あんな夢、こんな夢、どんな夢？｜リアクション

あんな夢、こんな夢、どんな夢？

●ねこねこカジノへようこそ！～えっ、ポロリもあるの！？～

　ここは、大人の社交場・ねこねこカジノ。
　様々な人々の笑い声や囁きが空気を波打たせ。
　スロットが賑やかな音を零し。
　ルーレットに運命を託した人々が、歓声、或いは悲嘆に暮れた声を漏らし。
　行き交うセクシー＆キュートなバニーガール達は、人々の熱い視線を集める……。
　さて、そんな中で、
（どうしてこうなった！？）
　と、鬼河内萌は内心に叫んでいた。
　ふと気付いたら、何故かカジノにいた萌。
　しかも、お客ではなく、ピンク基調の衣装がラブリーな、立派なバニーガールである。

（ボクがバニーガールをしているなんて、夢……だよね？）
　そうだ、これは夢かもしれない、と萌は思う。
　何せ、たゆんと膨らみを帯びた胸が、衣装の胸元を艶やかに彩って……あれ？　いない？
　胸の部分は、よく確かめたらゆるっゆるだ。
　何ならもう、ぶかぶかすーすーする。
　萌は、心の中で涙した。
（せめて、これが夢だとしたら、その中でだけでも巨乳になりたかった……）
　と、その時である。
　落ち着いた赤のシャツに白いスーツを合わせた野菜原ユウの姿が、萌の目に留まったのは。
「ユウくん！？」
　思わず声を跳ねさせれば、「おー、鬼河内じゃん」とユウがひらと手を振る。
　萌は急ぎ、ふかふかの椅子にどかりと腰を下ろしたユウの元へと歩み寄った。
「ユウくん、何でこんな所に？」
「おいおい。その格好で『こんな所』はねーだろ」
「でも、ボクの場合は『これ夢かも？』って感じだし……うーん、やっぱり夢なのかな？」
「いやいや、俺に聞くなっての」
「ていうかユウくん、どうしてそんな格好？」
「ん？　かっこいいだろ？」
「いやなんかこう……ユウくんが着ると、壊滅的にチャラいっていうか、売れないホストみたい？」
「失礼だなおい」
「いや、服が変なんじゃないよ？　ユウくんが着るとそう見えるってだけで！」
「余計失礼じゃね？」
「あ、とりあえずジュース取ってくるね！」
「いや、聞けって！！」
　そうは言いながらも、萌の運んできたオレンジジュースをぐびぐびと飲むユウ。
「まあ、何だ。ありがとな」
　美味いわ、とぼそりと言われて、「えへへ♪」と萌ははにかんだ。
　小さな胸には、大きなときめきが座している。
　売れないホストみたいでも、いつもと違う姿のユウは、何だか新鮮で眩しく見えた。
　そんな彼の眼差しが辺りを眺め渡して――不意に、ぴた、と止まる。
（？　何だろう？）
　と、ユウの目線の先を追う萌。
　そこには、ボンキュッボンの、ナイスバディで色っぽいバニーガールの姿が！
「ユ・ウ・く・ん？」
　ゴゴゴゴゴ、と黒いオーラを背負う萌に気付き、ビクッ！　とユウが肩を跳ねさせる。
「うわっ！？　な、何だよ！　別にいいだろ！？」
「うん、ボク、全ッ然気にしてないよ～。あ、ジュース、おかわりどうぞ～」
　笑顔でジュースを差し出せば、「おう、サンキュ」とユウはそれを受け取りかけて、
「……ん？」
　と、ぴたり、その手を止めた。
「あのー、鬼河内サン？　これ、カレーじゃないですか……？」
「え？　やだなー、どこからどう見てもオレンジジュースだよー」
「いや、さっきのと全然色がちが……」
「飲・む・よ・ね？」
「……ハイ」

　その後、「胃もたれがヤバいんですけど？」と訴えるユウを引きずり、萌はスロットやルーレットで遊んだ。
（夢だし、別にお金は賭けていないから、未成年でも大丈夫だよね？）
　なんて、ちょっぴりどきどきしながら。
　そして、スロットに揃うジャックポット！
「ふわ……や、やったぁ！　すごいね、ユウくん！」
「おい、ちょ、落ち着けって鬼河内！　その、む、胸が……」
「へ？　胸？」
　言われて、自分の（悲しいかな）平坦な胸を見る。
「ひゃ……」
　声が、引きつった。
　はしゃぎ過ぎて、ゆるゆるな胸元から、小さなお胸がポロリしているではないか！
　しかも、それを、ユウにバッチリ目撃されてしまった。
「いやぁぁぁぁっ！　どうか夢であって！！」
　萌の叫び声は、カジノ中に響き渡ったとか。

このページにイラストを設定する