【星幽塔】第二階層　水道橋で流しそうめん｜リアクション

【星幽塔】第二階層　水道橋で流しそうめん

　第二階層、最上流地点「星見の間」。

　階層全体を満たす大量の水は、すべてここから流れ出ている。
　現在その中州となっている地点では「水路橋流しそうめん計画」に乗ったほしびとや、アヴィケンナの貸与したオートマトンが、小麦粉の運び出しや製麺、その他さまざまな準備にいそしんでいる。
　月詠はその一隅にしつらえられた、彼女のための特別ブースに歩み寄った。
　特製の調理コーナー。
　完全装備の奥様垂涎、完璧なシステムキッチンに、十分手入れの行き届いた食器類。
　それに加えて、斧やメイス、大鋏など、到底料理では使用しないような武器が並べられている。
　月詠は傍らの片刃の短刀を手に取って、月光に晒した。
　彼女愛用の緋色大鍋が照り輝く。
　ギラリと反射する光が、月詠の目を射た。

「別に変わり種を流しても、かまわんのだろう？」

　フリースタイル料理人、旅鴉月詠。
　謎めいた言葉を呟く彼女の心の内を、知る者はいない。