寝子島オータムグルメフェス｜リアクション

寝子島オータムグルメフェス

「今日は待ちに待った寝子島オータムグルメフェス、食べに食べまくってやるんだから！」

　そう意気込んでいるのは楡宮遠海だ。どうやら前々からずっと気になっていたイベントであるらしい。
　その勢いのまま、当日は朝からグルメフェスへと乗り込み、目についた食べ物を片っ端から買っては食べていく遠海。

「まずはお菓子から攻めよう」

　そんな風に呟いたかと思えば紅葉饅頭、紅葉のロールケーキを買って食べる。
　そもそも、まず最初にお菓子というのも中々にヘビーな気がするのだが、その上紅葉饅頭は兎も角、ロールケーキのチョイスはデンジャラスに過ぎるだろう。

「むむっ！　秋と言えばやはり松茸！　松茸ご飯ね！」

　と、言って目指したのは松茸ご飯が売られている店なのだが、そのついでと言わんばかりにうなぎのひつまぶしも食べるのはどうなのだろうか。

「アジフライを食べながらのスープは最高。スープにちょっとばかりフライを浸して食べるのも最高！」

　今度はアジフライとパンプキンポタージュスープを食べているわけだが、勢いは変わらない。全く変わらない。寧ろ、更に増しているかもしれないとさえ思える程だ。

「ミニジャックオーランタン風苺ジャムパンかー。うん、美味しそう」

　果たして遠海に美味しくなさそうに見える食べ物はあるのだろうか。余程の物でない限りは彼女は美味しいと言いそうな気がするのだが。
　何せジャムパンと共にしているのがキノコの焼きそばなのだ。一緒に食べるものとしてはあまり合ってるとは思えない組み合わせである。

　これだけの物を食べた遠海だが、未だに満足したという様子ではない。見た目は寧ろ、華奢にさえ見えるというのに一体その身体のどこにこれ程の食欲を備えているのか。
　しかし、これだけの量を食べるというのに、遠海の所作はあまりにも上品なものだ。
　きちんと一つ一つ味わって食べる姿は、本当に食べるのが好きなのだ周囲に知らしめる。一見すれば楚々とした鎌倉のお嬢様風な容姿であるという事もあり、時には周囲からの視線を集めている事さえあったりするのだ。

「うーん。一体、どうしてこんな事に？」

　料理コンテストのキッチンにて腕を組んで暫し悩む遠海。
　次は何を食べようかとうろついていたら、偶然いたサンマさんに料理コンテストに強制的に参加させられてしまったのだ。

「まぁ、参加させられたものは仕方ないから作る事にしてと。何を作ろう？」

　食材は豊富に用意されているので、作ろうと思えば大抵のものはできるだろう。
　ジッと食材と料理器具を見てから遠海は、秋っぽいものを作れば良いよね、と作るメニューを決めた。

　作る事にしたのは鮭とキノコの秋グラタン、秋ナスの焼き浸し、かぼちゃと春雨の中華風蒸し煮だ。
　包丁を握り、まずは鮭の下拵えを行う。鮭の切り身に塩と酒をかけて少しの間放置。
　グラタン用のキノコはきちんと洗った後に食べやすいようにカットをしていき、茄もまた同様の処置をする。
　
　その包丁捌きには淀みや戸惑いはなく、普段から料理しているのが伺えるものだ。
　普段から食べる事に楽しみを覚えている遠海だが、実のところ料理自体も得意だったりするのだ。
　だが、自らが作る料理の匂いでお腹が少しだけ鳴ってしまうのはご愛嬌だろうか。

（これが終わったらまた色々食べよう！）

　テキパキと料理を続けながら、そんな事を考える遠海であった。
　その後、遠海の提出した料理達は下処理の丁寧さ、食べ易い様に配慮されたカッティングを評価されて金賞を得る事となったのであった。

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