あんな夢、こんな夢、どんな夢？｜リアクション

あんな夢、こんな夢、どんな夢？

●朝と夜の煌めき

　恵御納夏朝は、寝子島の見知った道を歩いていた。
　夏の朝……のはずなのに、暑さは感じない。
　道端で遊ぶ猫達の中に、羽の生えたものがいる。
　遠くに見える黒く大きな獣は、あれは翼獣だろうか？
（……あぁ、これは夢なんだなぁ）
　そう思いながら、夏朝は、すやすやと眠っているふわふわの白猫をそっと撫でた。
　その喉が、ごろごろと気持ち良さそうに鳴る。
（幸せそう）
　と、夏朝は小さく微笑んだ。
　その白猫が、眠りながらむにゃむにゃと言っているのは、一体、何だろう？

　次の瞬間には、夏朝は、桜花寮の自室に立っていた。
（だけど、やっぱり夢な雰囲気）
　と、夢の中の夏朝はそれを悟る。
　部屋の中は朝靄に包まれたように物事の境界がどこか曖昧だ。
　ぼんやりとして見える机の上に、夏朝は、夏夜との交換日記を見留めた。
　それだけ、魔法のようにくっきりと、姿が浮き上がって見える。
　ふと思いついて、夏朝は、その背表紙を、こつん、と額に当てた。
　瞬間――光が、溢れる。
　世界中の全てが、確かな輪郭を取り戻す。
　そして、夏朝の傍らには、いつの間にか、夏夜が立っていた。
　夏朝と揃いの、けれど色違いのワンピースを着ている。
「これは夢だけど」
　と、夏朝。
「きっと正夢になるよ」
　と、夏夜。
　互いに微笑んで、２人は、部屋の窓を開け放ち、光の向こうへととび出した。

　気付けば、目前には、夏の海。
　２人とも、いつの間にか水着を着ている。
「行こう！」
「うん！」
　ちゃぷちゃぷと、２人は手を繋いで、澄んだ水の中へと踏み込んでいった。

　海から上がれば、そこは、白々とした夏の砂浜だ。
　焦げ茶の眼差しが海の彼方に捉えるは、夜明けの色。
　また衣装が変わっている。
　今度は、揃いの白い衣。
　金糸と銀糸の刺繍、その色だけが違っている。
　夏朝と夏夜は視線を交わし、そして、どちらからともなく、緩やかに舞い始める。
　揃いの想いを、胸に抱いて。
　舞う、舞う、舞う。
　互いに、心の中で祈り、願い続けながら。
　舞い踊る２人の周りに、ふわり、小さな光が浮かぶ。
　一つ、二つ、煌めきはその数を増していった。
　舞い踊るほどに。
　祈るほどに。
　願うほどに。
　煌めきが、辺りを満たしていく――。
　夏朝と、夏夜。
　２人が、揃えたようにして、空へと手を伸べる。
　そこに込めた願いと共に、数多の煌めきは、夏朝達の心に応じるようにして、ふわふわと飛んでいく。
　寝子島、星幽塔、その他、どんな所へまでも、光は届く。
（フツウを守る皆に、フツウを過ごす皆に。一閃さんに、初ちゃんに）

（この煌めきが、届きますように）

　旧市街の片隅で、犬杜一閃と犬杜初が、何かに気付いて空を見上げた。
　煌めきが、夏朝達の願ったままに、彼らの元へ届く。
　――何これ！　綺麗！
　――……ああ、本当に。
　初が瞳を輝かせて、その隣で、一閃も、微かに口元を緩めた。
　それが、まだ舞を続けている夏朝達にも、不思議とわかる。

（――煌めきが届いたら、）
　ほんの僅かでもいい、フツウを壊すものに負けない為の助けとなりますように、と、夏朝は瞼を閉じた。

◇

　次に目を開ければ、そこは、桜花寮の自室だった。
　むくりと身を起こして、夏朝は、窓の外を見る。
（不思議な夢……）
　夏夜との分離・共存の願いのこと。
　寝子島のフツウを死守すること。
　色々なことを考えながら眠ったからだろうか、と思いながら、夏朝は伸びをした。

　――おはよう、おはよう。未来へ続く新しい一日が、また始まる。

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あとがき

担当マスター：巴めろ
ファンレターはマスターページから！

お世話になっております、ゲームマスターの巴めろです。
まずは、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました！

ＰＣ様が見る夢をテーマにしたシナリオ、ということで、
夢らしく、お預かりしたアクションも非常にバリエーション豊かで、
コミカルな夢の次はしっとり系、更に、甘めの夢からのシリアスな夢……と、
様々な色合いの夢を描かせていただけて、とても楽しかったです！

重ねてになりますが、ご参加くださった皆様に心からの感謝を。
この度も、本当にありがとうございました！

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