#彼女の曖昧な考察　～獣性～｜リアクション

#彼女の曖昧な考察　～獣性～

【まばゆい闇へ】

　朝焼けの空へ伝わってゆく、まるで狼の遠吠え。恵御納夏朝はびくりと肩を震わせました。
「なんとか、出られたね……」
　くすくすと笑う声が次第に頭の中へまで響き始めるに至り、夏朝と志波武道、呉井陽太は施設の痕跡から飛び出しました。おびただしい『現象』が入り交じる中、あのまま調査を続けるのは危険と判断したのです。
　今はもう、なにも聞こえません。
　武道は眉を寄せながら施設跡の入り口を振り返り、嘆息します。
「狼女は、ここにいた。でもきっと、それだけじゃない。ここではあの映像みたいなことが幾度も、ずっと行われてたんだろうか」
「うん」
　陽太は施設跡からかろうじて持ち出すことの出来た、フォルダの中に収められていた資料の一枚を眺め、細い目をさらに細めます。
「彼らはまだ、この島にいるのかもしれないねぃ。まだなにか、企んでいるのかも……」
　滲んだインクで要所の読み取れない役立たずの資料。その一角にくっきりと印刷された、おそらくはなんらかの組織の象徴らしき黒い印章。
　それは……六本指。

　日がすっかり昇り切ってから、三人は再び施設の跡地を訪れました。多分に希望的観点ながら、日も高いうちからあのような現象は頻発しまいと考えたのです。
　それにまがりなりにもあの場で誰かが死んでいたなら、通報する必要もあるでしょう。
「……？　あれ？」
　けれど彼らは、入り口を見つけることができませんでした。去る時には分かりやすく目印を付けていったにも関わらず、二度と発見することはできませんでした。その痕跡さえも。
　今は陽太が手に持つ資料の中で、風に揺れる六本指の印章がわずかにそれを伝えるのみ。
「僕たちが知らないうちに、寝子島に入り込んで……『連中』は」
　消えてしまえ、と夏朝はこぼすようにつぶやきます。隠しがたい激情をちりと感じながら、武道は小さくうなずきました。
　フツウを乱す存在。寝子島を脅かす存在。それらの抹消を願う者もあれば、あえて日の当たる下へさらけだそうとする者もありました。
　はたして誰が正しく、誰が間違っているのか。

「まだ……終わらないな」
　明けていく夜はもう、答えを教えてはくれませんでした。

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あとがき

担当マスター：墨谷幽
ファンレターはマスターページから！

　墨谷幽です。『彼女の曖昧な考察』第二弾のリアクションをお届けいたします。

　今回のテーマは、狼男（ウェアウルフ）でした。墨谷もなかなか好きなモンスターです。
　当シリーズは一貫してさまざまなホラー系シナリオをお届けする予定なのですが、ホラーにもいろいろありますよね。心霊ホラーや怪談もの、サイコホラー、前回のような宇宙もの？　スラッシャーにすぷらったーに、まあホラーだけでも細かくジャンル分けができるわけですね。
　毎回手を変え品を変え、幅広くやっていきたいところです。

　それにしても今回は、プレイヤーさまのアクションによって、話は意外な展開に！
　秘子ちゃんもぶっちゃけてますが、やはり予測不能な波乱があってナンボですよね。
　今後もカタにはまらず、皆さまの不意や意表を突いていけたらいいな！　という気概でがんばってまいります～。

　まだまだ続くので、よろしければこれからもお付き合いくださいませ～！
　それでは、今回もご参加いただきありがとうございました。
　また次のシナリオにてお目にかかれますことを、心よりお待ちしております～。
　お疲れさまでした！

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