クリーピーレイン～恐怖の化身と暗躍の悪魔～｜リアクション

クリーピーレイン～恐怖の化身と暗躍の悪魔～

●三夜湖の戦い（４）

　マチェットを手に、頭の中に空間を切り裂く。
　そうしてサキリ・デイジーカッターは、刃を赤く輝かせるマチェットを、ブブ・ベルゼに向かって投擲した。

「これが最後だ！」
　空中で、満身創痍のベルゼが薄く笑む。
　ひらり、渾身の一撃はかわされたかに思われたが、
　――ギュンッ！
　苺に変じた赤い刃が素早く方向転換し、次の瞬間には、悪魔の心臓に、マチェットが深々と刺さっていた。
　協力者――犬杜初へと、小さく微笑を向けるサキリ。
「上出来だよ、初」
「め、めちゃくちゃどきどきしたぁ……！」
　６人の目の前で、ベルゼの輪郭が揺らぎ、黒い靄の塊のようになって地に落ちる。
　悪魔の分身体の残骸に、八神修が、白木杭を突き刺した。
　パワーを込めて、それを、強く押し込む。
「消えろ！！」
　修の言葉それ自体が力を得たように、残骸は、その欠片も残さずに消え失せた。

　湖が、清い白の光を放つ。
　黒い足場も消えるのだと察して、一行は急ぎ、湖畔へと退避した。
「……やりましたのね」
　常の色を取り戻す湖を見遣りながら、柳内みことがしみじみと呟く。
　うんと伸びをしたあとで、桜庭円は、にぱっと笑った。
「うんうん！　大勝利ってやつだね、これは」
「ベルゼの考えていることまではわからなかったが、上々だな」
　と、修も微笑する。
「しかし、分身に戦わせて自分は安全な位置にいるとは奴らしいね」
　サキリが言い、呉井陽太が初へと顔を向けた。
「初ちゃんも、よく頑張ったねぃ」
「それは……陽太センパイ達のお陰。センパイ、接近戦は避けるようにって言ってくれたでしょ？」
　陽太が頷く。
「円は、アイツの注意を引いてって言ってくれて、ヘアピンを使うように言ってくれたのはサキリ」
　最後のあれは心臓に悪かったけど、と初がくしゃりと笑い、サキリもそれに笑みを返した。
　それに、と初。
「みこと、その……助けてくれて、ありがと」
　照れたようにぽそぽそと言う初へと、
「だって、あなたを無事に帰せなくては、お兄様に申し訳が立ちませんもの」
　と、みことは柔らかに表情を綻ばせたのだった。

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