【寝子高夜市】夏の宵、きらきらめぐる｜リアクション

【寝子高夜市】夏の宵、きらきらめぐる

●【フジコのスピリチュアル☆水晶玉占い】２

「フジコせんせ、お邪魔しますなのだ！」
　元気いっぱいやってきたのは、まゆ先生のお手伝いを抜けてきた李小麗だ。
「せんせの牧場のミルクとアイスクリーム、大好評なのだ♪」
「あら～ん♪　うれしいわ～。うちのミルクは、濃厚で甘みがあるのがウリなのよ」
　フジコ先生は意味深に唇を舐めて微笑む。
「さあ座って。何を占って欲しいの？」
「んっと、占ってほしいことはー……うん、将来のことを占ってほしいのだ」
「将来のことね。もうすこし具体的に教えてくれる？」
「しゃおりーはこの島が大好きなのだ。だから将来、この島を支えるようなお仕事につきたいのだけれど
そういうお仕事につけるのかどうかを……」
　そこまで言ってはっとする。
「これでは進路相談みたいなのだっ。だ、だけど、みてほしいのだ」
「もちろんよ～」
　そう言うとフジコ先生は手を水晶玉に翳し、しばし集中した。
「見えたわ。貴女の望みは、叶うと出たわ。しかも、最高の形で」
「ホントなのだ！？」
「ええ、とてもいいと出ているわ。おみくじで言えば大吉よ。自信を持って頑張りなさいね」
　そう言われると背筋も伸びるというもの。
「ハイ！」
　元気よく真っすぐ返事をした小麗の瞳は、未来への希望で輝いていた。

◇

　次の相談者は、しくしく俯く鬼河内萌。
「何がそんなに悲しいの？」
　フジコ先生に優しく訊ねられ、萌は言った。
「先生、無乳の悩みを訊いてください！」
　萌は、人懐っこく、天真爛漫で、巨大なピンクのリボンも八重歯も絶対領域も可愛らしい女の子である。
　しかしたった一つ、とてつもないコンプレックスがあった。
　それが、

　無乳！

　貧乳を超えたつるぺた！

　なのである。

　寝子島の人達は巨乳や超乳が多いと萌は感じつつあった。
　さっき行った、まゆ先生のミルク＆アイスクリームのコーナーでもそうだった。
「巨乳が多くて辛いんです」
　萌は涙ながらに訴えた。
「気になっている彼も巨乳が好きみたいだし……。どうすれば胸が大きくなるのかな？」

「フジコ☆ラブハリケーン！！！！」

　フジコ先生はおもむろに萌を吹っ飛ばした。そして叫ぶ！

「無乳の何が悪いのよ！　アタシだってツルペタよっ！！！」

「えっ……いや、そうだけど、先生はオト……」

「だまらっしゃい☆ハリケーーーーーーン！！！」

「ぴぎゃーーーーーーーーー！！！！　センセー、ボクは巨乳になれますかーーーー！！！」

「水晶玉は今のママじゃ無理って言ってるわ！　毎日ミルクを飲んで、チチを揉むのよ！　そうすればアタシの胸よりは大きくなるかもね、……と水晶玉は言ってるわなんですって☆ハリケーーーーン！！！」

　水晶玉の占いのせいで謎の嫉妬を買ったらしい萌であった。

◇

　このあと【黒崎先生を探せ！かくれんぼ大会】でののこと待ち合わせをしている佐藤英二は、“探し物”について占ってもらおうとフジコのところを訊ね、唖然とした。
「ええと……なんか天井に穴が空いている気がするんですが……どうしたんですか？」
「なんでもないわ。座って」
　フジコ先生の息も心なしか上がっていて、大丈夫だろうかと気にはなりつつも、言われるまま座る。
「何を占ってほしいの？」
「あ、はい……ちょっとした“探し物”があるんだけど……抽象的で良いので、どんな場所でみつかりそうかわかったら嬉しいです」
「わかったわ。その“探し物”を強くイメージして、水晶玉を見つめて頂戴」
　英二は言われた通りにする。
（黒崎先生……）
　すると。
「『波打つ黒と月』が見えたわ」
「『波打つ黒と月』？　一体何だろう」
「分からないけれど……時がきたら分かるのかも。見つかるといいわね、“探し物”」
「はい。ありがとうございます」
　英二はお礼を言うと、ののこと待ち合わせしている校舎前へと急いだ。
　そろそろかくれんぼ大会が始まる時間だ。