豪遊！　異世界ショッピングツアー｜リアクション

豪遊！　異世界ショッピングツアー

成り行きでショッピングツアーに参加することになった折河樹と観月光はショッピング横丁の様子にポカンとした。楽しげで賑やかで不思議な雰囲気がする。見たことのない光景だ。
　樹と光担当のツアーコンダクター、黒くて艶のある毛並みを持つ猫獣人の説明に樹は顎に手を当てた。
「ここが異界であることは間違いないようだな」
「ほんとにそういう世界ってあるんだ。不思議～。せっかくだし楽しむとしましょーか！」
「おっと失礼、申し遅れました。私、クロハといいます」
「そう、よろしくね」
　光が言うと、クロハはピクリと動かした。
「さて、お店のご希望はございますか？」
「何が良いかなぁ。ねぇ、樹は」
「コンダクターよ！　俺たちを闇のアイテムが集いし店にいざなうのだ！」
　光とクロハはしばし無言になった。
(闇のアイテムって何。厨二病アイテム……？)
「闇、でございますか？」
　クロハ、困惑。
「邪悪なる闇の力が宿るそれを手にし、新たなる力を得るのだ」
「って、ああ。アクセサリーのことか。アクセサリーのお店に案内してほしいって言ってます～！あはは！！」
「そ、そうでしたか。これはこれは気づかずにすみません」
「あんまり気にしないで下さい、ざっくり解釈で大丈夫ですので！！」
　あ～、先行きが不安……光は心の中でため息をつくのだった。
「では、男性用のアクセサリーショップに。女性用もあるので、ぜひご利用下さいませ」
　異世界ショッピング、開始。

　到着したのは、看板の下に銀色の珠を持った龍が描かれた店だった。店先には大きな剣が門のように地面に突き刺さっている。
「これは……！」
　樹は目を見開いて、固まった。
「ちょっと、大丈夫？」
「お気に召しませんでしたか？」
　二人の不安をよそに、樹は地面に突き刺さった剣に歩み寄った。手をかざす。
「強力な魔力を感じる。俺にはまだ無理か……」
　樹は目を細め、看板を見上げた。
「なるほど、この店は闇の力を扱えるのだな」
「いや、良い意味で厨二っぽくて、明るい店だよ。闇要素ないでしょ」
「さあ、いざ行かん、闇の秘宝を手にいれるために！」
「秘宝って何……突っ込み追いつかなくてびっくりするよ」
「何やら気に入って頂けたようで安心しました！」
　明らかにクロハは引き気味である。
「ほんと、すみません」
　光が頭を下げている間にも樹は店内へ突撃して行ってしまった。
「あー、もう」
　追いかけて行くと、樹は早速銀の十字架を手にし、天井に高く掲げていた。デザインとしては、厨二病御用達の竜が巻き付いたアクセサリーである。カウンターの店員も目を瞬かせて見ている。
「これは……強力な黒龍のオーラが宿っている！」
「一体何が見えているの……」
「そしてこれはこっちは邪気眼の力を抑えるための眼帯！　そしてこちらは邪炎やどりし手に封印を施す布！」
「うん、包帯ね」
「くっ…迷うところだが、俺の内なる闇が一番に求めしはこの十字架だな！」
「クロハさん、これお買い上げだって言ってます」
　クロハは嬉しそうに頷いた。
「よかったです」
「はぁ、もう疲れた……」
「光の盟友よ」
「ん？」
　光が樹の方を見やると、目の前に金の十字架を突き付けられた。
「！」
　デザインは同じで金色……色違いのそれはいわゆるお揃いだった。
「俺には分かる。お前の内に宿る光竜の力。共鳴しているのだろう」
「してないしてない。ていうか、そんなマジカルな力、あたしにはやどってないから」
「くく。隠さなくとも良い。光と闇は対となるべき、こちらはお前に贈ろうではないか！」
「はいはい、おく……え！？」
　つまり、プレゼントということだろうか。
「……対だかなんだか知らないけど」
　単純に嬉しかった。光はもじもじとしながら、それを受け取った。
「ん～まぁ、受け取っておく。ありがとう」
　こうして、あっという間に買い物ツアーは終了した。樹と光の手元に残ったのは金と銀の十字架のアクセサリーだけ。

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