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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
あかいヤドリギ、ニャ！
気のせい。気のせいだ。
立って喋る猫がついてくる、なんて、この暑さによる幻覚に違いない。
「（かくかくにゃかにゃか）っていうわけなのニャー。おねがいニャー取ってほしいのニャー」
「……そもそも寒い気持ちと言われても、だな……」
タイラ・トラントゥールは足を止め、眉間を押さえて頭を振る。
にゃっぱちを二度見、三度見……ハァ～～～～ッ。傍らの木へぐったり手をつきながら溜息漏らす。
見た事のあるような猫がいると、右往左往するにゃっぱちと目が合った瞬間が運の尽きだったようだ。
自分の頭が暑さでどうかしたのかといっそ思いたかった。
以前にも出会った喋る猫、あれは夢だったと結論付けたはずだったのだ。
（でなければ、あんな……）
幹を背にして喋る猫を正面から見据えれば、どうしたって思い出されるのはその時に見た剣の夢。
鮮明に蘇るは赤。
自分の目の前で、血に染まり倒れた小柄な体。
夢のはずなのに。触れた肌の感触、そこから失われていく体温は今でもハッキリと思い出される。
閉じられた太陽の瞳を目の当たりにして、指先が冷えていく感覚が今、またタイラを襲った。
現実で感じているはずの暑さや音が、その五感から消えていく。
前に感じた時よりも明らかに増した胸の痛みが、いつも横に居た存在が失われる恐怖をまざまざとタイラへ突きつける。
一気に血の気が失せ、立っているのがやっとな程に心身共に冷え込んでいった。
タイラは両の足に必死に力を込める。
―― あれはただの夢で現実ではありえない。
そう己が胸の痛みへ言い聞かせた。
だってアイツはこの間だって笑っていた。一緒にバトルをした。
分かれてからも電話で声を聞く羽目にすらなった日だってあった。
本物のアイツをボクはちゃんと知っている。
じゃあ その本物のアイツに 起こりえてしまったら ？
温度手離された思考が新たな『もしも』を生み、冷たい底へタイラを誘う。
夢でも現実でも、その無鉄砲さは誰よりも自分が知っているから。
何度も浮かぶあの笑顔。
いつもなら思い出すたび温かくなるはずのその存在に、初めて寒さが押し寄せる。
―― もしも、兄様がボクとアイツの事を見たなら……。
追い打ちの如く、次に鮮明に脳裏に現れたのは、未だタイラの心を深く縛る従兄の姿。
あの全てを支配する瞳と声が蘇れば、とうとうその足は力を失った。
幹に背中をこするようにズルズルと落ち、膝をついてしゃがみ込んだ。
兄様は絶対に許さない。……それがボクだけならまだいい。
重く冷たい底へ沈んだ思考はもはや止まらない。
―― もしアイツや、周りにも矛先が向いたら……。
絶望の色がタイラの瞳を覆った。
それだけはダメだ。そんな事になるくらいなら……。
露草色はもう現実の緑や陽射しを映さず、己の足元と影しか見えていなかった。
もらったはずの安堵、抱いたはずの願いが、手の中からこぼれた気がした。
『一緒に居ていい』の言の葉を、確かに受け止めたはずなのに。
でも……やっぱりボクは……。
現実に座り込んでいるタイラの体に、既視感がおとずれる。
頭痛、吐き気、耳鳴り、貧血……それら全てを起こした時の、この身体の重たさ。
……昔、よく感じた気がする……。
いっそこのまま重さに委ねて沈み切ってしまえば、底に辿り着けるのだろうか。
そうすればそれ以上、もう冷たくも寒くもならないだろうか。
目の前が暗くなった。
露草色が完全に闇を捉え瞼が閉じられる寸前。
ぺちぺちぺちぺち。
頬に温かな、それでいて柔らかな感触が優しく連打されて、咄嗟に瞼が開いた。
「…………え？」
「だいじょぶニャー！？ へーきニャー！？ 具合わるいニャー！？」
突然舞い込んだ眩しさに細めた視界に、猫のどアップが飛び込んで来る。
一瞬なにが起きたのか分からなかった。
こっちが夢？ と朧げな思考を巡らせようとしたタイラの露草色に、今度は鮮やかな赤色が映し出される。
「見てみてニャー！ にゃんでか急にヤドリギ落ちてきたのニャー！」
小さな前足いっぱいにわさっと持たれた、炎の色した葉の集合体。
熱の色を宿すそれを見つめれば、ほんの微か、タイラの頬へ血が通ったようにみえた。
「……取れてよかった、な」
「うニャ！ 寒かったニャ？ 具合、わるくて寒かったニャ？ ごめんニャーっごめんニャーっ」
ありがとニャーッ、としきりに鳴く猫へ、無意識に手が伸びていた。
撫でた毛皮の体は、どこまでも温かかった。
温もり分けてもらった片手と、未だ冷え切って動かないもう片方の手。
夢と現実、光と闇の狭間でタイラはただ今は、その身を大きな幹へと預けるのみだった。
立って喋る猫がついてくる、なんて、この暑さによる幻覚に違いない。
「（かくかくにゃかにゃか）っていうわけなのニャー。おねがいニャー取ってほしいのニャー」
「……そもそも寒い気持ちと言われても、だな……」
タイラ・トラントゥールは足を止め、眉間を押さえて頭を振る。
にゃっぱちを二度見、三度見……ハァ～～～～ッ。傍らの木へぐったり手をつきながら溜息漏らす。
見た事のあるような猫がいると、右往左往するにゃっぱちと目が合った瞬間が運の尽きだったようだ。
自分の頭が暑さでどうかしたのかといっそ思いたかった。
以前にも出会った喋る猫、あれは夢だったと結論付けたはずだったのだ。
（でなければ、あんな……）
幹を背にして喋る猫を正面から見据えれば、どうしたって思い出されるのはその時に見た剣の夢。
鮮明に蘇るは赤。
自分の目の前で、血に染まり倒れた小柄な体。
夢のはずなのに。触れた肌の感触、そこから失われていく体温は今でもハッキリと思い出される。
閉じられた太陽の瞳を目の当たりにして、指先が冷えていく感覚が今、またタイラを襲った。
現実で感じているはずの暑さや音が、その五感から消えていく。
前に感じた時よりも明らかに増した胸の痛みが、いつも横に居た存在が失われる恐怖をまざまざとタイラへ突きつける。
一気に血の気が失せ、立っているのがやっとな程に心身共に冷え込んでいった。
タイラは両の足に必死に力を込める。
―― あれはただの夢で現実ではありえない。
そう己が胸の痛みへ言い聞かせた。
だってアイツはこの間だって笑っていた。一緒にバトルをした。
分かれてからも電話で声を聞く羽目にすらなった日だってあった。
本物のアイツをボクはちゃんと知っている。
じゃあ その本物のアイツに 起こりえてしまったら ？
温度手離された思考が新たな『もしも』を生み、冷たい底へタイラを誘う。
夢でも現実でも、その無鉄砲さは誰よりも自分が知っているから。
何度も浮かぶあの笑顔。
いつもなら思い出すたび温かくなるはずのその存在に、初めて寒さが押し寄せる。
―― もしも、兄様がボクとアイツの事を見たなら……。
追い打ちの如く、次に鮮明に脳裏に現れたのは、未だタイラの心を深く縛る従兄の姿。
あの全てを支配する瞳と声が蘇れば、とうとうその足は力を失った。
幹に背中をこするようにズルズルと落ち、膝をついてしゃがみ込んだ。
兄様は絶対に許さない。……それがボクだけならまだいい。
重く冷たい底へ沈んだ思考はもはや止まらない。
―― もしアイツや、周りにも矛先が向いたら……。
絶望の色がタイラの瞳を覆った。
それだけはダメだ。そんな事になるくらいなら……。
露草色はもう現実の緑や陽射しを映さず、己の足元と影しか見えていなかった。
もらったはずの安堵、抱いたはずの願いが、手の中からこぼれた気がした。
『一緒に居ていい』の言の葉を、確かに受け止めたはずなのに。
でも……やっぱりボクは……。
現実に座り込んでいるタイラの体に、既視感がおとずれる。
頭痛、吐き気、耳鳴り、貧血……それら全てを起こした時の、この身体の重たさ。
……昔、よく感じた気がする……。
いっそこのまま重さに委ねて沈み切ってしまえば、底に辿り着けるのだろうか。
そうすればそれ以上、もう冷たくも寒くもならないだろうか。
目の前が暗くなった。
露草色が完全に闇を捉え瞼が閉じられる寸前。
ぺちぺちぺちぺち。
頬に温かな、それでいて柔らかな感触が優しく連打されて、咄嗟に瞼が開いた。
「…………え？」
「だいじょぶニャー！？ へーきニャー！？ 具合わるいニャー！？」
突然舞い込んだ眩しさに細めた視界に、猫のどアップが飛び込んで来る。
一瞬なにが起きたのか分からなかった。
こっちが夢？ と朧げな思考を巡らせようとしたタイラの露草色に、今度は鮮やかな赤色が映し出される。
「見てみてニャー！ にゃんでか急にヤドリギ落ちてきたのニャー！」
小さな前足いっぱいにわさっと持たれた、炎の色した葉の集合体。
熱の色を宿すそれを見つめれば、ほんの微か、タイラの頬へ血が通ったようにみえた。
「……取れてよかった、な」
「うニャ！ 寒かったニャ？ 具合、わるくて寒かったニャ？ ごめんニャーっごめんニャーっ」
ありがとニャーッ、としきりに鳴く猫へ、無意識に手が伸びていた。
撫でた毛皮の体は、どこまでも温かかった。
温もり分けてもらった片手と、未だ冷え切って動かないもう片方の手。
夢と現実、光と闇の狭間でタイラはただ今は、その身を大きな幹へと預けるのみだった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2019年05月23日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年05月30日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2019年05月30日 11時00分
