寝子島美味しい物フェスタ！｜リアクション

寝子島美味しい物フェスタ！

　治が示した屋台では、漸くラーメンの屋台にたどり着くことができた代真子が、早速店で一番おすすめの物を注文していた。出てきたのは塩ラーメンだが、魚の出汁が効いている上、しらすとネギが程よい塩梅でもられていた。
「うんうん、ネギの風味が食欲をそそるわね。それに麺の茹で加減も絶妙で、しらすとの相性も抜群でいい感じだわ」
「中々美味しいですね。これも期待できそうです」
　ニコニコとしたリッカルドと笑い合い、つるつると軽快な音を立てて食べる代真子。その食べっぷりに興味を示したのか、多くの来場者が集まってきた。
「押さないでください！　こちらが最後尾になります」
　休憩中にも関わらず、蓮が列の整理に励む。彼の声に耳を傾けながらラーメンを完食した代真子はふぅ、と一息つくと店主にこう言った。
「あの、すみません。店の二番目にオススメなラーメンをください」

　概ね良好な『美味しい物フェスタ』。とくにトラブルもなく（約１名除く）、このまま順調に進みそうだ。手応えを感じたリッカルドは、人々が楽しむ姿に確信を得る。
「これならば、いい『一押し』も選ばれそうですね。実に楽しみです」

急：フェスタは賑やかに、楽しく！

　蓮が休憩所で休んでいると、ののこと出くわした。彼女は『さんまさん飴』や『寝子饅頭』などを買って一休みといったところだろう、と彼は考える。
「あ、蓮君！　ボランティア、お疲れ様」
「ののこさん、誘っていただきありがとうございます。楽しんでいるようですね」
　ののこから冷えたオレンジジュースを受け取り、礼を述べて飲むとさっぱりとした風味が喉を駆け抜けた。彼の記憶が確かなら、寝子島産オレンジの紹介として出された物だ。
「実においしいです。……あれ？　あれは……」
　ふと、蓮が顔を上げると近くの屋台が騒がしい。ののこと２人で不思議そうに見ていると、海と冰がやってきた。
「あれは、何なの？」
『かんづめを、あけてる』
「『さんまさんの缶詰』の試食って事で、離れた場所で缶を開けていたんだ。それでだよ」
　海と冰の話によると、その缶詰はサンマの塩漬けを缶の中で発酵させたもの、らしい。ののこが「おいしいのかな？」と首をかしげる横で、「どうでしょう」と考える蓮。宗教上の信念で動物由来の食品を食べない為か、あまり想像がわかない。
　一方、海と冰の２人は『寝子大海老の味噌汁』を買っていた所だ。中々ボリュームがあり、２人でも食べきれるか怪しい所だった。
『いっしょにたべる？』
「え？　いいの～？」
　海の誘いにののこが目を輝かせる。冰としても一緒に食べたいらしい。気を利かせた蓮が「お茶を持ってきますね」と３人分のお茶と、ののこの分の箸を用意してくれた。

「いらっしゃーい」
　魚新の屋台では、すばるが相変わらずちくわくんスタイルで接客を頑張っていた。香ばしい蒲焼の匂いに釣られた綾花は他にも美味しそうな物がある事に気付く。
「こちらの干物も美味しそうですね」
「確かに、おいしい」
　刀も買ったばかりの『サンマちくわ』を頬張り、１つ頷く。内心では財布の紐を引き締めないと、と思うもののこうも美味しい物が揃うとついつい緩んでしまうものである。
「あ、試供品のちくわもまだあるから。気にしないで摘んでいってね」
　お小遣いが少ないのはボクも一緒だから、と愛らしい仕草で答える。そして密かにたいていたご飯を取り出した。
「はい、たーんとお上がり」
「……いいのか？」
　刀は戸惑うものの、お言葉に甘えていただく事にした。肉体労働は何かとお腹がすくのだ。綾花もまた、ののこにちくわを買っていくのだった。

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