Twinkle☆winking｜リアクション

Twinkle☆winking

　乙女たちが奮闘しているとはつゆ知らず。刀はカレンダーを眺めて怒涛の一年を振り返っていた。
　普通の学校生活はもちろんのこと、休日には寝子島中遊びに出かけて、剣術の修行からフツウじゃない冒険まで。この充実っぷりは誰にも負けない自信がある。
　そんな楽しい一年もあっという間の12月。つまり、クリスマスにお正月と、冬のイベントはこれからだ。
（そうだ、二人を二年参りとか誘おう。賑わってる神社もいいし、ひっそりした所で決意新たにって感じも……）
　さっそく良さげな神社をリサーチだ。そんなことを考えてると、スマートフォンが刀を呼びつける。
「千歳じゃないか。タイミングいいな……ん？」
『まさか、まだ寝てるなんてことないわよね？』
　表示されたメッセージに、刀は時間を確認する。今日はショッピングモールへ出かける約束だからーー。
「ヤバい、急げ！」
　家を出る予定の時間は、とっくに過ぎている。これを見越して連絡をしてきたのなら、さすが千歳だ。
　そんな感心をしながら、刀は上着を掴んで家を飛び出した。

　心の弾む陽気なクリスマスソングに、リースや星が飾られたショッピングモール。各々の店舗でも小さなツリーやサンタクロースの人形が飾られていて、どこを向いてもクリスマスムードだ。
　さすがの刀も、この空気に当てられたら誘いの言葉の１つや２つ出るだろう。海と千歳は顔を見合わせてにこりと微笑んだ。
「この風景を見ると年末商戦って感じがするな～」
　しかし、飛び出たのはクリスマスどころか色気も食い気もない一言で。
　いや、予想外ではあるが、そうすんなりとクリスマスの誘いが出来る男なら、今までだって苦労はしていない。付き合いが長くなれば彼の鈍さも慣れた物で、海は気を取り直して話題を提供する。
『クリスマスケーキの予約がやってる』
「あ、あら本当！　ここのケーキ美味しいって評判なのよね」
『ねーっ！』
　美味しさだけでなく、見た目の可愛らしさも評判になっている理由の１つ。二人の盛り上がりに、刀はでかでかと貼ってある『クリスマス限定ケーキ承ります』のポップをしげしげと見る。年末商戦の一環にしか見えないが、一体何に心引かれたのか……探るように見ていても、ちょっと豪華なクリスマスケーキだということしかわからない。

『席空いてるみたい。入ろう、入ろう！』
　海に手を引かれるようにして、千歳と刀は入店する。そうして今更になって、刀は思い至った。
（そういえば、二人はクリスマスに予定あるのかな？）
　家族で過ごすとか、友達と過ごすとか。できればまあ、自分と過ごしたいと思ってもらえればいいけれど、男女にとってのクリスマスはやっぱり特別だと思うから。
　切り出すタイミングを逃してしまったことに、ちょっと緊張しているのかもしれないなと独りごちる。
「ちょっと小山内さん、慌てなくても……っ」
　これだけクリスマスムードに包まれた場所なら、またチャンスも巡ってくるはず。刀はひとまず２人が楽しみにしているケーキがどれほどの物なのかと、年末商戦に踊らされるのも少し楽しみになった。

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