Twinkle☆winking｜リアクション

Twinkle☆winking

　空から太陽が隠される時は、秘密の時間。
　小山内海は、橘千歳とメッセージアプリでお喋りをしていた。

もう12月だね

そうね、期末テストまであっという間だわ

そうじゃなくて

……クリスマスの予定なら、ないわよ

　二人だけでデートに行かなくて良かったと思うべきか、まだ話題にもあげてくれない朴念仁な御剣刀を恨むべきか。こちらで勝手に計画を立てて、誘ってしまっても良いのだけれど――海はスタンプで会話を濁しながら思案する。

刀に誘ってもらおうか

どうやって？
クリスマスなんて忘れてるんじゃないかしら

シーサイドタウンのショッピングモール。
きっとクリスマスムードだよ

なるほどね。見れば思い出すかもしれないわ

あとね、ウインクのおまじない

本気？　あんな子供っぽいこと

ほんき

　既読はついたものの、返信に間がある。千歳のことだ、きっと何か正当な理由をつけて逃れようとしているのだろう。

恥ずかしがっちゃだめだよ？

わかったわよ！　それじゃ、そろそろおやすみ

　スタンプで返事をし、海はスマートフォンから目を離す。目を閉じればじんわりと疲れが滲んできて、思いのほか眠気が襲ってきた。
（おまじない……好きな人の名前かぁ）
　『たちばなちとせ』と『みつるぎかたな』は、同じ７文字。それが運良くといっていいのかわからず、海は苦笑する。
　二人分まとめて出来るかはわからないけれど、ろっこんみたいな不思議があるこの島でなら、おまじないだって叶う気がする。
　朝起きて、ウインクをするときどんな願いを込めようか。翌朝を楽しみに、海はうとうとと眠りについた。

　そして数日後、千歳は眉間に皺を寄せて目覚めた。今日は海と刀と３人で、シーサイドタウンのショッピングモールへ遊びに行く日だ。
（おまじない……やりそびれてしまったわね）
　もう１２月。……まだ１２月初旬、されど１２月。今日というチャンスを逃せば、刀からクリスマスのお誘いなんて高等技術は期待できない。
（とは言っても、さすがにね。怪しいというか、子供っぽすぎるわよね）
　起き上がってしまえば、おまじないをするチャンスを逃してしまう。そう思うと中々起き上がれないのは、やはりどこかで期待をしているからだろうか。
（それで伝わるぐらいなら安いものだけど……もう高２なんだし）
　そんなお年頃だからこそ、好きな人とクリスマスは過ごしたいわけで。千歳は布団を頭まで被って、どうしたものかとジタバタする。
　一向にクリスマスの話題が出ないけれど、刀はどうするつもりなのだろう。こちらから予定を伺えば、まるで誘われるのを催促しているようだし、ここはおまじないに掛けてみるのも悪くないかもしれない。
（そうよ、小山内さんと約束したし！　うん、願掛けくらいなら……ね？）
　やらない理由はたくさんあげても諦められなかったのに、やってもいい理由が浮かぶと迷い無く起き上がる。
　手ぐしで髪を軽く整え、深呼吸をひとつ。ツリーの前で笑っている刀を想像する。

（いい加減何か言ってきて、刀君）
　大切にウインクを７回。あまりに真剣にお願いしたのか、千歳はつい柏手を打つ。
「……今のでも有効かな？」
　ちょっと手順が違ってしまったような気はするけど、きちんとウインクは出来たはず。それに、成果があるかどうかはきっとすぐにわかるだろう。
　千歳はクローゼットの前に立ち、少し気合いを入れて準備するのだった。