【星幽塔】第二階層　水道橋で流しそうめん｜リアクション

【星幽塔】第二階層　水道橋で流しそうめん

　――ふむ。
　水路橋の全体図を確認して、八神修は全体の状況をもう一度繰り返す。
　大きく分けて、水路橋は三つのブロックに分かれている。
　調理をするブロック。
　モンスターの多発が予想される戦闘ブロック。
　そして流れてきたそうめんを食べるブロック。
　もちろんそれぞれのブロックは明確に分かれているわけではなく、調理しつつの戦闘、食べながらの戦闘という状況も起こる。
　安全で楽しい食事のため、修は統括と管理を買って出ていた。
（皆が美味しく安心して楽しめるように、スライムをなんとかしたい）
　夏パーカーに短パンという軽装の修、いつものように念入りな準備を怠らない。
「いいねー、流しそうめん！　ザ・夏！　って感じだよね！！」

　経路図をのぞき見しつつ、志波武道がうきうきと答える。
「水路で流しそうめんって面白そう！」
　普段よりさらにテンション高めなのはアリス・ミーティア。
　彼らを含め、皆戦闘のパイオニア達。
　相手の情報は少ないが、無理なく動けば危険な状態は避けられるだろう。
　「せっかくだから、がんばりますなの！」
　こちらも元気に答えるのは橘明里。
　今回、旅鴉月詠とともに、上流での調理班を買って出ている。
　常日頃、天使を自称する明里。
　この星幽塔においても、その衣装は実に美麗というか、エキセントリックというか、超地上的な風情である。
　ウエディングドレスと僧正の法衣が激突し、無理やり天使の六枚羽を搭載したと言ったらいいか。
　頭部には天使の輪をあしらったティアラに、全身これ動く宝物殿と言わんがばかりの壮麗華美な衣装、まさに動くルネサンス様式。
　間違いなくデザインしたやつは、人間が動き生活するということを理解していない。
「ちょっとふだんとちがうかなー、って思うけど、せーゆーとーだからいいの！」
　本人はいたって気にしていない。
　エンジェルモード発言中の明里、はたしてその内に秘めたる野望は何か……。
　
　一同が持ち場についたことを確認し、修は今回の武器を取り出す。
　別の場所では、知り合いが普通の流しそうめんを、ほしびとたちに披露するという。
　そちらでも、何か手助けしたい。
　そのためにも、こちらの流しそうめんを、出来るだけ滞りなくすませることが必要だった。
　右手に構えるのは、一対の銀の箸。
　菜箸というよりさらに長い、あまり見ない形の火箸だ。
　
　準備は整った。