秋の扉をあけて｜リアクション

秋の扉をあけて

☆寝子高のご案内

　掃除終了後。
「……穂村君、もし良かったら校舎内を案内するけど……」
　転校生の穂村敦は、真面目そうな女子に声をかけられた。
「……ああ、頼む」
　クラス委員ってとこだろうか。
　校内を案内してもらえるのはありがたい。
（……だが、なんか怯えてるように見えるのは気のせいだろうか）
　ともあれありがたく案内してもらうことにしたが。

「そこが保健室で、こっちが学食……ところで」
　校舎を案内されている途中、チラチラとこちらを伺っていた彼女の口からとんでもない質問が飛び出した。
「あの……前の学校を退学になったって本当？」
「……！？」
（いやいや、退学どころか停学にもなったことねえぞ俺！）
　さっきの嫌な予感は的中したらしい。
「ご、ごめんなさい、言いたくなかったら別にいいの、誰にでも内緒にしたい過去はあるわよね」
「いや、嘘だよ！　どっからそんな話が出たんだ？！」
　その女子に確認したところ。
「噂が流れてたわ。ケンカで相手を病院送りにしたとか、悪さをしすぎて本土の高校を退学になったとか……」
　敦はがっくりと肩を落とし、赤髪の頭を抱える。
（……前途多難、だ）
「大丈夫？　うちの学校、元ヤンキーもけっこういるらしいけど、番長とかいないから抗争はないと思うわ」
　正直な女子生徒に感謝しつつも、複雑な気持ちで敦は訴える。
「……俺は、退学になったわけじゃねえ。単にオヤジの転勤でこっちへ来ただけだ」
「クマ先生とかに睨まれると思うけど、逆らわないほうがいいわよ。あの先生象を持ち上げたんですって」
「……マジかよ？！」
　敦の頭には、巨大な象を担ぐ凶暴なヒグマの絵が浮かんでいた。
「ほんとよ。去年先輩が見たそうよ」
　……この学校けっこうヤバいんじゃないだろうか。
　暑さの中冷や汗が伝う敦だった。
　