秋の扉をあけて｜リアクション

秋の扉をあけて

○寝子高ホームルーム

（クラスメイトと久々に会うと嬉しくなりますね）
　萌々子は一年六組の教室でみんなの顔を見ながら思っていた。
　実家には戻らず夏休みの間もずっと寝子島にいたけれど、ネコミケもあったし退屈はしなかった。
　中学生の時は厳しかった父の重圧で、あまり学校生活も楽しめていなかったと思う。

　泉竜次先生が入ってきて、ホームルームが始まった。
「これから体育祭実行委員を決める。立候補する者はいないか？」
　泉竜次先生の言葉に、萌々子は考える。
（せっかく自分の意志で決めた高校生活だから色々やってみたいと思いますが………立候補してみてもいいでしょうか？）
　思い切って手を上げると、泉先生は嬉しそうな顔をした。
「いいな。愛猫、抱負を聞かせてくれ」
　ちょっと考えて、萌々子は答えた。
「みんなで体育祭を成功させるという意気込みで、団結のお手伝いが出来るよう頑張ります」
　パチパチパチ……拍手が沸き起こる。
（……あと、『のののガール！！』のネタ集めも兼ねているのは秘密です）
　ののこ様親衛隊員である萌々子は、ののこをモデルにした創作漫画のネタ集めに余念がないのだった。

「夏休みもあっという間でしたねぇ……色々食べられて楽しかったです♪」
　久しぶりの学校、二年一組の教室で、巫部紫苑はのんびり過ごしていた。
（ふぅ……久々の学校と校長先生のお話を聞いたせいか、なんだかちょっとお腹空いちゃいましたね……朝ごはん足りなかったかしら？）
　紫苑は朝ごはんの内容を思い返す。
（ご飯３杯、焼き魚、ウィンナー、卵焼きにおかずに……お味噌汁……おいしかったです）
　約３人前以上の量を食べているのだが。
「お腹が鳴るといけないからホームルーム前にちょっと食べときましょう」
　そう言うと紫苑は鞄から大きなサンドイッチを取り出した。
　クラスメイトの視線が集まる中、ペロリと平らげてしまう。
　そして視線は、その優雅かつ食欲旺盛な食べっぷりだけに向けられたものではなかった。
「それにしても、なんかずっとスースーしてる様な？」
「……あの、巫部さん」
　豊満な胸の真ん中辺りのシャツのボタンを留め忘れていることを、見かねたクラスメイトに指摘され、ようやく気づいた。

（久保田先生も、皆も……無事に秋を迎えられて、本当に良かった）
　二年二組では、恵御納夏朝が胸を撫で下ろしていた。
　終業式では担任の久保田美和先生がきっかけで神魂が暴走し、時間が止まってしまう事件があり、どうなることかと心配したが……
（夏休みも楽しく過ごせた……２学期以降も、頑張るよ！）
　そんな２学期を迎えて、夏朝がホームルームを前に思うこと。
（転校生……今回はいるかな？　寝子島や寝子高を楽しんでもらえたら嬉しい）
　だが、単なる転校生への興味だけではない。
（寝子高への転校生……もう１人、増やしたかったな）
　夏朝の中には、別人格・夏夜がいる。
　性格は違うけれど、お互いを大事に思っている。
　夏朝が秘めているのは、『夏夜と心身ともに分離・共存する』願い。
（叶えられれば、夏夜ちゃんも寝子高に入ると思うから。同じ組に入るかはわからないけど……３学期こそは……！）

「はーい、みんな席について～」
　教室に入ってきた美和先生は、残念ながら転校生を連れていなかったが、元気そうだ。
「夏休みの宿題を集めます～」
　宿題を提出しながら夏朝は思う。
（今年は終わらせるのに時間かかったから、来年はもう少し早めに終わらせよう。受験勉強とか、色々頑張らないとだし……）
　夏朝は転科についても考えていた。
（色々考えたけど、今学期は普通科のまま、二組で頑張るよ。……進路も、そろそろ決めておかないと……！）

　