ドネルケバブ『Gule gule!』｜リアクション

ドネルケバブ『Gule gule!』

●ドンドルマでパフォーマンス

「お待ちどうさん！　熱いから気をつけて食べてくれ！」
「サンキュー、おっちゃん。ほー、これがケバブか。んじゃ、いただきます！」
　豪快にかぶりつくと、口の中に肉汁とソースがいっぱい広がる。
「……うめえ！　おっちゃん、うめえなこれ！」
　食って正解だ！　と穂村敦は勢いよく食べ始めた。
「そうだろ？　うちのケバブはうまいぞ！」
　親指をグッと立て、ケバブを頬張る敦を嬉しそうに見るバルシュ・コルテュルク。

「ふう、うまかった。ごっそさん、うまかった！」
　注文したケバブを食べ終えた敦は、ワゴン前に置いてあるベンチに座ってケバブを買いに来た客の様子を見ている。
「夏はアイスが一番だよな！　パフォーマンスも見て、目でも涼しくなってくれ！」
　そう言うとバルシュは、棒でぐいぐいアイスを錬ってかき混ぜて、ぐいーっと伸ばし始めた。
　パフォーマンスに興味を示した女性客が「アイスください、コーンで」と注文を。
　注文が入ったら練ったアイスをコーンに乗せ、渡す……と見せかけてひょいっと取り上げる。
　更にアイス乗せ、渡す……と見せかけて取り上げるを繰り返し、混ぜた棒にアイスとコーンくっつけくるくる回したり。
「すげえな、あのおっちゃん……」
　敦はバルシュのパフォーマンスに感心する。

「この店、アイスもあんのか？」
「ドンドルマか？　これも美味いぞ！　トルコのアイスだ」
「えーっと、じゃあそのドンドルマ？　ってのもくれ！」
　敦にも、先ほどの女性客と同じようなパフォーマンスを。
「おぅ、ありがと……ってうぉ！？」
　ドンドルマを渡してくれるのかと思いきや引っ込められたので驚いた。
「なんだよおっちゃん、びっくりさせんなよ！」
「ごめん、ごめん！　ドンドルマ、召し上がれ！」
　陽気な笑顔でコーンを手渡してくれた。
「んじゃ改めて……」
　コーンに乗ったドンドルマを一口。
「あ、これもうめえ！」
「そうだろ？」
　うめえ！　とドンドルマが溶けないうちにと敦は勢い良く食べる。
　時々伸びるので、なんで伸びるんだ？　と不思議な顔になることも。
「おっちゃん、なんでこのアイス伸びるんだ？」
「トルコでは一般的な原材料のサレップってでんぷんを使っているから、ニッポンの餅みたいに伸びるんだ」
　トルコは暑いから、サレップを混ぜて溶けにくいように改良していることも教えてくれた。
「夏は40度を超えることがあるからな、トルコは」
　食べながら、溶けない工夫を凝らしているんだなと思う敦だった。
　
「ふー、食った食った！　いいなこの店！　一度食べたら病みつき、ってのもまんざら冗談じゃねえな！」
「そう言ってもらえると嬉しいぜ。また食べに来てくれよな！」
「じゃあな、おっちゃん！　また見かけたら食いにくるわ！」
　いい店を見つけたぜ、と敦は満足気に帰っていった。

このページにイラストを設定する