【星幽塔】第二階層　水道橋で流しそうめん｜リアクション

【星幽塔】第二階層　水道橋で流しそうめん

「どの麺もおいしいね！」
　先ほどからかなりの量を食べているにもかかわらず、一向に食欲の衰える気配をみせないアリス。　
　武道はようやくスタンバイ済みのピリ辛ごまだれでそうめんに舌鼓を打つ。
「アヴィケンナも、食べない？」
　夏朝が、鉢に綺麗に盛ったそうめんを手渡す。
　礼を言って受け取るアヴィケンナ。
「いくら食べても飽きないね。不思議」

「ふー、いっぱい倒して食べましたねー」
　満足げな吐息をつくリリエル。
　同じく星空を仰いで満足げなメリィと視線が合う。
「メリィちゃんもいっぱいモンスター退治、お疲れ様です！」
　軽やかなハイタッチの音が響く。
「コトコちゃんも、いっぱい食べれたかな？」
「とー、おにゃかいぱいれす･･････」
　リリエルとメリィを見上げるコトコ。
　その目はとろんとしてうつろ。
　頑張ってバトルもし、おなかいっぱいそうめんを食べたのだ。
「ねーこっこするれす･･････」
　コトコはそう言うと、傍らのそうめんにくるくるとくるまり、そのまま寝息を立て始めた。
　――ラッコみたいです。
　だれかが笑った。
　そうめんのやわらかさと、香りに包まれて、コトコの寝顔はしあわせに溢れていた。

「アヴィケンナも、寝子島に遊びに来てよ」
　そんな誘いに、アヴィケンナは視線をさまよわせる。
「アステリズムが、塔を離れると、いろいろ問題が･･････」
「別に問題はないの」
　顔を真っ赤にしたステラが、アヴィケンナに笑いかける。
「いつ第二階層が、外敵の脅威に晒されないとも限らないの。年若いアヴィケンナは、さまざまな文化交流を通して、文化を肌で感じ、おいしいビールのおつまみを探してくる義務があるの」
　一息にしゃべり、ぐっとビールをあおる。
　アヴィケンナは、手元のそうめんのつゆを見つめる。
「確かに、実地で経験してみないとわからないこともあるな」
　実際にそうめんを持ち込み、体験してもらおうとしたそうめん三銃士。
　その熱意は、一人の少年の視野を、少しだけ広げたようである。
　笑顔を向ける三銃士に、アヴィケンナは頬を赤らめ、明後日の方向を向いた。
「暇があったら。どうせなら、神威でも一緒に連れて行こう。あいつ、なんでも喜んで食べるよ。バカ舌だから」
「無料券をゲットしたら寝子島のお店にも遊びに来てネ！」華菜子がみなに呼びかける。

「お腹一杯･･････」
　口元を拭って、夏朝が空を見上げる。
　健康ゼリースライムを食べる傍ら、他のそうめんやゼリーも頂いた。
　結構たくさん食べてしまった。
「楽しかった･･････かな？
　アヴィケンナも、皆も･･････本当に、ありがとう！」
　魔物退治に、文化交流、そして食事。
　普段の三倍以上疲れた皆、ぐったりした笑顔を見せる。
　風が吹き抜ける。
　寝子島のそれとは違う、からりと乾いた大陸性の風が、一同の熱気に火照った体を冷やす。
　修は星の鏤められた夜空と、それを背景にした水路橋の影を目にしながら、ノンアルコールの日本酒を手酌した。
　明晰さが狂うのを気にして、というわけでもないが、酒精の力なしでも、みんなとの喧噪を十分共有できる。
　ステラのように、ビール好きの精霊なんてのもいるが。
　修は口元に杯を近づける。
　その手がピタリと止まる。
　本日何度目かの、修のいやな予感だ。
（抹茶や、あんこがスライムになって水路橋に溢れた）
　ということは、星の力を使えば、液体をスライム化し、大量増殖させることも可能なのかもしれない。
（ならば、ビールも）
　水路に満ちる黄金色のスライム。
　あちこちに溢れる酔っ払い。
　想像したくないが･･････。

（いや、いる。一人だけ。ビールスライム大繁殖を待ち望んでいるものが）

　ステラの背中が、不意に揺らいだ気がした。

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あとがき

担当マスター：ぱーすぺ
ファンレターはマスターページから！

ありがとうございました！
勢いで出してしまったガイドだったのですが、戦闘にも交流にも充実したアクションを頂き、感激しております。
ＰＬ様からもアイデアをご提案頂いて、クライマックスのイベントに使用させて頂きました。
リアルの方ではまだまだ暑い日が続きますので、くれぐれも体調にお気遣いください。
では、またお会いいたしましょう。

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