シーサイドタウン　秋の大サービスキャンペーン｜リアクション

シーサイドタウン　秋の大サービスキャンペーン

　現在中学三年生の篠原翠響は今日も寝子島スポーツセンターで新体操のトレーニングに余念がない。
　翠響は直近の大きな大会であった八月の関東ジュニア女子新体操選手権大会で優勝を果たしている。この勢いを保持したまま秋の十一月にある中学最後の大会となる全日本ジュニア選手権でも優勝を狙うつもりでいた。
　その為には毎日のトレーニングをきちんと積み、八月から更なる成長を遂げる必要がある。少なくとも翠響はそう考えているのだ。

「お疲れー」
「お疲れ様ですー」

　練習が終わり挨拶が交わるロッカールームで翠響もまた着替えをしている。
　すると、先に着替え終わった同じ体操クラブに所属している女子が翠響へと話しかけて来た。

「ねぇねぇ、篠原さん」
「ん、何？」
「今、シーサイドタウンでキャンペーンやってるの知ってる？」
「え、知らない。何それ？」

　キャンペーン？　と小首を傾げる翠響にその女子は彼女が知っている情報を詳しく話してくれる。

「何かー、その期間中にクーポンとやらが貰えてそのクーポンはシーサイドタウンの店なら大抵のところで使えるんだとか」
「へぇ、そんなキャンペーンが……」

　その話を聞いて、そう言えば何時だか忘れたがそんなクーポンを貰ったような覚えが翠響にもあった。
　トレーニングが忙しい為に詳しく見たり調べたりせずに部屋のどこかに置いた筈であった。

（そんなに時間は取れないけど……明日ちょっと顔を出してみるのもありかな？）

　翌日の日曜日。カジュアルな服装に身を包んだ翠響はシーサイドタウンの街角を一人歩いていた。部屋で見つけたクーポンを片手に。
　しかし、今日も午後から練習がある為にこうして出かけていられるのも午後の一時までだ。その為、そんなに悠長にしている暇はない。
　翠響はまずは目的の一つである本を買う為に本屋へと向かった。

（まずはあの漫画の最新刊と……後はラノベも最新刊出てた筈だから買って行こう）

　それぞれのコーナーを回り、手に取っていくのは翠響が愛読し続けているタイトルの漫画とライトノベルである。タイミング良く新刊が出ていたのでこの安く買える機会に買っておこうと思ったようだ。
　そして、次に向かうのは服屋だ。練習で時間が取れずにいた翠響はまだ秋物を買えずにいたのだろう。
　服と服の合間を縫うようにしてゆっくりと見て回り、気に入った物を何着か購入して行った。

「へぇ、CDショップの半額券かぁ」

　立ち止まっている翠響が手にしているのはCDショップ『Pioggia d'aprile』の商品半額券のようだ。
　クーポンを使って買い物を済ませた翠響は事前に聞いていた通りに福引を引きに行き、そこで出たのがこの半額券というわけである。

「イメトレで使うクラシックのCD欲しかったし丁度良いかも」

　普段のトレーニングでは当然課題曲のCDは用意されているのだが、自主トレ用のCDを個人的に欲していた翠響はこれ幸いとばかりにCDショップへと足を向ける。
　そして、目的のCDをゲットしたのは良いのだが中学生のお小遣いではここが限界だと判断したようだ。

「十分に楽しめたし、そろそろ帰ろうかな」

　時間にすればそう長くはなかったが、それでも翠響からすれば収穫の多い一時となったようだ。