

　サンマさんの事を知っていた流はその頑張っている姿に感嘆する。
　そして、サンマさんの姿を見た事で、ピキーンと脳内に閃くのであった。

「そういや秋といえば秋刀魚が美味しい季節だよな！　よっしゃ！　まずは秋刀魚を食べよう！」

　確かに秋の代表的な味覚の一つに秋刀魚は良く挙げられる。脂が良く乗った身が焼けていく匂いが堪らないという人とているだろう。
　早速流は、秋刀魚料理を出しているところに足を向けてみればそこには彼が想像しているよりもずっと多くの料理のメニューがあった。

「へぇ。秋刀魚料理って言っても結構色々あるんだなぁ。王道の塩焼きから寿司、変わり種で炊き込みご飯に甘露煮なんてのもあるのか」

　確かに普段、秋刀魚と言えば塩焼きというのが一般的だろう。だが、このフェスでは様々な料理を提供しているようだ。

「どれもうまそうだし、空いてるとこから順繰りに食ってってみよう」

　人が多くても気になったところに並ぶか、それとも多少妥協しても人が少ないところに並ぶか。これについては人によって変わる事だろう。
　だが、ここで流が人の少ないところに並ぶのは流なりに考えがあっての事である。

　流にはメシテロジツと言うろっこんが存在する。
　それは空腹時に食べた物を美味いと思ったら、周囲の人が同じ物を猛烈に食べたくなるという効果を持っているのだ。
　つまり、このろっこんが上手く発動すれば、流が食べ終わったところに人の列を移動させる事が出来るだろう。そうなれば待ち時間も短くなって丁度良いというわけだ。
　このメシテロジツはこんな時の為にこそあるというようなろっこんであった。

「おぉ、マジでめっちゃ美味そう」

　じゅるりとよだれが垂れてきそうな様子の流がまず買ったのは寿司であった。
　やはり秋刀魚の寿司となれば、普段の秋刀魚のイメージから敬遠する人が多いのか他に比べて空いていたのだ。
　だが、そういった先行イメージ等持っていない流には、ただただ美味しそうなものにしか見えない。

「いっただきまーす！」

　大口な口を開けてまずは一貫。

「むむ。酢飯と秋刀魚の間に何か……これはシソか？　脂は多いけど思ったよりはサッパリしてるかも。うん、美味いなっ」

　二つ、三つともぐもぐと流が食べていくと少しずつ、少しずつ彼に視線が集まって行く。
　そう。どうやら流の狙い通りにろっこんが発動したようだ。
　こうして思惑通りにいった流はこの後、思う存分に秋刀魚料理を楽しむのであった。

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