タピオカにゃんにゃん｜リアクション

タピオカにゃんにゃん

　６　息抜きに必要なのは……

　現役女子高生グラビアアイドルとして活動している初瀬川理緒は、同時に受験生でもある。仕事と勉強で心に余裕の無い毎日で、この日の放課後、息抜きをしようと彼女は恋人の佐和崎紗月を誘ってみた。
「ねえ、今日あのタピオカのお店に行ってみない？」
「いいよ。私も気晴らしがしたかったの」
　美味しいスイーツを楽しめるという期待に心を弾ませ、２人は『タピオカにゃんにゃん』に向かう。
「たまには放課後に遊んでもいいわよね」
「……理緒ちゃんは絶対に受からないとお仕事に関係するから大変よね」
「うん。でもこうやって紗月と息抜きが出来るから頑張れるわ」
　大学合格をグラビアアイドルとしての企画にしているので、落ちるわけにはいかない。
「あ、ここじゃない？」
　紗月が立ち止まる。可愛らしい外観にテンションを上げ、２人は店に入った。
「わ、混んでる」
「……どうしようか、テイクアウトする……？」
　イートインスペースは全て埋まっていて、２人は顔を見合わせる。紗月がテイクアウトを提案した時、テーブル席に空きが出来た。
「あ、空いたわ。あたし、席取っておくね。注文は……」
　ＳＮＳでこの店の存在を知ってからメニューもチェックしていたので、すぐに注文を伝えられた。
（あそこにいる猫がたぴおかね。可愛いなぁ……）
　他のテーブルでくつろいでいる黒猫を眺めていると、紗月がトレーを持ってきた。
「はい、タピオカ入りカフェオレとタピオカパフェだよ」
「ありがとう。紗月はタピオカ入りミルクティーとシフォンケーキにしたのね」
「写真が美味しそうだったんだ」
　薄く生クリームが塗られたふわふわしたシフォンケーキの上に、タピオカが乗っている。ケーキの周囲にも、猫型のタピオカが円状に飾られていた。
「これがタピオカか……実は食べるの初めてなんだよね」
「本当に猫の形してる。可愛いね」
　理緒が猫の形に注目している中、紗月はスプーンを取った。フォークで刺すのは何となく抵抗がある。食べるのもちょっともったいない気がした。
「そういえば、紗月の店じゃタピオカは出してないよね」
「うん、うちの喫茶店は静かな雰囲気だし、客層が違うからあんまりウケないと思うけど」
　話しつつ、紗月はゆっくりとタピオカを食べた。
「もちもちしてて美味しいね」
「そうね、まあこんなものかな」
　理緒の感想としては、可もなく不可もなく、という感じだった。タピオカの味よりも、紗月が食べている様子を見るのが楽しい。躊躇いがちにケーキを食べ進める彼女が可愛く思える。
「猫の形が気になるの？」
　微笑みつつ聞くと、紗月は控えめな仕草で頷いた。
「食べるのがもったいなくて」
「紗月らしいなあ」
「理緒ちゃんはどんどん食べていくわね」
「うん、あたしは割り切っちゃうタイプかも」
　話をしていたら、たぴおかが鳴きながらやってきた。テーブルの下から見上げてきたところを、理緒が抱き上げる。見ていると、この猫は撫でてもらうのがかなり好きらしい。
「撫でてくれていた人が帰ると、きょろきょろして次の人を探してるのよね」
「珍しい猫ね。ずっと触られるのが嫌な子も多いのに」
　紗月もそっとたぴおかを撫でる。２人で猫を可愛がっていると、理緒は何となく幸せな気持ちになってきた。
（……そう、この『紗月と一緒にいる幸せ』があたしには必要なんだ）
　やがて腰を上げ、外に出ると空は朱色に染まっていた。
「じゃあまたね」
「うん、また明日」
　別れた後、理緒の心はいつもの放課後にはない幸福感に満たされていた。

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あとがき

担当マスター：沢樹一海
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ご参加いただきありがとうございます。
遅くなりまして申し訳ありません。
タピオカにゃんにゃんなリアクションをお届けいたします。

穏やかな雰囲気のリアクションのではないかと思います。
数少ないながら飲んだ（食べた？）タピオカを思い出しつつ書かせていただきました。
タピオカは９月には流行ってないとかどこかのドラマの台詞でありましたが、
まだ流行っているようでなによりです。
ナタデココのように定番になるのか消えていくのか否か。

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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