豪遊！　異世界ショッピングツアー｜リアクション

豪遊！　異世界ショッピングツアー

水上桜は目の前のショッピング横丁を見回し、ため息を一つ。
　そして、
「またフツウかっ」
　絶叫しそうなところ、感情を押さえて呟いた。
　ショッピングツアーとのことだが、嫌な予感しかしない。
「あの」
　服の裾を引っ張られて、振り返ると、小学生低学年くらいの男の子が申し訳なさそうに立っていた。
「本日、ツアーコンダクターを務めさせてもらいます、イチトです。よろしく」
　ふわふわな髪の毛の中から生えているのは獣の耳だった。時折、ピクリと動くそれがリアルで本物なのだとわかる。
「ご案内します。どんなお店がお好みですか？」
「どんなって言われても……」
　寝子島で事足りているし、こんなわけのわからない場所にお金を落としたくないのだが。
「ではまず、僕のおすすめのお店を紹介しますよ。こちらです」
「う、うん」
　ケモ耳ショタツアコン、イチトについて、桜はショッピング横丁へと足を踏み入れた。

「ここなんかいかがでしょうか？」
　イチトの案内でやって来たのはどうやらおもちゃ屋のようだった。小さい子どものためのものではなく、対象年齢が高めの高級おもちゃ屋といった感じだ。
　店内は乱雑におもちゃの箱や袋が並んでいる。
「えーと、手のひらサイズ、ボタン一つで原寸大の日本刀に変化？　西洋剣バージョンあり……ん？　こっちは電池で動く、忍者人形。最大跳躍力三メートル」
　突飛なものばかりで、桜はうんざりし始めた。
「この指タイプレーザー銃のおもちゃとかどうでしょう」
イチトが手渡してきたのは指輪だった。
「これ、銃のおもちゃなの？」
「試してみて下さい」
　言われて指にはめてみると、あろうことか服が弾けとんだ。
「ふお！？」
　すぐに再構成されて、別の服に。それはぴっちりとしたボディスーツであった。
「これのどこが銃！？」
「人差し指に集中してみて下さい」
　言われてそうして見ると、指先に光が灯った。それが銃の形へと変わる。
「光線と音がリアルなのです。スパイごっこに最適。格好いいおもちゃでしょ」
「服関係なくない！？」
　謎である。とはいえ、指輪を外したら戻れたのでよかった。
「武器をご所望ならこれですね」
「なんでおもちゃ屋に武器が」
　出てきたのはピンク色の棒だった。先端に透明の宝石がついていて、赤いリボンが結ばれていた。
「なんか……小さいころ見たことがあるような」
　魔法少女ものでよく見る魔法のステッキのようだ。
「この宝石の部分ですが」
「うん？」
　パカッと開いて、銃口が飛び出てきた。
「！？」
「ショットガンです」
「このデザインの意味とは……」
　まだまだおすすめがあるというイチトについて行くと、今度は飲食店だった。窓口から買って、食べ歩きをするスタイルの店だ。
「ショッピング横丁限定ハンバーガーです」
　購入して手にすると、それは丸くて平たい五枚の板だった。薄茶色、緑、赤、黄色、カプセル数個また薄茶色という順番に重ねられている。
「……断言できる。多分、まずい」
　匂いすらない。ハンバーガー要素皆無だ。
　そして食べはしたが、紛れもなくサプリメントの風味と味わいだった。
　その後は電気屋に寄って、目玉デザインの電球や勝手に開くという冷蔵庫を紹介されたり。
　全体的に微妙過ぎたが、指タイプレーザー銃と目玉電球を購入。

　桜にとって、とにかく微妙過ぎるショッピングツアーだった。

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