ドネルケバブ『Gule gule!』｜リアクション

ドネルケバブ『Gule gule!』

●ケバブを売っているワゴンは何処に

　八神修は、七夜あおいと噂のケバブを楽しもうとオレンジ色のケータリングワゴンを探している。
　なぜ探しているのかというと、ケバブを食べ歩きしている生徒を見かけたからだ。

「どこで買えるんだろう？　あのケバブ」
　と漏らせば、答えが返ってくると思い、あおいとケバブについて話し出す。
「あなた、ケバブが食べたいの？」
　聞こえるように話をしていた甲斐があったのか、修の話が気になった女子生徒が話しかけてきた。
「そうなんだ。ワゴンで売り歩いているって聞いたから場所が不特定だろ？」
「そのワゴンだけど、今は寝子高の近くに停まっているわよ」
　女の子は食べ物情報に詳しいな、と感心する修。
「修君、私、話をしていたらケバブが食べたくなっちゃった」
　あおいに「食べたいね」なんて言われたのもあり、ワゴンを探してみようと答えた。
　２人のお腹が「「「賛成」」と言い、挙手しているかのように鳴った。
「もう夕方だし、お腹がすくのは仕方がない。さっそく探しに行こう」

「さて、店は何処にあるのかな？」
　人通り多いところ、スーパーの駐車場とかかな？　とあおいと２人であちこち探し回る。
　寝子高付近、という手がかりを頼りに。
「あれ、私達が探しているワゴンじゃない？」
　あおいが指さした方向を見ると、オレンジ色のケータリングワゴンが停まっていて、何人かの客がケバブを買っていた。
「あれだ、行ってみよう」
　お目当てのワゴンを見つけたので、２人は並んで駆け寄った。
「よう、いらっしゃい！　ケバブを買いに来たのかい？」
　バルシュ・コルテュルクの陽気な挨拶に、修は一瞬、驚いた。
「そうなんです。うちの学校の生徒が、ここのケバブがおいしいって言ってましたので食べたくなったんです」
「嬉しいこと言ってくれるね！　何にする？」
　どれを買おうか、と、あおいとメニューを見比べて決める。
　チリソースとトマトソース、どっちにしようかちょっと迷った。
「私、トマトソースにするね。修君は？」
「じゃ、じゃあ俺も同じもので。すみません、トマトソースのケバブ２つください」
「ありがとう！」

　できあがるのを待っている間、修はドンドルマの特長やトルコの話をし始めた。
　トルコは遠いようで近いから等、あおいが興味を持った話題もどんどん広げようと会話を進めていく。
「トルコは世界一の親日国と言われているんだ。これには涙なくして語れない歴史があってね……」
　と話し出したのは、1890年、親善航海のため寄港したトルコの軍艦が帰航の途中、和歌山県串本町の紀伊大島沖で猛烈な台風のために岩礁に激突、沈没した遭難事件の話。
　この事故艦長以下587人が殉職。
　紀伊大島の島民たちの必死の救助で助かったのは、わずかに69人に過ぎなかった。
　この献身的な救助活動はトルコ国民に伝えられ、今でも時代を超えて語り継がれている。
「この歴史的友情の話は、日本・トルコ合作映画として公開されたんだ。今度、DVDで一緒に観ないか？」
「どうしようかな……」
　おふたりさん、お話の途中ごめんよ！　とバルシュができたてアツアツのケバブを差し出す。
「その軍艦の話、トルコじゃ子供でも知っているんだぜ。もちろん、俺も知っている。子供の頃から聞かされていたんでな」
「そうなんですか」
　トルコの話を知っている日本人がいてくれて嬉しいぜ、とバルシュは喜んだ。

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