職業体験学習でお仕事しよう！　セカンドシーズン｜リアクション

職業体験学習でお仕事しよう！　セカンドシーズン

●うみねこで職業体験

　Tシャツにショートパンツといった動きやすい私服姿の仙藤蒼は、大衆食堂『うみねこ』に着くと魚戸夫妻に挨拶。
　持参したエプロンと三角巾をつけ、頭に三角巾をつけて準備完了。
　中学生は、仕事しやすい服装であれば私服でも良い、ということになっている。

　開店前の仕事は店内外の清掃。
「蒼ちゃん、暖簾を出しとくれ」
　厨房で料理の下拵えをしている魚戸ハルコに頼まれたので、店内に立てかけてある暖簾を持ち、入り口に掲げた。
　それが終わると同時に、最初にお客さんがやって来た。
「いらっしゃいませ！　空いている席にどうぞ」
　元気良く挨拶をし、客に水を持っていき「ご注文が決まりましたら声をかけてください」と言い次の仕事を。

　昼食時になると『うみねこ』は忙しい。
　アルバイトの鳴鏡院総悟や他の児童生徒もいるが、料理を運ぶだけでも大忙し。
　１人分ならまだしも、２人分とか３人分となると結構大変だ。
「ありがとうございました！」
　食事を済ませ、店を出るお客さんに挨拶をし、空いたテーブルの皿や食器を下げる。
（もうてんてこ舞い。息をつく余裕もないわ）
　下げた食器類を厨房に持っていくと、皿洗いをしている職業体験の生徒に手渡す。
　
　14時を過ぎた頃、最後の客がお店を出たので遅めの昼食。
「ご苦労さん。今、昼飯を作るからな」
　一人で調理していた魚戸ケンゾウは、頑張ってくれた児童生徒達のために賄いを用意してくれた。
　出されたのは即席のマグロ漬け丼。丼、刺身の盛り合わせといった海の幸メニュー充実な『うみねこ』らしい賄いだ。
　いただきますをしてから、児童生徒と魚戸夫妻、総悟は賄いを食べ始める。
「メチャクチャおいしい！」
　忙しかった仕事の後。お腹が空いていたこともあり、蒼はあっと言う間に平らげた。
「あの……おかわり、いいですか？」
　遠慮がちに頼む蒼は断わられるかと心配したが、この後もまだ仕事があるからたんと食え、とケンゾウは用意してくれた。
「おかわりしたい奴は言え。用意してやるぞ」
　口は悪いが、手伝ってくれた児童生徒を思いやるケンゾウだった。
（ああ満足。この後も頑張らないと！）
　おかわりしたマグロの漬丼を食べながら、この後の仕事も頑張らないと、と蒼はやる気が出た。

17時の開店までは、厨房や店内の掃除をしたり、残っている皿洗いをしたり。
　テーブルに置いてある箸入れに割り箸を補充したり、調味料を足したりと、やる仕事はけっこうある。
（これを普段、ケンゾウさんとハルコさんは２人で切り盛りしているのよね）
　今日１日『うみねこ』の仕事を体験し、いろいろやることが多くて魚戸夫妻の忙しさが身に染みてわかったような気がした。
　ケンゾウ76歳、ハルコ72歳とシルバー世代だが、アルバイトの総悟がいない日は夫婦だけでやっている。
　並みの根性じゃできないわね、と蒼は感心した。

　何かと忙しい職業体験の時間は、仕事をしているうちにあっという間に過ぎた。
　俺達からの礼だ、とケンゾウはお土産だと一口海鮮かき揚げを手渡した。
「ありがとうございます」
　忙しさを乗り越えた蒼は、お土産を貰うと疲れが一気に吹っ飛んだような気分だった。

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