想像力の海を泳ぐ｜リアクション

想像力の海を泳ぐ

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　Umiは海岸から溢れてくる黒い影の姿に目を見張った。
　影はUmiが創造した動植物や水晶達を喰らい、その一部に取り込んでいく。
「せっかく綺麗に創った島を、これ以上汚させない。迎撃だよ、植物たち！」
　そう言って、Umiがオーケストラの指揮者のように手を振り上げる。
「虫は食べちゃえ、パクっとフラワー！」
　すると、その声に応じるように、島の植物達が自らの意志をもって影に立ち向かい始める。
　ある食虫植物は虫のかたちをとった影を、パクッと丸ごと飲み込んだ。
　ウイルスに侵された虫はパクッとフラワーの中で消化され、無数の0と1に分解される。
　それは無害でクリーンなプログラムとして、今後もパクッとフラワーの一部として生き続けるだろう。電脳空間におけるひとつの食物連鎖である。
　ある植物は鞭のようにしならせたツルで水晶と一体化した影を締め上げて、そのまま砕け散らせる。
　電脳空間において電脳生命体同士、オブジェクト同士の優劣は造物主の想像力に依拠する。
　島一つ創り上げたUmiの想像力は影の造物主の想像力を大きく上まわっていた。
　よって、島の防衛自体は容易いことに思われた。
　しかし、
（でも、いったい誰がこんなことをしているのかな？）
　この影を生み出した犯人を特定するために動くには、Umiには対処しなければならない影が多過ぎた。
　ゆえに、全ての元凶の主の追跡は他の造物主達に委ねられることになる。

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　陸の上では、Umiやその他のアバター達がウイルスの駆除にあたっている。
　一方、島を取り囲む広い海の中で、Hazukiもまた黒い影のようなウイルスの除去にあたっていた。
（……このままでは埒があかない。影の元を絶たなければ）
　自ら創造した三又の槍――トライデントを振りかざしながら、Hazukiはウイルスを元から断つ方法を考え始めた。
　存外、妙案はすぐに浮かんだ。
　この世界の空と海を創造したHazukiには、そこに外部から侵入したものの足跡を調べる権限がある。
　そこで、Hazukiは自らが創造した海に侵入した異物である影の痕跡を辿ることにしたのだ。
　しかし、いかんせん、目の前の敵は多く、犯人の逆探知にはもう少し時間がかかりそうだった。