サマー☆部活動のお時間です！　～運動部編～｜リアクション

サマー☆部活動のお時間です！　～運動部編～

　クールダウンのストレッチを行ない、全てのメニューを消化した。
　部員達は片付けを始めようと動き出す。止めるかのように李小麗が声を上げた。
「学校のプールで三年生の先輩と、いっしょに泳ぐのは今日が最後になるかもしれないのだ！　だから思い切り遊びたいのだ！」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか。もちろん俺も参加シマッス！　なんたって主役の三年生だもんネ♪」
　志波武道は笑顔で施設に駆け込む。備品であるビート板を両脇に大量に抱えてプールに投げ込み、続けて自身も飛び込んだ。
　ビート板を二枚重ねて胸に抱き、仰向けの姿で浮いた。
「ラッコちゃん浮かびだよー」
「しゃおりーもするのだ！」
　大の字になって飛び込む。近くにあったビート板は一枚で足りた。
「かわいいラッコちゃんなのだー」
　腹部で貝を叩き割る真似をした。後輩の女子達は声を揃えて、かわいいー、と黄色い声を上げた。
　各々がプールに飛び込み、ビート板を使って遊び始めた。水中に沈めて飛び出す距離を競う者もいた。
　雨崎荒太郎は少し離れたところで眺めていた。
「様子見だねー」
　その後、全員が参加する遊びに発展した。
「では、スタート！」
　一人の男子が挙げていた手を振り下ろす。プールサイドにいた全員が揃って飛び込んだ。水中に沈んだ石を求めて争奪戦が始まった。
　仙藤紫はドルフィンキックを駆使して小石を集めた。男子は手が出せず、ただ見惚れていた。
「少し取り過ぎたかしら」
　水面に顔を出した紫は両手に抱えた小石を見て笑った。
　水上桜は息の長さで少なくない成果を挙げた。
「悪くないわ」
「俺も可愛いラッコちゃん浮かびだよー」
　近くでは武道がビーチ板を利用したラッコの真似に励んでいる。
「可愛い？」
　目にした桜は微かな笑みを浮かべた。

　遊び疲れた部員がプールから上がると荒太郎が良く通る声で言った。
「臨時営業のかき氷屋さんだよー」
　折り畳みの長机の上にはかき氷の機械が置かれていた。真下に容器を置いて手動で氷を削り、用意したシロップを掛ければ完成する。
　見た目の涼しさと色鮮やかなシロップに全員が引き寄せられた。
「シロップはイチゴ、メロン、レモンにブルーハワイまであるよー。疲れた身体に水分と糖分を補給してねー」
　次々と注文が入る。荒太郎は手早く氷を削って希望のシロップを上から掛けて手渡した。
「甘くてとても美味しいです」
　プラスチックのスプーンの一口で笑みが零れる。
「ナゾのキーンがきたのだ！」
　小麗は痛みに耐えるような顔でスプーンを口に運ぶ。
「ちょっと、何をしてるのよ」
　相原まゆが大股でやってきた。荒太郎は動揺を見せず、笑顔で接した。
「まゆ先生には専用のシロップを用意しました。どうですか？」
「……専用って、ニャルキー（ミルクキャンディ）味？」
「それに近い味を練乳で作ってみました」
　まゆは軽く咳をして、かき氷を注文した。
　全員にかき氷が渡った。幸せそうな顔で味わう。
　同じように食べていた小麗は手を止めた。容器を持った姿で三年生の方を向いた。
「センパイ達がしゃおりーに教えてくれた泳ぎ方や楽しさは、ぜーんぶ宝物なのだ！
　今までありがとうございましたなのだ！！」
　三年生は照れ笑いを返した。
　その中、武道はかき氷を掻っ込んだ。平らげた直後に顔を上に向ける。
「なーんか、心がキーンとなったよ……後は頼もしい、後輩達に、任せるよ……」
　青い大空に武道の声は吸い込まれていった。

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