潜入！夜の寝子島マリンパラダイス｜リアクション

潜入！夜の寝子島マリンパラダイス

　最後にお土産を買う時間があり、彰尋は千里と将尋を連れてお菓子のコーナーをまわっていた。
　できれば手頃な文房具か、家族と分け合えるお菓子で決めてもらいたいところだが、特に千里がわがままを言い出さないか彰尋は心配しながら二人を見守っていた。
「どっちにしよう……」
　二人と同じくらいか、それ以上に真剣な面持ちでお土産を選んでいるのは、あおいだ。
　ペンギン型の貯金箱にチョコレートが詰まった物か、絵本のような柔らかなタッチで大きくサメが口を開いている様子のパッケージにプリントクッキーが詰まっている物かで悩んでいた。
「あおいさん、おはよう。ナイトツアーに参加してたんだね」
「あ、おはよう！　自由課題のテーマを変えようかなと思って。彰尋くんは？」
「俺は、弟と妹の自由課題のために付き添いで。ところで、なんだか真剣に悩んでるみたいだったけど……」
「実は……勉強のためのつもりだったから、あんまりお小遣いを持ってきてなくて。自分用を見てるんだけど、なかなか決められないんだ」
　特別な相手に渡すために悩んでいたのではないと知り、彰尋は少しだけホッとする。
「自分用のおみやげか……もし、お弁当とか自分で作るなら、ペンギンのおにぎりの型とかどう？」
「お弁当は作るよ！　そっか、そういうのを使えば、おにぎりの形になるかな」
「おにぎりって、綺麗に形を作るの難しいもんね」
　あおいは、自分の料理の腕前だと、ボロボロと崩れるだけでまったくまとまらないおにぎりも、型を使えば形になるだろうという期待をこめて、お勧めされたおにぎり型を買おうか迷った。そんな様子を見て、彰尋は千里が遠足の時にキャラ弁をリクエストしてきたことを思い出し、やっぱり女の子は可愛いお弁当が好きなんだなと納得する。
　いつか二人で水族館に来れた時、そんなお弁当を食べることができたら。そう思って誘ってみようかと迷っていると、千里と将尋が可愛らしいパッケージの缶を手に戻ってきた。
「お兄ちゃん、私はこれにするわ。人魚姫がいそうな海の絵よ」
「僕がこれ、しろくま―！」
　賑やかになってしまい、誘うタイミングを失ってしまったけれど、もしかしたら今はそこまで願うのは高望みなのかもしれない。
「二人共、お店の中だから静かに。あおいさんもごめん、騒がしくて」
「ううん。それじゃあまた……」
「また見かけたら、声をかけるね」
　まだ諦めていないということ、一緒に遊びに行きたいこと。そんな気持ちをこめて告げれば、あおいは少し驚いて、それから柔らかに笑った。

「それでは皆さん、ナイトツアーへのご参加ありがとうございました。昼間とは違った生き物の姿を……と、北斗。僕は今ご挨拶中ですよ、こら北斗」
　まだゆっくり眠っているものだと思っていた、北斗が起きてきた。
　……のは構わないのだが、どうもいつものようにエリオットが遊んでくれると思っているようで、お客様の前だというのに落ち着きがない。いや、お客様の前だからこそ、彼なりにはりきっているのかもしれないが。
「まぁ、皆さんにもご紹介致しますか。彼が僕の担当する、トドの北斗です」

　千里と将尋がわぁっと駆け寄ろうとするので、彰尋は慌てて二人を制止する。
　確かに、人に慣れていてもこんなに大きな生き物へ近づけるのは、兄として心配だろうと、紫はしみじみと北斗を見つめ、その隣で蒼はちょっとした芸を見せてもらえるかもと思い、わくわくしながら質問をした。
「その子が、テレビCMなんかであっかんべーをしている子？」
「あ、きっとそれはアシカですね。アシカとトドでは、鼻先の形が違っていて……」
　なだらかな鼻先をしているのがトド、犬のように少し尖った鼻先をしているのがアシカでと、ついつい簡単な見分け方の説明をしたところで、エリオットは見送りの最中だということを思い出した。
「すみません、お時間が迫っていましたね。ナイトツアーのチケットを見せていただければ、本日一日再入園は可能となっていますので、よろしければ昼と夜の違いなどを体験していただければと思います」
　アシカとトドの違いも詳しくご説明しますよ、と付け加えて笑いを誘ったところで、ナイトツアーは終了の時刻を迎えた。

　毎日ではないとはいえ、こういうイベントごとはスタッフも生き物も緊張をするものだ。今日は念入りに体調や食欲を見てあげなければと、エリオットは深く息を吐く。
　なんとか、無事にナイトツアーを終えることができた。
　近寄ってくると浮ついた気分にさせるエイがいるなど、生き物たちにまつわる不思議な噂が流れたり、ろっこんによる事件で水族館中が水浸しになったりと、散々な目に遭わなくて本当に良かった。
「さあ北斗、今日もお客様に元気な所を見せてくださいね」
　それはたくさん遊んでくれるということか、と言わんばかりに嬉しそうに、北斗は元気に鳴いてみせた。

　様々な生き物が悠々と海を泳ぐ姿を見て、時に触れ合い、もしかしたら不思議なことが起こるかもしれない――そんな寝子島マリンパラダイスは、今日もオープンします。

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あとがき

担当マスター：浅野悠希
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みなさまご参加ありがとうございます、浅野です。
水族館ネタを書くにあたり、アクションを頂いてから地元の水族館に行ってきました。
水槽の厚さとか、ペンギンの卵の大きさとか無駄に勉強してきたのですが、何の役にも立たせることができず、くやしかったりします。

マリンパラダイスには、どうやら不思議な噂がある生き物がたくさんいるようですが、今回は大人しくしていてくれたようですね。
お泊りができるナイトツアーは特定日だけですが、夜の水族館を訪れることができるナイトショーは長い期間やっているようなので、今度は不思議体験をメインにしたシナリオを書いてみたいです。

皆さんが、夏休みの宿題を終えられたようで、良かったと思います。
少しでも、プレイヤーの皆様もキャラクターと一緒に水族館を巡った気分になって頂けれた嬉しいです。

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