【星幽塔】豆の危機！？　目指せテッペン！｜リアクション

【星幽塔】豆の危機！？　目指せテッペン！

☆第三階層　畑と豆の樹

「畑……ここではお化けトウモロコシと戦ったっけ」
　桜はそんなことを思い出しながら、第三階層の豆の樹を登っていく。

「第三階層なう」
　旅鴉月詠は、畑の様子を見にきていた。
「派手にやられているな」　
　突然生えてきた巨大豆の樹に、畑が壊されてしまっている。
　そこへ、下から登ってきた修が顔を出した。
「やあ、木登りおつかれさま」
「旅鴉か」
　無残にやられた畑に目をやる修に、月詠はつぶやく。
「ああ。ここに植わっていたのは、水星トウモロコシだな」
　無事なものを脇に寄せ、後で耕し直そうと思いつつ。
「さて私はこれを商機であると見る。このジャック豆、とても美味しいらしい。スイカ大の豆は一粒でも充分料理に使えるのだ」
「月詠らしいな」
　星幽塔では材料ハンターとも呼ばれる月詠である。
　話しながらも修はどんどん先へ登っていった。
「これが切り落とされて枯れるまでにできるだけ回収したいね。あわよくば種苗を手に入れて育てるとか。本来横に伸びる植物らしいし」
　それを見上げながら月詠は返事を返す。
「なるほど。俺もこの成長の力と生命力を見込んで考えていることがある。ステラに相談してみるつもりだ。それじゃ」
　修の姿はもうすっかり小さくなっていた。　
「お互い頑張ろう。さて、妖精達、ゴーレム、収穫を手伝ってくれ。届く範囲でできるだけ豆を回収だ」

　月詠の指示に答えて、コボルトたちや三角帽子の小人たち、そしてミニゴーレムが豆の刈り取りを始める。
　ゴーレムはフローレンス・アイメルト作成のぬいぐるみサイズのもので、ある程度の学習能力を持っている。
　それを手伝うでもなく、月詠は座ってスケッチブックを広げ、絵を描き始める。
　描かれたのは少年と斧だ。
　それは童話に出てくるジャックの姿のようだ。
「豆を封印だ」
　月詠のろっこん『絵空事』は動物は封印できないが、豆なら大丈夫だ。
　さらに進化能力により、見えて届く範囲の豆が引力で落ちてきて、封印される。
「第一階層から成長してるみたいだし、下からせりあがってくるかも」
　その時、夏朝が下から顔を出した。
「畑が駄目になっちゃってるね……修繕費用の足しに豆を２個くらい置いて行くよ」
「ありがたく使わせて頂こう」
　月詠は夏朝からも豆を受け取った。　
　夏朝はそのまま豆の樹を登っていく。
（一面の畑も見応えがあって、写真撮るかスケッチしたくなる……）
　でも今はそれどころではない。
「最先端へ向かうよ」
　夏朝は第三階層を後にした。

「さあて収穫した豆をどう調理しようか」
　月詠は緋色大鍋を使い、とりあえず豆を煮てみた。
　希少鉱物ヒヒイロカネを使用して鋳造された大きな鍋は、取っ手から調理者の意思を汲んで鍋の熱量を調整することができる。
「ドラゴンキャベツくらいでかい」
　ある程度煮たら鰐牙包丁で切って、さらに煮込む。
　第一層某所に生息する鰐の、その鋭い牙で作られた包丁だ。
　煮込んだ豆に塩で味付けをした。
「うん、豆だな。普通に美味しい」
　味に満足した月詠は妖精にも分けてやった。
「量あるしハンバーグにしてみるか」
　大豆ハンバーグのようにすれば大勢の胃を満たし、幸せにすることができるだろう。
　

　