【寝子高夜市】夏の宵、きらきらめぐる｜リアクション

【寝子高夜市】夏の宵、きらきらめぐる

●【黒崎先生を探せ！かくれんぼ大会】１

　存在感が薄いので有名な黒崎俊介先生の企画、かくれんぼ大会開始の時間が迫っていた。
　校舎前の受付には、胡乱路秘子が座っている。
「んふふ、丁度、暇でしたから。……参加なさいます？」
「はい、お願いします」
　佐藤英二は、ちょっとドキドキしつつ。
　英二に誘われた野々ののこは、ワクワクしつつ。
　受付用紙に名前を書く。すると受付済の印にと、それぞれに鈴が渡された。
「スタートまで、もうしばらくお待ちください」

「やあ、待った？」
　ウォルター先生の手伝いは機械に任せて、５分前には着いていた八神修は、自分の方が待っていたなんてことはおくびにも出さず、待ち合わせの相手である七夜あおいに手を振る。ふたりで受付を済ませると、あおいは修を仰ぎ見た。
「先生、もう隠れてるのかな？」
「ここにいないってことはそうかな。先生が一生懸命隠れてるって思うとなんだか可愛いね」
「そうだね」
　あおいが笑う。ちょっと緊張も解せたようだ。

「本当に参加するのか？」
「なに？　怖いの？」
「まさか」
　北里雅樹と椎井莉鳥の元カレ元カノカップルも参戦。

「かくれんぼ大会……オレも一緒に探すよぉー！」
　小学生の曖浜瑠樹も元気いっぱい拳を突き上げる。

　受付の前で、ぐずぐず、というか、イチャイチャと小声で言い合いをしているのは、先日のネコフェスでとうとう恋人同士になったオルカ・ヴィヴァルディと獅子目悠月である。
「こういうお祭りか～Bravo～日本はやっぱり面白いね～」
「日本……というか、この島が、だろうな」
「ねぇ悠月、かくれんぼ、そんなに怖いの？」
「そんなことはない！」
「怖いなら手を繋いであげようか」
　指を絡めて手を繋ぎ、オルカは確信犯の笑み。悠月はカッと頬を上気させ、その手を振り払う。
「いらん！」
　つかつかと受付に歩み寄り。
「二人！」
　ぶっきらぼうに告げた悠月に、秘子は、にちゃり、と含み笑いをする。
「んふふ。お二人での参加ですね。どうぞ……お楽しみ、くださいね？」
　受付を済ませ、鈴を二つ貰った悠月は、そのうち一つをオルカの胸元に突きつける。
「いっしょには回らないからな。絶対、お前より先に見つけてやる！」
「あらら～」
　ちょっと煽り過ぎたかな、とオルカはそっぽを向いた悠月の背中に甘く笑った。

「それではみなさまお待たせしました」
　全員の受付を済ませた秘子が、優雅にお辞儀をする。

「これより、『黒崎先生を探せ！かくれんぼ大会』を行います。
　鈴は必ず音がするように身に付けてください。
　校舎内ではライトを持ったり、電気をつけるのは禁止です。
　制限時間は３０分。それでは、――スタートです！」

　秘子の合図で、参加者はおのおの、暗闇の校舎の中へ飛び込んでいった。