【寝子高夜市】夏の宵、きらきらめぐる｜リアクション

【寝子高夜市】夏の宵、きらきらめぐる

●【ズバッと解決！恋愛相談】

　前半暇だった久保田美和先生の恋愛相談コーナーだったが、ライブの時間直前になって混みあってきた。

　まずやってきたのは一旦貴子さんと別れた伊賀解理だ。
　偶然発見した串田美弥子と一緒である。
「串田氏も女の子。恋バナは好きだろうし浮いた話の一つもあるんじゃないかい？」
　解理が振ると美弥子は大きなめめをぱちくりさせて、「浮いた話、ないよー」と笑う。
「そうか、ないのか」
「もーちょっと胸があれば、男の子から告白されたりするのかな？　久保田先生、どう思います！？」
　美弥子がぺったんこの胸を押さえたのと同時、解理もぺったんこの胸を押さえた。
（僕に恋人がいる事は伏せよう。バレたら絶対面倒な事になる）
　美和先生は、
「胸は関係ないと思うの！　だって、ぺちゃぱい好きの男の人だっているでしょ？」
　と言っている。
「そりゃあ鷲尾礼美先生や、相原まゆ先生にはかなわないかもしれない。でも私だって乳あるわーーー！」
　なんか絶叫している。
「ですよねーーーー！！！」
　乗っかって絶叫する美弥子。
　そして同時に、解理に向かって叫ぶ。
「「伊賀さーーん！　どうしたらいいと思う！？」」
　解理は、はぁ、と一つため息。
「男が欲しい、か……そもそもアドバイスなど無理だ。僕には精々が小学生ぐらいの子を自分好みの男に育て上げる『光源氏計画』ぐらいしか提案できんよ」

◇

　わいわい楽しそうな（微妙に涙目な？）美和先生の恋愛相談コーナーに続いてやってきたのは、綾辻綾花。
　綾花の相談はこう。
「片思い中の人ともっと仲良くなるためにはどうしたらいいですか？」
「片思い！　いいな～どんな人？」
「誰とか詳しい事は言えないですけど。大人な感じの人です」
　まさか大人で、美和先生の同僚でもある早川珪先生だとは言えないのでそこは濁す。
「大人な感じの人か～もっと仲良く……なりたいわーーー！！！」
　突然叫んだので綾花はビクッ！　とする。美和先生はまた涙目だ。
「ど、どうしたんですか先生。何かあったんですか？」
「それがさーちょっと聞いてよー。この前たまたまカフェで会った人、いいなーと思ってデートしようってなったんだけど、デートのあと何て言ったと思う！？　『僕、もっと胸の大きい人が好みなんです』だって！　ひどくない！？」
「え、ええ……」
　ちなみに綾花はかなりの胸のボリュームである。
　それに気づいた美和は綾花の胸をじとーーーーっと見つめる。
「や、やめてください……そういう目でみるのは」
「あう、ごめん。綾辻さんも綾辻さんの胸も悪くないんだけどね。それでさー、その男が年下だったのよねー。やっぱ、年下はダメ！　年上よ！　仲良くなりたーい！　綾辻さんその人とどうやって出会ったの？　どんな話してるの？　教えてー」
「ええ……と……」
　すっかり立場が逆転してしまった綾花と美和。
　なんとな～く誤魔化しながら美和の話に付き合った綾花だったが、最終的には、もっと仲良くなるには自分からアプローチが大切～みたいなところに落ち着いたのだった。

◇

　いろいろな夜店を巡った後、羽生碧南は涙ぐむ美和先生の前で足を止めた。
　なぜ美和先生の前に座ろうと思ったのか、自分でもわからなかった。
「あれ？　羽生さん？」
　先生はちょっと意外そうな顔をした。
　碧南が普段、乙女ゲーが大好きすぎて妄想に浸ったりするのを知っていたからだ。
「二次元男子の攻略については、私、わかんないんだよねー」
「ううん、違うんです。リアルな恋バナなんです。ただし片想いの」
　すると美和の顔がきりり、と輝いた。
「なになに？　聞くわ」
　碧南は訥々と話した。
　相手は鷹取先輩――名は伏せたものの、先輩であること。この前の七夕まつりのときに告白したけれど、聞こえてなかった様子であること。先輩は来年で卒業すること。それまでに告れるかどうか……、
「もし、告ったとして、拒絶されたら……」
　碧南が吐露する不安な心を美和は親身に聞いてくれた。
「拒絶されたら、どうなりそうで怖い？」
「……私、中学２年時に失恋の苦い経験があるんです。あの時みたいに、辛い思いをするのは嫌だなって……」
　話すうちぽろり、涙が落ちる。
　断られて、何でもないように笑った自分。
　そのことに、自分はとても……そう、とても傷ついていたのだ、と気づく。
「辛かったわね」
　はい、と碧南は頷いた。アドバイスもないし、何も解決はしないのだけれど、恋に傷ついた自分を本当の意味で見つけることができた気がして、心がすこし軽くなった。

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