サマー☆部活動のお時間です！　～運動部編～｜リアクション

サマー☆部活動のお時間です！　～運動部編～

水泳部
　仙藤紫は自室で水着姿となった。不安げな顔で露出した肩の部分を撫でる。表情が和らいだ。軽く両腕を回してみた。続けて身体を左右に捻る。
　――高校の時のスクール水着だけど問題はなさそうね。
　脱ぎ易いワンピースを上から着て締め切られたカーテンを開ける。真っ先に見上げた空は南国の海を思わせる明るい色をしていた。
　――去年の今頃、木天蓼大学のＡＯ入試に合格したのよね。三年だったのに引退しないで水泳部員として部活に励んでいたわ。
　必要な物を詰め込んだバッグを手に提げた。部屋を出ていく直前、表情が緩んだ。
　――今日はＯＧとして指導を頼まれ、また泳ぐことになるのね。
　セミロングの髪を弾ませて出ていった。

　プール施設が朝陽に照らされる。ジャージ姿の志波武道は駐輪場の横で足を止めて眺めていた。
「……行くか」
　肩に掛けたバッグを引き上げた。
　中に入ると左に折れた。男子更衣室で着ていたジャージを脱いだ。指定されたブリーフ型の水着となって歩く。
　コンクリートで造られた二十五メートルのプールは光り輝いていた。カラフルなコースロープが静かに浮かんでいる。
「長いようで、短かったな」
　武道は縁に座って両脚を水の中に入れた。バタ足の要領で足を動かす。水面が泡立ち、煌めく飛沫が上がった。
「……ビート板で、よく練習したよな」
　両腕を後ろに突いた。青い空を見上げたまま、バタ足を続けた。

　朝陽がほとんど当たらない。薄暗い猫鳴館の扉から雨崎荒太郎が出てきた。背には膨らんだバッグを背負っている。大型のクーラーボックスに手を引っ張られ、上体を横に傾けて坂を下っていく。
「いい運動になるねー」
　左右に揺れながら軽口を叩く。下りの途中でクーラーボックスを持ち替えた。早々と額に汗が染み出してきた。
「これからは、ぼくがしっかりしないと……」
　喘ぐような声で自身を励ます。
　寝子島高校の西門が見えてきた。荒太郎は少し足を速めた。額の汗を拭い、笑顔で通り抜けた。