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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
あんな夢、こんな夢、どんな夢？
●もうすぐ会える、
ぱち、と目を覚ます。
まだ半分はまどろみの中をたゆたいながら、
（あら？ ここは？）
と、御巫 時子は部屋の中を見渡した。
そう広くはない、けれど、小ざっぱりと気持ちのいい部屋だ。
ソファから身を起こそうとしたら、何だか動きにくい。
膨らみを帯びたお腹がその原因だと、すぐに気付いた。と、その時。
「ただいま帰りました」
と、部屋に、一人の男性が――五十嵐 尚輝先生が現れた。
思わず、時子は瞳を瞬かせる。
「尚輝先生……？」
「時子さん？ やけに懐かしい呼び方ですね」
五十嵐先生が、驚いたような声で時子を呼んだ。
……苗字ではなく、ファーストネームで。
どきどきと跳ねる胸にそっと手を添えた刹那、時子はじんわりと思い出した。
（そういえば、私は結婚してたような）
相手は、五十嵐先生――改め、尚輝だ。
今はもう、時子は、彼のことを『尚輝さん』と呼んでいる。
そして、お腹の子は、尚輝との間に授かった子供だった。
「どうしましたか？」
時子の傍らに腰を下ろして、尚輝が静かに言う。
時子は、小さく笑った。
「ソファで、うたた寝をしてしまって。少し横になっているうちに、高校時代の夢を見たんです」
「ああ、それで」
「夢のせいか、何だか、ほんの少し前のことみたいに感じます」
零したその時、お腹の子が、とっ、と動いた。
「あ、動いてます……」
「えっ、本当ですか？」
「本当ですよ、勿論」
「もうすぐ会えるんですね……」
慈しむように、愛おしむように、膨らんだお腹をさする。
尚輝との初めての子供にじきに会えることが、嬉しくて愛しくて堪らなかった。
「――そうだ」
呟いて、顔を上げる。
「名前、考えてくださいましたか？」
この子の名前は尚輝さんに考えてもらいたい、と。
時子が願ったのに、尚輝が緊張した面持ちで、「……わかりました」と頷いた日を思い出す。
時子の目前にいる今の尚輝のかんばせにも、やはり、幾らかの緊張が走った。
「その……考えては、いるんですが」
「例えば、どんな名前を？」
「……鳥の、名前とか。時子さん、それこそ学生時代から好きでしょう？ だから」
「ふふ、ありがとうございます。きっと、素敵な名前をつけてもらえますね」
「……ハードルを上げないでください。いえ、当然、君とこの子のために、最善を尽くしますが」
困ったように訴えたあとで、真面目に付け足す尚輝。
彼の優しさが、どこまでもあたたかかった。
「……元気で優しい子に育って欲しいですね。尚輝さん似でしょうか？」
「どうでしょうね。時子さんに似た方が、とも思いますが、元気に生まれてきてくれたらそれだけで、」
例えようもなく幸せです、と、尚輝がぽそりと言う。
時子は改めて、部屋をじっくりと見た。
片付いた部屋には、けれど、ベビー用品が沢山だ。
ベビーベッドやベビーカー、おむつに哺乳瓶……などなど。
（いつ生まれて来ても良いぐらい、揃ってます）
その事実が、時子の胸に柔らかな明かりを燈す。
「……あ。そろそろ、夕飯を作りますね」
言って、尚輝が立ち上がった。
私も何か……と続きかけたのを、優しくソファに押し戻される。
「時子さんは、自分とその子を大切にすることだけ、考えてください」
「でも、最近は、家事をお願いすることが多くて大変そうですし……」
「好きでやってるんです。その……君とお腹の子が、大事だから」
台詞の前半はきっぱりと、後半は、照れ交じりに。
幸福を胸に抱き締めながら、時子は、ふうわりと微笑んだ。
「ありがとうございます。でも尚輝さん、あまり無理はしないで下さいね」
「はい、気を付けます。今僕が倒れたら、笑い話にもなりませんし」
少し笑いが混ざった声で言って、尚輝は、時子の手を握る。
「出産も、なるべく立ち会えるよう、頑張りますから」
「尚輝さん……」
立ち会ってもらえたら心強い、と思っていた。
けれど、尚輝には仕事もあるし……と考えていただけに、申し出が、素直に嬉しい。
「え、っと。じゃあ、今度こそ夕飯を……」
「あの、」
「はい？」
「後ろに立ってアドバイスぐらいは、大丈夫ですよね？」
心配の滲む声で問われて、尚輝は、「そこまで言うなら」と優しく苦笑した。
食卓に並んだのは、出来立ての和食だった。
肉じゃが、味噌汁、白いご飯。
そこに、作り置きのひじき煮と、漬物が添えられている。
アドバイスこそしたものの、実際にこれらを用意したのは尚輝の手だ。
「どう、ですか？」
「塩分控えめで美味しいです」
良かった……と漏れる声。
尚輝さん、と、時子は呼んだ。
彼の顔を見て、にこりと笑みを咲かせる。
「ありがとうございます……」
お腹の子が、また、とんっ、と動いた。
ぱち、と目を覚ます。
まだ半分はまどろみの中をたゆたいながら、
（あら？ ここは？）
と、御巫 時子は部屋の中を見渡した。
そう広くはない、けれど、小ざっぱりと気持ちのいい部屋だ。
ソファから身を起こそうとしたら、何だか動きにくい。
膨らみを帯びたお腹がその原因だと、すぐに気付いた。と、その時。
「ただいま帰りました」
と、部屋に、一人の男性が――五十嵐 尚輝先生が現れた。
思わず、時子は瞳を瞬かせる。
「尚輝先生……？」
「時子さん？ やけに懐かしい呼び方ですね」
五十嵐先生が、驚いたような声で時子を呼んだ。
……苗字ではなく、ファーストネームで。
どきどきと跳ねる胸にそっと手を添えた刹那、時子はじんわりと思い出した。
（そういえば、私は結婚してたような）
相手は、五十嵐先生――改め、尚輝だ。
今はもう、時子は、彼のことを『尚輝さん』と呼んでいる。
そして、お腹の子は、尚輝との間に授かった子供だった。
「どうしましたか？」
時子の傍らに腰を下ろして、尚輝が静かに言う。
時子は、小さく笑った。
「ソファで、うたた寝をしてしまって。少し横になっているうちに、高校時代の夢を見たんです」
「ああ、それで」
「夢のせいか、何だか、ほんの少し前のことみたいに感じます」
零したその時、お腹の子が、とっ、と動いた。
「あ、動いてます……」
「えっ、本当ですか？」
「本当ですよ、勿論」
慈しむように、愛おしむように、膨らんだお腹をさする。
尚輝との初めての子供にじきに会えることが、嬉しくて愛しくて堪らなかった。
「――そうだ」
呟いて、顔を上げる。
「名前、考えてくださいましたか？」
この子の名前は尚輝さんに考えてもらいたい、と。
時子が願ったのに、尚輝が緊張した面持ちで、「……わかりました」と頷いた日を思い出す。
時子の目前にいる今の尚輝のかんばせにも、やはり、幾らかの緊張が走った。
「その……考えては、いるんですが」
「例えば、どんな名前を？」
「……鳥の、名前とか。時子さん、それこそ学生時代から好きでしょう？ だから」
「ふふ、ありがとうございます。きっと、素敵な名前をつけてもらえますね」
「……ハードルを上げないでください。いえ、当然、君とこの子のために、最善を尽くしますが」
困ったように訴えたあとで、真面目に付け足す尚輝。
彼の優しさが、どこまでもあたたかかった。
「……元気で優しい子に育って欲しいですね。尚輝さん似でしょうか？」
「どうでしょうね。時子さんに似た方が、とも思いますが、元気に生まれてきてくれたらそれだけで、」
例えようもなく幸せです、と、尚輝がぽそりと言う。
時子は改めて、部屋をじっくりと見た。
片付いた部屋には、けれど、ベビー用品が沢山だ。
ベビーベッドやベビーカー、おむつに哺乳瓶……などなど。
（いつ生まれて来ても良いぐらい、揃ってます）
その事実が、時子の胸に柔らかな明かりを燈す。
「……あ。そろそろ、夕飯を作りますね」
言って、尚輝が立ち上がった。
私も何か……と続きかけたのを、優しくソファに押し戻される。
「時子さんは、自分とその子を大切にすることだけ、考えてください」
「でも、最近は、家事をお願いすることが多くて大変そうですし……」
「好きでやってるんです。その……君とお腹の子が、大事だから」
台詞の前半はきっぱりと、後半は、照れ交じりに。
幸福を胸に抱き締めながら、時子は、ふうわりと微笑んだ。
「ありがとうございます。でも尚輝さん、あまり無理はしないで下さいね」
「はい、気を付けます。今僕が倒れたら、笑い話にもなりませんし」
少し笑いが混ざった声で言って、尚輝は、時子の手を握る。
「出産も、なるべく立ち会えるよう、頑張りますから」
「尚輝さん……」
立ち会ってもらえたら心強い、と思っていた。
けれど、尚輝には仕事もあるし……と考えていただけに、申し出が、素直に嬉しい。
「え、っと。じゃあ、今度こそ夕飯を……」
「あの、」
「はい？」
「後ろに立ってアドバイスぐらいは、大丈夫ですよね？」
心配の滲む声で問われて、尚輝は、「そこまで言うなら」と優しく苦笑した。
食卓に並んだのは、出来立ての和食だった。
肉じゃが、味噌汁、白いご飯。
そこに、作り置きのひじき煮と、漬物が添えられている。
アドバイスこそしたものの、実際にこれらを用意したのは尚輝の手だ。
「どう、ですか？」
「塩分控えめで美味しいです」
良かった……と漏れる声。
尚輝さん、と、時子は呼んだ。
彼の顔を見て、にこりと笑みを咲かせる。
「ありがとうございます……」
お腹の子が、また、とんっ、と動いた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2019年05月15日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年05月22日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2019年05月22日 11時00分
